【本編完結】推しと推しをくっつけたい！！！～溺愛されたのは私でした～

第2章

過去の事例

「！これ……アリサって人の日記に、シエンと同じように倒れたことがある、って書いてあります！」

探し始めて数十分。レフラルくんが声をあげた。

「えっと、読みますね……今日、私は倒れた。何か魔力がごっそり奪われる感覚がした。それと、カウントダウン3と、声が体の中心から響いた。使用人に何があったと聞けば、私が倒れたのと同時刻、重大な科学における発展の発表が大々的に執り行われたらしい。発案者は、まだ18歳の若い少年。その少年の住んでいる場所を、私は思わず聞いていた。国の北東、スターダムの地だという。それは、私の予想と同じだった。倒れた瞬間と、18年前、私は確かに異分子の気配をその場所から感じていた。このままカウントダウンがすすめば、この世界は彼にどんな強硬手段をとるかわからない。私は王に再三彼の動向に注意しておくよう促した」
「カウントダウン、だと……！？」
「同じ状況、ですね」
「この少年が誰だかわかる人はいませんか？70年程前の日記です！」
「70年前、科学の大進歩……」
「セペクト博士じゃないか？」

一人が、声をあげた。

「彼は18にしてこれまでの科学の常識を覆す発言をした。それは覚えている」

その時18で、70年前。つまり今の彼は88歳ーー生きているのでは？
全員同じことを思ったらしい。顔を見合わせ、頷き合う。その時、ヴィーの父親が王に向かって高らかに言葉を放った。

「私は我が娘の捜索に全力をあげたいと存じます。この博士にも、会いに行きたく思います。仕事の代理には、他の者をきちんと探します、だからどうか、しばらく暇をください」
「……お前の気持ちは、一人の親として痛いほどわかる。だが、お前がいなくては宮廷は回らない……それはお前自身が、一番よく分かっておろう」
「っ、ですが……！！！」

気付けば、声をあげていた。

「オレたちが、行きます！」

視線が、注がれる。ああ、いやだ、この感覚。注目される、この感覚。でも、ここで嫌だと言っていられるか。そんなこと、言えるはずもないだろう！

「オレたちなら、ただの学生です。問題ないでしょう」
「私は構わん。紹介状くらいなら、書いてやろう」

王は、賛同してくれた。あとは、ヴィーの父親だ。迷っている。娘の危機を、オレ達に託すか。

「とにかく、言って話を聞くだけなら、オレ達学生でも出来ます……娘さんのことは、オレ達にとっても大切な、大切な友人です……どうか、任せて、いただけませんか」
「……分かった、君達を信じる。頼めるか」
「はい、必ず。ありがとうございます」
「ではレウザン並びに6名。紹介状を書いて後で渡そう。結果はこの場にいる者全員に報告せよ」
「！娘探しに協力して、いただけるのですね」
「……」

王は何も答えない代わりに、レウザンによく似た笑みを浮かべた。