【本編完結】最愛の勇者が同郷の迷い人に夢中なので、この婚約は破棄したいです。

のんのこ

文字の大きさ
27 / 31

晴れの日

しおりを挟む




学園を卒業してひと月程が経った頃、私とハルト様の結婚式は国を挙げて盛大に執り行われることとなった。


これはちょっとしたお仕置になるけれど、兄様達やハルト様の意向で、学園時代私の悪い噂を信じてしまった方々やその家紋の人間は招待していない。

参加しない理由は招待客の中にもひっそりと知れ渡っているようだったから、彼らはこれから貴族社会で冷遇されること必須だ。


なんだか残酷に思えるけど、私だって傷ついたのだから特に制止をかけることもなかった。


彼らが再び王家や貴族社会での信用を取り戻すことが出来るかは、それぞれのこれからの振る舞い次第だろう。



「ミリア、綺麗だ」

マナーも気にせず化粧室に入ってきたハルト様に軽いジト目を向けるけど、当の本人は私のドレス姿に気を取られてまるで気にしていない様子だ。


耳まで真っ赤にしたハルト様に小さくため息をつく。

今は何を言っても無駄みたい。



「ハルト様も、白いタキシードが素敵です」

「ありがとうミリア。なんだかおそろいみたいで嬉しい」

照れた様に微笑むハルト様になんだか心臓を鷲掴みにされた気分だった。


この人は、天然だ。

ハルト様の何気ない一言に私がどれだけやきもきしているか全然気づいてない。



「あまり、軽々しくそのような事をおっしゃらないでくださいね…」

深い意味が無くとも普通の女性だったら勘違いしてしまう。


唇を尖らせてそう言うと、彼はキョトンと目を丸くして、それからクスリと小さく笑いをもらした。



「ミリア以外に言わないから大丈夫だよ。僕が心を動かされるのはミリアだけだから」

「…ハルト様はずるいです」


ぽうっと頬を染める私を、ハルト様は愛おしさを含んだ熱い瞳で見つめる。

ますます火照ってしまって恥ずかしい。


化粧で赤みが誤魔化せていたらいいのだけど。



「ずるくないよ。ミリアに惚れてるだけ」

「…ニホンの方は皆そういう事をサラリと言ってしまえるのですか?」


だとしたらすごい国だ。

…ハルト様が育った国。


いつか言ってみたいけれど、それは到底難しい。

何しろ世界まで超えてしまったのだから。



「ううん、日本人はどちらかと言うと控えめで、世界的には気持ちを伝えることが苦手な人種だったと思うけど」

「信じられません!」


「…だったら僕は今までの反動かも。必要以上に気持ちを封じ込めて生きてきたから」


ハルト様が苦笑を浮かべてそう言う。

思い出したくないことまて思い出させてしまった。



「だからこの世界に来て、思ったことは口にして…本当に好きな人に愛を告げられることがすごく嬉しい」

「ハルト様…」


一転して表情に満面の笑みをのせる彼に愛おしさが爆発しそうだった。



こんなに素敵な人が私の旦那様なのだから、世界は私にどこまでも優しい。

幸せ過ぎてどうにかなってしまいそうだ。


これから先の人生どれだけ不幸になっても、私はハルト様を選んだことを絶対後悔したりなんてしないだろう。



「愛しています、ハルト様」

「っ、もう…こんなに綺麗な姿でそんなこと言われたら…本当に、ダメだよミリア」


片手で顔を覆ってへなへなとしゃがみ込むハルト様。


視線を合わせるように膝を折ると、彼は少しだけ潤んだ瞳で小さく唇を尖らせていた。


「ええっ、ハルト様…その表情すっごく可愛いですよ」

「…どう考えたって可愛いのはミリアでしょ」


「ふふっ、ありがとうございます」


素直にお礼を言って微笑むと、彼は片手を私の後頭部に伸ばし、そっと自分の方へ引き寄せる。


ちゅっ

そんな軽いリップ音がして、唇にじんわりと彼の熱が伝わる。


「…えっと、あの、ハルト様…?」

唇が離れてもかち合った視線だけはずっと逸らされることなく私を見つめ続ける。

彼は私の動揺に気づくとクスリと悪戯な笑みを零した。



「顔真っ赤」

「なっ…!」


「やっぱりミリアの方がずっとずっと可愛いよ」


____完敗だ。

勝てた試しなんてないけれど。



「ドレスが汚れちゃうからほら立って?」

「…そうですね」


なんだか余裕そうなハルト様にムッとしたから私は敢えて教えないことにした。



この国では式が始まる前に花嫁の控え室に入ることがマナー違反だってことも

キスしたせいで彼の唇が私のリップクリームで赤く染まってしまったことも。



緊張した私を落ち着かせるためにハーブティーを用意してくれている侍女もすぐに戻ってくることだろう。

怒られてしまえばいいんだ。





■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫








完結まで一日二話投稿に戻します。




6時と18時予定です。




しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

【完結】貴方をお慕いしておりました。婚約を解消してください。

暮田呉子
恋愛
公爵家の次男であるエルドは、伯爵家の次女リアーナと婚約していた。 リアーナは何かとエルドを苛立たせ、ある日「二度と顔を見せるな」と言ってしまった。 その翌日、二人の婚約は解消されることになった。 急な展開に困惑したエルドはリアーナに会おうとするが……。

家出を決行した結果

恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。 デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。 自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。 ※なろうさんにも公開しています。

どうぞお好きになさってください

みおな
恋愛
学園に入学して一ヶ月。 婚約者の第一王子殿下は言った。 「学園にいる間くらい自由にさせてくれないか。君が王太子妃になることは決定事項だ。だから、せめて学園に通う二年間は、僕は恋がしたい」 公爵令嬢はその綺麗な顔に冷酷な笑みを浮かべる。 「好きになさればよろしいわ」

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

平手打ちされたので、婚約破棄宣言に拳でお答えしました

Megumi
恋愛
婚約破棄を告げられ、婚約者に平手打ちされた——その瞬間。 伯爵令嬢イヴの拳が炸裂した。 理不尽に耐える淑女の時代は、もう終わり。 これは“我慢しない令嬢”が、これまでの常識を覆す話。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】 積み上がった伏線の回収目前!! 夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。 長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。 待っていたのは、凍てつく絶望。 けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。 「夫は愛人と生きればいい。  今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」 それでも私は誓う―― 「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」 歪で、完全な幸福――それとも、破滅。 “石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。

処理中です...