【本編完結】最愛の勇者が同郷の迷い人に夢中なので、この婚約は破棄したいです。

のんのこ

文字の大きさ
28 / 31

控え室

しおりを挟む




教会で誓いの言葉を述べた私達は晴れて夫婦となった。

私はもう王女ではなく、公爵夫人なのだ。


満天の青空の下行われた披露宴では多くの方々から祝いの言葉を貰う度にハルト様と二人で照れくさい気持ちになる。



「おめでとう、ミリアさん」

「バーバラさん!ありがとう」


久しぶりに会う友人の姿に嬉しくなり、ハルト様と組んでいた腕を離して、彼女の手を握りしめる。


「…なんだか、たくさん大変な思いをしたあなたが幸せそうで安心したわ」

「ええ、ありがとう本当に。バーバラさんがいなかったら、敵も味方もわからないあの学園で私はぽっきり折れちゃってたかもしれないわ」

「そうねえ、本当に本当にあの時は辛いことばかりで、あなた毎日酷いクマをつくって通学してきていたものね。必死に化粧で誤魔化そうとしてたけど」


バーバラさんは私と話しているのに、何故かハルト様をじっとり見つめながら言葉を続ける。


「最強の勇者様の失態に、学園のまともな殿方達が影でこぞってミリアさんを狙い始めていたのが懐かしいわ。失礼だけど、あなたの旦那様なかなか頼りがいが無さそうよ?本当に大丈夫なの?」


どうやらバーバラさんは私以上にあの件を引きずって、怒ってくれているらしい。

どこまでも私の気持ちを思ってくれる大切な友人に出会えたのだから、あの学園もそう悪いものではなかった。



「ミリア、この方が君がよく話してくれるバーバラ嬢かな?」

「ええ、大切なお友達よ」



「そっか。ありがとうバーバラ嬢。ミリアにとても良くしてくれたみたいだね。不甲斐ないところばかり見せてしまったようだけど、これからは僕がしっかりミリアを支えていこうと思ってるから心配しなくても大丈夫だよ」

「…あら、これからも私とミリアさんは親友だから気にしないでくださいな。今まで通りミリアさんの悩みや旦那様の愚痴なんかは私がしっかり受け止めて慰めてあげるつもりですわ」


なんだか二人の間でバチバチと火花が散っている気がするのだけど、気のせいかしら。



「そう言ってくれると心強いよ。まあきっとそんな機会は来ないと思うけど。不安や悩みなんてわかないくらい、ミリアにはしつこく愛情を注いでいくから」

「そう、せいぜい頑張ってくださいな」


微笑みあう二人が今までで一番怖く思えるのも、きっと気のせいよね。


「ではバーバラ嬢、僕らはこれで失礼するよ。僕らに挨拶したい紳士淑女の皆がそろそろ行列を作ってしまいそうだから。一度控え室に逃げてしまおうかな」

「バーバラさん、またお茶会でもしましょうね。今までもこれからも、あなたとはずっとお友達でいたいから」

「ええ、勿論よ。また今度改めてお祝いもさせてもらうわ」


バーバラさんにお礼を述べると、私はハルト様に手を引かれて控え室に戻るのだった。



「おかえり、ミリア」

「やっと戻ったのか!疲れてないか?」

「姉上、美味しい菓子と紅茶もすぐ用意させますね」


どうして私の控え室に、兄様達やユリウスが我が物顔で集合しているのだろうか。

隣にいるハルト様も笑顔のままで固まってしまっている。



「ふむ、そのように二人が並んでいると確かにお似合いとも思えるかもしれないな。見た目だけだが。オーツ公爵は容姿だけは整っているから、我が麗しい妹と並んでも遜色ないというのはなかなかのものだ」

「生憎私達は最愛の妹を傷つけられたことを当分許す気にはなれないが、ミリアが幸せならこの苦汁だって甘んじて飲みほそう」

「がぶ飲みだ、がぶ飲み」


兄様達は相変わらず家族以外に厳しいのだ。



「…ありがとうございます」


げんなりしてしまうハルト様だが、引け目があるのか返す言葉もないみたいだ。

少し可哀想に思えてしまう。


ここで私が庇ってしまうとより一層兄様達のネチネチ攻撃が苛烈になってしまうから口を挟むことはできないけれど。



「兄上達もあまりオーツ公爵を虐めては姉上が悲しみますよ」

「ユリウス、あなたなんて良い子なの…」

「僕は姉上が大切ですから、姉上の大切な方のことも尊重したいだけですよ」


にっこり笑ってそう言うユリウスに感動と愛おしさが溢れて止まらない。

隣国に留学してそんなに経っていないのに、すごく大人になっている気がする。



「ユリウスはなんと言うか…今まで以上にあざとくなっていないか?そういうところも可愛いのは変わらないが」

「そうだな、あざと可愛いな」

「同感です兄様」


こくこく頷いて同意を示していると、隣から伸びてきた腕に抱き寄せられる。


「どうしました?ハルト様」

「今日は僕らの結婚式なんだから、ミリアは僕だけ見てて欲しいなって」


…ここにも可愛らしい人がいました。

拗ねたような声がなんというか、母性本能を擽られる。


「今日のハルト様はなんだか素敵すぎて、あまり直視できません…」

こんなにかっこいいタキシード姿をじっくり見れないなんてもったいないことだけど、視界の端に映すことで正直精一杯なのだ。


「そうなの?だったら尚更僕を見て、たくさん惚れ直してもらわないとね」

「うっ」

この人の笑顔は殺人級だ。



「ということで王家の皆さんはさっさと控え室から出ていってくださいね。花嫁の部屋に入るなんてマナー違反ですよ」

どの口が言うんだ。



「やれやれ、妹の花婿殿は随分と嫉妬深いらしい」

「ミリア、いつでも戻ってきていいのだからね。私達は王宮で君の帰りを待っているよ」


「姉上!隣国に戻る前に一度食事にでも行きましょうね!」


そう言って彼らは、意外にもあっさりと控え室を出ていくのだった。

いつもならもっと粘りそうなのに、不思議だ。




しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

【完結】貴方をお慕いしておりました。婚約を解消してください。

暮田呉子
恋愛
公爵家の次男であるエルドは、伯爵家の次女リアーナと婚約していた。 リアーナは何かとエルドを苛立たせ、ある日「二度と顔を見せるな」と言ってしまった。 その翌日、二人の婚約は解消されることになった。 急な展開に困惑したエルドはリアーナに会おうとするが……。

家出を決行した結果

恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。 デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。 自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。 ※なろうさんにも公開しています。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

どうぞお好きになさってください

みおな
恋愛
学園に入学して一ヶ月。 婚約者の第一王子殿下は言った。 「学園にいる間くらい自由にさせてくれないか。君が王太子妃になることは決定事項だ。だから、せめて学園に通う二年間は、僕は恋がしたい」 公爵令嬢はその綺麗な顔に冷酷な笑みを浮かべる。 「好きになさればよろしいわ」

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

平手打ちされたので、婚約破棄宣言に拳でお答えしました

Megumi
恋愛
婚約破棄を告げられ、婚約者に平手打ちされた——その瞬間。 伯爵令嬢イヴの拳が炸裂した。 理不尽に耐える淑女の時代は、もう終わり。 これは“我慢しない令嬢”が、これまでの常識を覆す話。

貴方の願いが叶うよう、私は祈っただけ

ひづき
恋愛
舞踏会に行ったら、私の婚約者を取り合って3人の令嬢が言い争いをしていた。 よし、逃げよう。 婚約者様、貴方の願い、叶って良かったですね?

処理中です...