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じゃあ、私へは?

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ぱちぱちと、焚き火が燃える音に、ざあざあと降る雨音。自然しか感じられない空間。もうどれだけ経ったか分からないくらい、私たちは2人、身を寄せあっていた。
心地よい静寂を破って。こうして寄り添っていなければ掻き消えていたであろう大きさで、ルディーが尋ねた。

「……ねえ、本当に、どうしてだろうね?」

……私に尋ねているはずなのに、それはどことなく独り言のようで。黙っていれば、そのままの調子で言葉が続く。

「キミを相手にすると、オレは自分を上手く演じられなくなる……自分のペースを、崩される。時々キミは、15歳とは思えないくらい大人びた顔をする。オレの手が到底届かないところにいるみたいに……でも、こうやって今みたいに、オレの腕に収まってくれる時もある。ねえ、なんで?オレの気を惹きたがっているって、解釈してもいいの?」

上手く演じる、ね……自覚はあったんだな。

「……学年ごとに、先輩ごとに。他の人にあなたのことを尋ねると、全く正反対と言ってもいいほど違う答えがかえってくる。どれがあなたのペースなんですか?」
「それは単に一人一人、個性は違うだろう。その子毎にペースがあるんだよ」
「じゃあ、私へは?」

言葉を被せるように聞けば、深い紫の瞳がゆっくりとこちらを向いた気がした。

「……キミは、どうなんだろうね。誰かの対応に迷ったのは……キミが初めて。これは本当だよ」
「……そうですか」

またしばらく、自然の音だけが響いた。

「昔もね、母とこうやって、夜過ごしていたんだ。母と暮らしていたのは数年だったけど。隙間風のある家で、寒い夜。2人でくっついてた」
「……大切な思い出なんですね」
「……ああ、ほら。またこうやって、キミはオレのペースを崩す。こんな事、誰にだって話したことはないのに」
「私は、聞きたいですよ。先輩の話なら、なん、だっ、て……」
「ヴィーちゃん……」
「……ぅんー」

火はオレが見とくから、いいよ、なんて言葉に、ありがとうと返事できたか。それすらわからない段階で、疲れのせいか、暖かさのせいか……安堵の、せいか。私は眠りに落ちていった。
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