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恋愛感情

第14話

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そう言われて私達2人は式場周辺を歩きだした。途中、それまで遠くで見ていた西君のマネージャーに休む様に声を掛けられるも、少なからず私にも責任があると思い、

「大丈夫です、お互い緊張してるんで先ずは少し話しさせて下さい、お気遣いありがとうございます」

と、西君ではなく私がそう言って振り切った。歩き出して直ぐに近くのお花畑のベンチがあり、少し落ち込み気味の西君に座る様に声掛けし、隣同士で座った。

「本当にすみません、俺のせぃで咲良さんだけではなく、スタッフの方にまで迷惑かけてしまって」

第一声は西君からの謝罪だった。私は謝罪させてしまった事に少し罪悪感を覚える。

「いえいえ、大丈夫です。緊張するのも無理ないです」

私はそう言うしかなく、

「いゃ…、仕事で来ている以上、それなりの覚悟でしないといけないのに、恥ずかしい事に咲良さんに対してニヤニヤしてばかりで、全然仕事に集中出来てなくて‥マジで申し訳ない…」

そう言って頭を抱える西君。その声は震えていて、物凄い責任感がある方なんだなと感じた。普段あんなに優しくて、且つ、自分より相手ファーストで接していて格好いい印象しかなかった彼の意外な一面に心がキュッとなった。同時に、『彼のそういった弱い一面も傍で癒したい』そう言った気持になり、私は彼に近づく

「手…貸して」

今は何言っても余計に彼を苦しめると思い、私はそう言って手を差し伸べる。

「え…」

とは言いつつも西君は何かを察知してか左手を差し伸ばす。私はその左手をギュッと握りしめる。本当だったら抱き締めたい気持ちにもなったけど、それはちょっと世間的に宜しくない。今の自分の精一杯の慰めだ。

「本当にごめんなさい」

「ううん」

私は小声でそう言って彼の手を握っている左手の甲をもう片方の手で撫でる。この時の気持ちとして『私は西君の事が好きになって来ているんだな』って思った、わかんないけど。

このわかんない理由としては恐らく『アイドル』という清廉潔白な壁が立ちはだかっているのだろう。何処かで『好きになってはいけない』という想いと、『好きになりたい』という想いがぶつかり合っている。まだ『好きになってはいけない』という想いの方が勝ってはいるけど、いつどこでこれが逆転するかわからない。

もしすると、案外直ぐかもしれない…


to be continued…
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