異世界召喚された占い師は、預言者として魔王にさらわれちゃいました!!

なつき

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プロローグ

まさかの異世界召喚

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ミツキは占い師である。
タロットを使うものの、基本は霊感を使う、ちょっとした未来予知をベースにした占いをしていた。
春からプロ占い師になって三ヶ月。
ようやくリピーターも増え始めた矢先、

「ウソでしょお!?」

いつもどおり占い館へ出勤したミツキは、あまりのショックでその場に立ち尽くした。
閉ざされた館の扉に貼られた紙には、無情にもこう記されていた。

『当館は都合により閉館となりました。長らくのご愛顧まことにありがとうございました。』

あまりに簡素な文である。
ドアノブに手をかけてみたが、扉はまったく開かない。

「誰か!!誰かいませんかー!?」

ドンドンと扉を叩き、叫んでみたが、何の変化もない。
ミツキは思わずへたりこんだ。

「マジか・・・」

目眩がする。
OLから転職し、やっと客を掴み始め、軌道にのったところだと思っていたのに。
途方に暮れていたその時だった。

「!?」

唐突に眩しい光に包まれた。
あまりの眩しさに目を瞑ったその直後、

「おお!!」

歓声があがり、何事かと驚き目を開けると、

「!?」

目を疑う。
周囲をぐるりと、数人に囲まれている。
その格好はまるで、よくあるRPGの魔法使いである。
あまりの怪しさに、軽く悪寒が走る。
それに、先程までミツキは占い館の扉の前にいたのだ。
地下一階にある占い館の扉前は、本当に人一人が入る程度の狭いスペースで、その後ろには地上へ続く階段があるだけ。
だというのに、今は広い部屋の中にいる。
移動した覚えなど露ほどもないのに、だ。

「召喚は成功ですな!」
「ええ!預言どおりの黒髪、黒目!間違いない!」

ミツキを取り囲む人々は、歓喜の声をあげている。

「あ、あの、ちょっと!」

思いきって声をかけたミツキを、怪しいローブの人々が一斉に見つめる。
その視線に戸惑いながらも、ミツキは何とか次の言葉を口にした。

「あなた方何なんですか!?私、占い館の前にいて、なのに、なんで!?どうなってるんですか!?」

取り乱すミツキに、ローブの一人が答えた。

「突然の事で驚かれるのも無理はございません。私どもは王宮魔導師。先日崩御された大預言者様の預言に従い、貴女様を召喚させて頂きました」

「しょ、召喚?何、それ」

「はい。新しい大預言者様。私どもは、儀式をもって貴女様をこの世界へ召喚したのでございます」

整然と述べられる言葉を、ミツキはまだうまく飲み込めない。

「は?儀式?召喚?大預言者?何ですか、それ?」

「貴女様はこの世界を救う次代の大預言者様として異世界から招かせて頂いたのです。迫り来る魔王の驚異に立ち向かう唯一つの希望、勇者を導く大預言者様」

淡々と述べられた言葉を反芻するが、理解が追い付かない。

「ま、待って下さい。何を言ってるか、よくわからないんですが」

混乱していたその時、

「っ!!??」

唐突に背後から何者かに抱きすくめられ、フワリと身体が宙に浮いた。

「魔王!?」
「なんてこと!」
「大預言者様を離せ!」

口々に叫ぶ人々の前で、ミツキは何が起こったのか理解出来ぬまま、自分を抱きすくめている腕の主を、恐る恐る仰ぎ見た。
そこには、恐ろしく造形の整った、長い黒髪の美青年の顔があった。
形の整った凛々しい眉、くっきりとした二重瞼に、目力のある大きな瞳、通った鼻筋に、薄い唇は妖しいまでに紅く美しく、首筋は滑らかで、喉仏が男の色気を醸し出している。
長く伸びた黒髪は艶やかで美しく、サラリとミツキの頬をくすぐる。
抱きすくめられている為に感じる身体つきはまさに男のそれであり、ミツキは思わず心臓が跳ね上がるのを感じた。
美青年に抱きすくめられているという、常では有り得ない状況。
しかも比喩ではなく、現実的に宙へ浮いている。

(夢?夢ね!夢よね!?夢しか有り得ない!)

