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後日談

初めての感情

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「ルディー、お昼一緒に食べない?」

毎週水曜日は2人きりで食べる日。いつからか、自然とそうなっていた。周りも私達の関係性にも、この暗黙の了解にも当然気付いていた、そんなある日。上級生、ルディーにとっては同級生の女子が声をかけてきた……既に隣に座っている私には目もくれずに。

「ああ、お誘いありがとう。でも悪いけど今日はヴィーと食べるから」

愛想よく、けれどはっきりとルディーが断る。そこで初めて先輩が私を見た。

「なら今度はこっちの子に聞くわ、一緒にお昼食べてもいい?」

笑顔、笑顔なんだけどさ……!!!美人でキレイ系。けれど背後にどす黒い何かを感じてしまう。断ったら……わかるよな?みたいな。
頷く以外、私に道は残されていなかった。

「ルディー!今度の座学、隣に座りましょ」
「ルディー、パンくずついちゃった。とって?」

始まって約10分。延々と、上記のようなやりとりが繰り返されていた。今の私はさぞかし死んだ目をしていることだろう。もっしゃもっしゃとパンを食べる以外出来ない。ルディーはきちんと断っている。そう、きちんと全て。だから文句はない。ない、けど……ちょっと優しすぎる気がしないでもない。気を遣ってか、先程から無言の私にルディーが話しかけてくる。

「ヴィー、次の薬草学で聞きたいところがあるんだけど」
「え、ええ、もちろん」

教科書を開くルディー。覗き込むのだから必然、距離は縮まるわけで。ルディーもわざと、顔を寄せてくる。この距離は、恋人の私だけだよね。そんな優越感にひたっていたところ、にょっきりと、私達の間に先輩が顔を出した。

「あー、そこ私もわかんない!お揃いだね、ルディー」

誰もが見惚れてしまうくらいきらきらした笑顔。豊満な胸は、確実にルディーの背中に当たっている……いや、当てている。ふと、自分の体を見下ろす。凹凸のない、子供体型。ずきりとした痛みが、胸に走った。

「……次の授業の時に教えるわ。私、そういえば先生に頼まれごとしてたの。お先するわね」
「ヴィー、それなら俺も手伝……」
「ねえ、ルディー、私ここもわかんないの。薬草学得意でしょ?教えてよー」

これ以上、見ていられなくて。ルディーの言いかけた言葉を聞かなかったことにして。私は席を立った。
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