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下準備

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その道すがら。

「ねえ、ヴィーは何組なの?」

この学園は合格通知にクラス分けの紙が同封してあるので、学校で知り合った場合、必然的にまず、お互いのクラスを尋ねあうことになる。といってもこの学園は授業が選択式なので、同じクラスであっても行事時やホームルームくらいでしか、そのクラスでは過ごさない。

「Ⅳよ。フィリ、それにレフラルは?」

2人ともⅡ。ゲーム通りだ。ちなみにアンジエもⅡで、リーシェンがⅣ。
せっかく初日から仲良くなれたのに、と目を潤ませて残念がるフィリちゃんは、乙女ゲームの主人公に相応しい、魔性の女だ。
もちろんそれに引っかかる私である。社交辞令とは分かっていても無性に嬉しくなってしまう。フィリちゃん可愛い。

「じゃあ、ヴィーの部屋は?」
「えっとね……」

思えばこれはゲームでは出ていない。
本来なら知るはずのない情報を独り占め出来た嬉しさと、罪悪感とが共存している。どうか後々の公式ブログでこの情報が公開されますように。
ゲームで唯一描かれている事としては、お互いが一人部屋ということのみ……何か忖度のようなものを感じないでもないが、好都合なのでよしとする。

部屋の鍵に彫られた数字を伝えると、同じ階ではあるようで、喜ぶフィリちゃんが見られた。

寮に着き、部屋の鍵が使えることと、荷物がきちんと運び込まれていることが確認できれば、すぐに次だ。最低限の確認だけ終えて、小走りに部屋を出る。
実は、本来であればこんなに急ぐ必要はない。けれど私は自分のクラスへの道以外に、フィリちゃんが各キャラと出会う場所までの距離感を把握しておかなければならないのだ。正直受験時に済ませておきたかったのだが、あの時は通常授業で使うクラスのみ公開され、立ち入り禁止の区間があった上に、リーシェンに会った興奮でど忘れしてしまったのだ。そんなこんなで、今日が残された最後のチャンス。自然、追い込まれる。

まず体験しなければならないのが、最終授業のあるクラスから図書室までの距離である。ここでは、フィリちゃんとリーシェンの出会いイベントが起こる。胸ポケットから取り出したメモ片手に走る。それが終われば次。食堂への道、裏庭への道……入学式が終わったのが午後だったこともあり、その日は道確認だけで、外出禁止時刻となってしまった。
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