【本編完結】推しと推しをくっつけたい!!!~溺愛されたのは私でした~

あんみつ~白玉をそえて~

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意外とノリがいい

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放課後、みんなで自習室の一室に集まる。ここは実技も練習できるため、防音設計。集まるのには最適だ。
とりあえずまず、全員で自分が教えられそうな得意科目を言い合う。それがそれぞれ被っていないことは幸いだ。とりあえず1番勉強のできるリーシェンをまとめ役にすることだけ決めて、私たちは直近のテストをリーシェンに提出した。
1枚、また1枚。見る度リーシェンの顔色が悪くなっていく。最後の1枚にたどり着く前に、どうやら彼の短めの堪忍袋の緒は切れたらしい。

「授業の、何を、どう聞けば、こんな点数になる!?!?」
「え、俺直近はまあまあよかったと思うんだけどなあ」
「私はあんまり自信ないわ……」
「僕はいつも通り、かな」
「私も問題なしかしら」

リーシェンに勉強ができると思われてからは自習もそれなりにやっている。彼の怒りの原因が私ではない……と、信じたい。プルプルと震えながら、リーシェンは彼にしては信じられない程の大声を出す。

「まずレフラル!!!」

は、はい、と声につられたのか、立ち上がるレフラル。

「お前の筆記、文句ない。赤点は余程のことがない限り取らないだろう……筆記は、な」
「あはは……やっぱり実技ダメかな……」
「むしろこれだけ原理を理解しておきながら何故実践できない!?まあだが、少なくともお前は何とかなる。訓練さえすればな、だが今の時点ではアンジエよりも実践は酷いぞ」
「え……アンジエよりも!?」
「それお前ら俺に対して失礼だからな!?」

レフラル実技出来なかったのか……まあそんな気はしてたが。

「次にヴィー!」
「はい!」

なるほど、これは立ち上がってしまう声だ。

「お前は文句ない。むしろ2年生の範囲でも薬草学の点が1番高いとはな……後で教えてくれ。実技も申し分ない」
「あざーっす!!!」

なんだろう、前世の野球部員ってこんな感じだったのかな。それに似た何かを感じる。実はリーシェンは面倒見がいいのかもしれない……というより意外とノリやすいというか。

「次、フィリ!」
「ええ」

すごい。あの剣幕で名前を呼ばれて立ち上がらずにいられるだと……!?流石主人公。もうそろそろ主人公の定義があやふやになっているが。

「お前は逆に器用だ。得意な科目なら学年でも1桁クラス……だが!!!逆にそれ以外は最底辺だ!!!」
「あら、そうなの?みんなこれくらいかと……」
「そんなわけがないだろう!?平均点という概念を知らないのかアンタは!!!……まあ、実技はそこそこだな、得意教科なら」
「そうね!占星術は得意よ!」
「褒めてないにやけるな!……お前はレフラルにもう少し実技を教えてやれ」
「はーい、先生」

うふふと笑うフィリちゃん。うん、ほんと、主人公ってすごい。笑えるの、すごい。

「そして最後に……アンジエ」
「お、おう」
「一点だけ褒めるとするならば……自己分析は、出来ているようなだな」
「!おい、それって……」
「ああ」

リーシェンはこくりと頷いてどこか遠くを見る。

「お前は全教科、もれなく赤点確定だ」

いい笑顔~!!!隣のアンジエとの対比もお見事~!!!

「やっぱりか……」
「とにかく!お前は俺が付きっきりで見てやる。ここまで来たんだ。逆に赤点を取らせてもらえると思うなよ……?」
「……ひえ」

なんだろう、レフラルが怯えるのもわかるくらいどす黒い何かがリーシェンの笑顔の裏に見える。アンジエなんて汗がダラダラ出ている。

「ヴィー!そいつらの面倒は頼んだ。テストはこれだ」
「りょーかい、2人で勉強するのは後日ね。さっ、とりあえずまずはフィリから行く?パッと見た限り、フィリの苦手範囲はレフラルの得意範囲とだいたい被っているようだけれど」

どこか気まずげに目を逸らしながらレフラルが頷く。

「ええ!いつも教えて貰っているのよ!」
「……もう既に教えてもらってるの?」

そうだけど、と小首を傾げるフィリちゃん。

「ふーっ……フィリ、あなたは私と地獄の3時間コースよ」
「ええ!?」
「レフラルはとりあえず今回の範囲の実技魔法を見せてくれる?」

今回の範囲は物体を浮かす魔法と動作停止の魔法。重いものほど浮かせるのが難しくなるし、生きているものほど、その大きさが大きいほど、時間停止は難しくなる。とりあえずまずはそれほど重くない薄めの本を1冊渡す。

「……え、えいっ!」

失敗。ピクリとも動かない。

「や、やっぱり僕じゃ出来ない……」
「成功したことはある?」
「う、うん。一人の時は出来るんだけど、先生に聞いてもコツはわかるし、原理もわかる。のに、なんだかテストの時に限ってできなくて」
「……単に緊張しているだけじゃない?」
「?」
「人の目があるから緊張しちゃって、変に力が入りすぎているのかも」
「それ、あると思うわ!だってレフラルって昔から恥ずかしがり屋さんだもの」

なら話は速い。

「私の前で出来るようになったら、絶対大丈夫よ!」
「そ、そうかなあ……あ、また失敗した」

ひとまずレフラルの目標はこれでいいだろう。慣れたらリーシェンの前でやってみるといいわ、とだけ言い残して、私は問題児、フィリちゃんに向き直る。

「フィリ、先に言うわ……覚悟してね?」

我ながら悪役にふさわしい黒い笑みだったと思う。
そして一時間後が、あれである。
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