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隣にいたのがあなただから

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「ルイさん、僕は確かにこの月光花を美しいと思いましたが、見とれたのは、あなたと一緒だからですよ」

まるで子供をあやす様にリエルは背伸びして私の頭を優しく撫でる。

「あなたがわざわざ僕をここに連れてきて、僕と一緒にこの景色を見てくれた。僕はそれが嬉しかったんです」
「隣にあなたがいてくれたから、こんなにはしゃいじゃったんです」
「僕にこの景色を見せたいと思ってくれたあなたの気持ちがたまらなかったんです」

何千年も生きたはずなのに、たかが十数年の子供の言葉で安堵していく自分がいた。嬉しく思う自分がいた。そんな自分がしゃしゃり出てきて、勝手に口を動かす。

「では女王に見惚れていたのはなんだ」
「それは、あなたと似ているなって思って。だって、ほら」

リエルが私の前髪をかき分けてそっと笑う。

「瞳の色、同じでしょう?」

そっと頬に添えられた手に己の手を重ねる。

「お前は私が一番なのか」
「はい。一生を捧げたいと思いました」
「それは私だけか」
「ええ、あなただけを愛しています」

澱みなく答える彼の言葉に己も答えようとして、答えようとして。それで。
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