本気の宇宙戦記を書きたいが巨乳も好きなのだ 〜The saga of ΛΛ〜 巨乳戦記

砂嶋真三

文字の大きさ
103 / 230
起転[承]乱結Λ

14話 皆、巻き込まれる。

しおりを挟む
 御前会議から時を置かず、ベルニク領邦政府は新体制に関する発表を行った。

 統帥府報道官に就任したソフィア・ムッチーノの初仕事となったが、かつての同僚達からの手厳しい質問に対して硬軟織り交ぜつつ受け答えする様子は、トール・ベルニクの期待に沿う結果であっただろう。

 彼女をトールに推薦したロベニカは、自身の執務室で報道官の様子を見ていた。

 オソロセアで新体制の目論見をトールから聞かされた時、最初に感じたのはやはり重臣達への不信があるのか──という思いである。

「いえいえ。ボクは信じてますよ」

 取り繕うような嘘を言う男では無いとロベニカは知っている。

 だが、些か軽い言葉にも聞こえた。

「領主が何もしなくても、どうにか頑張ってくれてきたんですから」

 彼が謎の覚醒を果たすまでの十年間、領邦経営は重臣達の老いた双肩にかかっていたのだ。

「経済的な失策云々を言う方もいますけど、早々に良く出来るもんでもないでしょう」

 人口や地理的条件などの様々な要因が絡み、早晩解決できるような話では無い。

「そもそも一番悪いのって、ボクとか、まあ後は先代ですよ」

 先代エルヴィン・ベルニクは地下室へ至るキューブをセバスに渡す際にこう言った。

 ──この家で──いやこの領邦で信用できるのはお前だけなのだ。

 領主が重臣や領民を信じられぬ精神状態では、領邦経営が劇的に上向くはずも無い──というのが、トールの出した答えである。

「統帥府は、ようはボクが居なくとも、前へ前へと進んでいく為の組織です」
「い、居なくとも?」

 ロベニカは、その言葉に不穏な気配を感じ尋ねた。

「色々と見て回りたい──あ、いや、ええと──ほら、まだまだ戦争とかありそうじゃないですか」

 徐々に細まっていくロベニカの視線を避けるかのように、トールは窓の外に呑気な顔を向けた。

「領主として責任感を持ってですね──前線の士気も上がるように──その──例の重弩級艦と話せるのもボクだけですし、折角、聖剣も授かっていると言いますか──」

 ふぅ、とロベニカは息を吐く。

 諫めても、止めても仕方が無いのだろうと判断したのだ。

「意図は理解できました」

 ロベニカの反応に、トールは喜色を浮かべる。

「ただ、統帥府は重臣達を補佐官に据えられるのでしょうか?」
「当面はそうですね。ただし、経済を任せる商務補佐官はリンファさんにします。後、統帥府のトップは内務相にお願いする予定です」

 新体制において、統帥府長官は非常に重要な責務を担い、領主代行とも言うべきポストとなる。

 内務相ヨーゼフは、トールと気が合いそうにない人物だが、意外にもトールは高く評価していた。

 口煩く形式に走る傾向があるとはいえ、その忠誠心と生真面目さに価値を見出したのである。

「で、その次に大変なのが、首席補佐官って事になります。これはロベニカさんにお願いしますね」
「ヴえっ!わ、私ですか?」

 狼狽えるロベニカは、思わず奇妙な息が漏れてしまった。

 首席補佐官とは、統帥府長官に次ぐ主要ポストとなる。

「はい。お願いしますね」 

 あまりの重責に倒れそうになりつつ、ロベニカには別の意味で気掛かりな点があった。

「で、では、秘書官は──?」

 世間で英雄と持て囃され始めた男トール・ベルニクというサピエンスは欠点だらけの為政者である。

「ええと、その事なんですけど──」
 
 だが、間近に在れば在るほどに分かる。

 彼に仕える者にとって、

「──やっぱり、秘書も兼任で続けてくれませんかね?」

 少しばかり照れくさそうに告げるさまは、どうにも悪魔のような魅力が過ぎるのだ。
 
 ◇

「マリーア卿か、かたじけない」

 女男爵メイドとなったマリに案内され、トールの執務室に入って来たのは内務相──ではなく、統帥府長官を拝命したヨーゼフ・ヴィルトである。

 マリは従来通りファーストネームで呼んでくれるよう周知しているが、礼節を重んずるヨーゼフが首肯するはずも無かった。

 マリ自身も爵位付きのメイドなど、周囲を困惑させるだけであろうとは自覚している。

 とはいえ彼女にしてみれば、今の職を辞するなど有り得ぬ話なのだ。トール・ベルニクに永久とわを誓っており、実際に彼女の人生はその言葉通りとなる。

「あ、長官」

 遥かな未来に待ち受ける運命など知る由もないトールは、平素と変わらぬ様子でヨーゼフを出迎えた。

「ちょうど良いところに来てくれました。けど、お話しがあるなら先にどうぞ」
「え、い、いえ──その──」

 ヨーゼフの用向きは単純である。

 領主の決め事に、僭越不敬であろうと悩んだのだが、

 ──なぜ、私なのか?

