【本編完結】最愛の勇者が同郷の迷い人に夢中なので、この婚約は破棄したいです。

のんのこ

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婚約者の拒絶

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婚約解消を請う私を、ハルト様は言葉も出ないといった様子で呆然と見つめていた。

彼は今何を考えているのだろうか。


吸い込まれるような漆黒の瞳からは感情なんて少しも読み取れない。


「ハルト様、今まで私はハルト様にたくさん良くして頂きました。もう十分です。ハルト様は本当にお慕いする方と幸せになってください」


「ミリア、何を言って…」


「ハルト様は私が王女だから自分からは言い出せないのでしょう?あなたはもう王族の臣下ですから。だったらいっそ私から告げようと思ったのです」


気持ちが拗れたままズルズルと関係を続けるなんて不毛だ。

私だけハルト様を想っていても仕方がない。



「あなたはアカリさんと幸せになってください」


精一杯の笑みを貼り付けてそんな言葉を口にした。

笑っていないと、泣いてしまいそうだった。



「ミリア、彼女と僕は別に」

「ハルちゃん、遅いよぉ~。何してるの?」


ハルト様が何か言いかけた時、応接間に入ってきたのは件の彼女だった。


「あれぇ、ミリア様がどうしてここに?何しに来たんですか?」


「ご機嫌よう、アカリさん。ハルト様に少しお話があって」

「へぇそうなんですねっ!なんのお話ですか??」


さすがに不躾じゃないだろうか。

いくら婚約を解消する旨をハルト様に告げたからと言って、まだ彼からの返事はもらっていない。


現状婚約状態のままなのだし、婚約者同士の話に部外者が関心を持つのはマナーとしてどうかと思う。

これも異世界とこちらの世界の価値観の違いというものなのだろうか。



「ハルちゃん、どうしたの?」

「彼女と…ミリアと少し話があるから、戻っていてほしい」

「っ!ええっ、ハルちゃん…?私は別にミリア様がいてもかまわないよっ?そうだ、三人で一緒にお茶会しよっかぁ」


もう夕刻だというのに、彼女とハルト様はまたお茶を楽しんでいたのだろうか。

…夕ご飯が入らなくなりそう。



「…二人で、話がしたいんだ…ごめん、アカリ。すぐ戻るから…」

「……わかったよぉ」


ハルト様の言葉に少し間を置いて答えた彼女は笑顔だったのに、何故かその笑顔が恐ろしく感じた。

苦手意識のせいだろうか。


彼女が去っていくとハルト様は私をじっと見つめて口を開く。



「ミリア、僕はミリアのことが好きだよ」


そんなことを言うハルト様を誰が信じられるというのだろう。



「…嘘つき」

「嘘じゃない!僕はずっと、二年前からずっと…どうしようもないくらい、ミリアに惚れてる」


二年前なんて出会ったばかりじゃないか。

尚更胡散臭いことに彼は気づいていないのかもしれない。



「信じられません」

「どうしたら、信じてくれる…?」


困ったように眉を下げてそんなことを言うハルト様を初めて憎らしく思った。

どうしてそこで私に問いかけるの?


「そんなことは知りません!私の信頼を裏切ったのはハルト様ですっ」

「…うん、ごめん」


「謝罪の言葉なんて聞きたくありません」


最早自分にもハルト様にどうして欲しいのかなんてわからなかった。

私はここに婚約を解消してもらいたくて来たのに。


…まさかハルト様が頷いてくれないなんて想定外だ。



「公爵としての立場を気にしているのなら、別に私との婚約がなくとも、その地位はあなたが勇者として勝ち取ったものです」

「爵位なんてミリアと結婚するためにお願いしただけだっ」


彼は縋り付くような目をしてそう言った。



「だったらどうして…この世界での身分の心配はなくなったのですから、素直に私の申し出を受け入れてくださればよろしいじゃないですか…」

「絶対に嫌だ…ミリアと結婚できないくらいなら死んだ方がましだよ」


もうわけがわからない。



「そこまで言うのなら、何故私ではなくアカリさんを選んだのです」

「アカリを選んだりなんか…」


ハルト様は自分でも心当たりがあるのか、その言葉尻を濁した。

やっぱりそうなんじゃない。



「それでも、僕はミリアのことが…」

「私は自分だけを愛してくれない人なんて真っ平御免です。今日はもうこれ以上の話し合いは望めないようですね。冷静になって正式に婚約を解消する場を設けましょう」


平行線のまま話がつかないのなら、話をするだけ時間の無駄だ。

ハルト様は混乱してしまっている様だから、日を置いて頭の中を整理してもらうことにする。



「それでは、また後日」

「待ってミリア!話を聞いて!」


「アカリさんが待っていますわ」


ハルト様の言葉を無視するなんて初めての経験だった。


あなたには可愛いあの人がいるのに、どうしてそんなに切ない声で私を呼ぶの…?


後ろ髪を引かれる思いを振り切って帰りの馬車に向かった。




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