どの辺から夢なのか。
もしかして、占い館が閉館したなどという貼り紙を見たあの辺りからして、もう既に夢なのかもしれない。
というか、夢であってほしい。
などと思わず考えていたミツキの事などお構い無しに、美青年は言い放った。

「預言者は頂いていく!」

周囲のざわめきをよそに、美青年はミツキを抱いたままその場からかき消えた。
次の瞬間、グラリと空間が歪み、フッと元に戻ると、周囲の景色が一変していた。
先刻までは真っ白な部屋の中にいたのに、今はだだっ広い黒と赤を基調とした豪奢な部屋の中だ。
ミツキは、唐突に酷い眩暈に襲われ、吐き気を覚えた。
青い顔で口許に手をやるミツキを、しっかりと抱きかかえたまま、美青年は、ふむ、と呟く。

「気分が悪そうだな。さては空間移動になれていないか。大預言者というのは存外か弱いな。セバス」

「は!魔王様」

美青年の前に、これまた美形の、しかし頭に二つの立派な角を、背中に黒い大きな翼を生やした男性がかしずく。

「お前に預ける。傷つけるな。私はこれに興味がある」

「御意に」

ゆっくりと手放され、ミツキはその場で口を押さえてしゃがみこんだ。
まるで激しい乗り物酔いをしたかのような感覚で、今にも吐きそうなのだ。

「娘、これを飲め」

差し出されたのは硝子瓶だ。
透明度の高い、美しいブルーの液体が入っている。

「これ、は?」

「見て分からんのか?ポーションだ。光栄に思え、最高級品だぞ」

「ぽーしょん・・・」

よくゲームで聞く回復薬である。
まさかと思う。
しかし、急に目の前の景色が変わったり、角やら翼やら生えている美形がいたり、普通じゃない状況である事は確かであり。

「何だ、その目は。お前、まさか疑ってはおるまいな?」

ギロリと睨みつけられ、思わず悪寒が走る。
美形の放つ威圧感は半端ない。
それも、美形に加え、角と翼という普通じゃないものまであるという信じられないおまけつきだ。
断ったらどうなるんだと空寒くなるのを感じ、こうなっては仕方がないと、腹を括った。
瓶の詮を抜き、ままよ、と中の蒼い液体を飲み干す。

「!?」

直後、急に吐き気が消えた。
先程までの眩暈も、嘘のようになくなっている。

「効いたようだな。さあ、気分が良くなったなら着いて来い」

スタスタと美形が歩き出し、ミツキは慌てて後を追った。

「あ、あのっ!」

「なんだ?」

美形は振り向かずスタスタと通路を行く。
黒を基調とした通路は煌々と灯りに照らされており、床に敷かれた紅いフカフカの絨毯が歩く度適度に沈む。

「その、さっきの人、は」

「人ではない。魔王様だ」

不機嫌に返された言葉に思わずビクリとなる。

「ま、魔王様は、どうして私を?」

「貴様が大預言者だからだろう?私は反対だったが、魔王様が貴様をどうしてもと仰るから仕方がない」

明らかに不機嫌な美形を前に、ビクビクしながら更に問う。

「あの、そもそも、その、大預言者っていうのは?」

「なんだ貴様、まさか、知らないのか?」

初めて足を止め、美形がギロリとミツキを睨む。
その凍りつくような視線に、ビクリと身体を震わせながら、それでも何とか勇気を振り絞って答えを口にする。

「・・・はい」

すると、あからさまに侮蔑の目を向けられ、深い溜め息を吐かれた。

「まさか本当に何も知らぬとは。仕方ない。歩きながら話してやるから、聞くがいい。二度は話さぬぞ」

「は、はい!」

それから部屋に案内されるまでに説明されたのは、次のような話だった。
魔王様は魔族を束ねる王であり、人にとって最大の驚異。
だから人は勇者を募り、魔王を討ち滅ぼそうとする。
その勇者を導くのが大預言者なのだが、つい最近、その大預言者が病で死んでしまった。
だが、大預言者は言葉を残した。
自分がこの世を去ったら、別の世界から次の大預言者を召喚するように、と。
それは黒髪黒目の乙女だ、と。

「まさか、それが私だって言うんですか!?」

「そうだ。魔王様は貴様を連れ帰った。貴様が勇者を導く事がないようにな」

荒唐無稽な話である。
それに、分からない事がある。

「じゃあ、どうして私、殺されないんですか?」

「私も貴様のような者は殺せば良いと進言したのだ。だが、魔王様は情け深い方だからな。ただ召喚されただけの弱い女を殺すなど、哀れだと仰られてな」

つまり、殺されても仕方ないのところを、魔王の庇護下におかれる事でよしとされたのである。

「娘、魔王様にくれぐれも感謝せよ」

言い捨てて、美形はミツキを部屋に案内し、外へ出て鍵をかけていった。
黒が基調の、紅い絨毯が敷かれた豪勢な部屋のベッドに腰掛け、ミツキは思わず深い溜め息を吐いた。

「・・・これから、どうなるの?」

夢なら醒めて欲しい。
心からそう思うのであった。
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