 と、尋ねざるを得ない。

 彼の実感としてはうとまれているとしか思えなかったのである。
 
 また、周辺を探っていた小娘から、例の噂とて聞き及んでいるはずなのだ。

「わ、私などより、閣下の用件を先に伺えればと──」
「分かりました」

 譲り合う時を惜しんだのか、トールはあっさりと受け入れた。

「亡命の件なんですけどね」
「ごほごほっ」

 いきなりの核心に、むせたヨーゼフは自身の胸を叩いた。

「そ、それはですな──」
「分かってます。いや、分かってると思います」

 トールは笑顔で頷く。
 
 ヨーゼフ・ヴィルトの妻の出身地は、復活派勢力に属するカドガン領邦である。

 の地で製薬事業を営むロイド家に連なる女であった。

「隠居しようとされてたんですよね?」
「──左様です」

 疲労と諦念、そして己への自責も有った。

 とはいえ、領邦最大の行政組織である内務省の長だったのである。
 引退したところで影響力は残るだろうし、何より自分の性格から、いらぬ節介を焼く恐れがあった。

 ならば、いっそ領邦を離れ妻の故郷へ──と考えたのだが、現在の国際情勢からすると密入国か亡命という事になる。

「無論、決まった話では無いのです。何処かで漏らした下らぬ愚痴が、妙な噂となってしまったのかもしれません」

 言い訳がましい口調となる事を恥じつつ、ヨーゼフは話を続けた。

「カドガンに亡命など、噂だけでもご迷惑になるとは理解しております。いかなる処罰でも──」
「これを、利用します」
「は、はい?」

 理解に苦しむ領主の反応に、些か間抜けな返事となった。

「利用と申されますと――いったい――」
「ヨーゼフ長官、今からする話は秘密ですよ」

 重用事というより、胸に秘めたる想い人を打ち明けるかのような口調である。

「分かりました」
「長官が隠居を希望するカドガン領邦なんですけどね」
「い、いや、それは──」
「年内から、どれほど遅くとも来年までには攻めてくるはずなんです」

 カドガン領邦は、新帝都が存するベネディクトゥス星系とランドポータルで接している。

 なお、同ポータルでは、ベルニク、オソロセア、マクギガンの連合軍が防衛陣を築いていた。

「確かに大軍を擁する領邦ですが、早々に攻める余裕があるのでしょうか。前回の損耗も残っておりましょうし」

 フェリクスから離脱するトール達に襲い掛かったが、背面からマクギガン領邦の艦隊に襲われて撤退戦を強いられる結果となった。

「カドガンちゃま──グリンニス伯に残された時間は僅かです」

 トールの知る物語とは既に異なる状況となっているが、グリンニス・カドガンの患う奇病が癒えた訳では無いのである。

「彼女は、欲しています」
「ベネディクトゥスをですか?」

 ヨーゼフには、病を押してまで奪うべき価値のある星系とは思えなかった。

「全ては明かせませんが、あそこには彼女が興味を抱く場所があるのです」

 そう語りながら、例の不幸な兄弟の姿が脳裏をよぎる。

「な、なるほど──しかし、その件と私の不名誉な噂に何の関係があるのですか?」
「現在は可能性のひとつに過ぎませんが、近日中にボクはグノーシス船団国へ行く事になると思います」

 次から次へと問題発言の飛び出す男である。

 首席秘書官ロベニカの苦労を思い、ヨーゼフは彼女の言葉遣いについて、今後は小言を述べる回数を減らそうと決意した。

「でも、ボクの留守中に攻められるのは困るんです」

 前線に行きたいですしね、などと言わない理性はトールに残っている。

「当面の間、ボクとヨーゼフさんは、仲良しではないていでお願いしますね。不平不満をたっぷりと言って下さい。あと、ボクがグノーシス船団国に行く際は、喧嘩別れぐらいしてもいいかもしれませんねぇ、アハハ」

 謀略──という分野に疎いヨーゼフにも、トールの意図するところが、朧気おぼろげながらに見えて来た。

「きっと、向こうからヨーゼフ長官に接近してくるはずですから──」

 こうして、礼儀と伝統の守護を信条とする男は、トール・ベルニクという大渦おおうずに巻き込まれていくのである。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

処理中です...