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恋愛感情

第13話

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彼の方が年上とはいえ、遠慮している姿を見て新高さんは

「西さんは撮影とはいえ、お相手の方が本命の方なんでしょう?」

「そう…ですね」


本命なんだ…、嬉しい。本当に好きな人はいないのかな?


私はアイドルであり、いわば芸能人でもある。一方の西君はモデルと言いつつも学生さん。彼にとってこの仕事はアルバイト的な感じなので、私達みたいな芸能人の類に入るかは正直微妙な所。恋愛に置いて良く芸能人が一般人と結婚というニュースを視るけど、あれは片方が元芸能人というのが殆どで、普通は芸能人の方が色々な事を考慮して距離を置くから、先ずお付き合いというのが難しい。

稀に友人の繋がりで芸能経験がない純粋な一般人と結婚というのを聞くけど、あれはウルトラレアに等しい。だからこそ西君は芸能人では私で、別で普通に好きな人が居ると思っていた。

「本命ですか?お付き合いされている方は居ないんですか?」

嬉しさで何故か突然彼女の存在確認をする私。

「もちの論です!」

照れ隠しか、少し捻った答えを出した。彼女が居ないと分かった瞬間、心が妙に開放された感じがした。それが嬉しさによる開放というのがわかり、思わず

「ありがとう、凄く嬉しいです」

彼の目を見て心からそうお礼を言った。

「なんだか本当のカップルみたい。彼はタジタジだけれども(笑)」

「すみません」

するとそれを見た新高さんはある提案をしてきた。

「本当に西さんは上原さんの事好きなんだなって良く伝わるし、上原さんは上原さんでそれに対してしっかりと受け止めていて、素晴らしい方ですね」

まさかそんなに褒めてもらえた事に対して私は思わずお礼を伝える。すると佐藤さんは続けて、

「そうですね、緊張しても無理はないから、そのタメ口って言うのも手だけど、折角なら少し慣れるまで時間を作ります?見ている感じだと、上原さんは大丈夫そうだけど、彼がまだっぽいから」

「え、でも撮影は…」

西君は不安そうな声で新高さんへ問い掛ける。

「ちょっと異例だけど、やり方を変えてみます」

「すみませんなんか…」

「大丈夫ですよ、こちらとしては結婚式っぽい撮影が出来ればいいですから、なんも支障もありません、心配しないでね。ていう事で佐藤さん、少し2人に時間を上げてやって」

「はい、わかりました。では一旦自由にされてみますか?」

「「自由⁉」」

私は佐藤さんの言葉に驚く。

「はい、自由って言ってもこの式場を出られても困りますので、ここは花道とか噴水やら、撮影用で色々セットがあるので、それを見に行かれたらどうですか?私たちは離れていますから、その間2人でお話でも」
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