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生い立ちと今と2

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「でも時がたつにつれ正妻からの嫌がらせが度を越して酷くなっていって。それで母さんはオレを連れて逃げ出した……前に話したのは、その時の話だよ。でも母さんが死んで、本家に連れ戻された。その時オレはまだ5歳とかでね。なんにも分かってなかった。だから勉強を、与えられる課題を、純粋に頑張った。その結果、どうなったと思う?」

何も言葉が返せなかった。何も、言えなかった。

「正妻だけじゃなく、その子供からもいじめられるようになった。頑張れば頑張っただけ、ね。ほんと、意味なんてなかったんだよ。むしろ頑張らないほうがさ、あの家では上手くやれたんだ。テキトーに流して、テキトーに遊んで。「出来ない子」であった方が楽だったんだ……でもさ」

でもさ、と言った途端、彼の雰囲気が一変した。さっきまでの諦めの表情は、もうどこにもない。そこにあったのは、強い信念を宿した人の姿だった。

「家族なんて、家なんて、どうだってよかった。あれくらいの家柄なら遊んでてもテキトーな地位にありつける。それでなんとなくで人生が送れればよかった……でも、今は違う。オレは見返したい、いや、キミに見合う男になりたい。キミの隣に、胸をはって、立ちたい」

クサいよね、なんて笑うルディー。どこまでも自虐的な顔に胸が締め付けられる。
彼の人格形成、その根底。この人は幼いながらに、どれだけ希望を打ち砕かれてきたのだろう。どれだけの絶望に浸ってきたんだろう。どれだけーー胸が、痛い。すごく、すごく。搾りだした言葉は、平々凡々で。彼の悲しみを拭いとることなんて、絶対に無理で。でも紛れもない私の本音で。ここでフィリちゃんなら彼を救えたんだろうか。眩しいほどの光で、彼を照らせたんだろうか。でも、ここにいるのは私で。この場所は、誰にも譲りたくなくて。たどたどしく、言葉を紡ぐ。

「そうだったのね……そう言ってもらえて、これだけ話してくれて、私は今、すごく嬉しい。あなたのことが、こんなにも知れた。私こそ、あなたの隣に立っていたい。今も、これからも」
「そっか……聞いてくれて、ありがとね」

今日はそのまま2人、手をつないで帰った。この暖かい手を、離したくないと思った。この悲しい人の心を、少しでも温めたかった。
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