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第22話 二番目、三番目
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セントラル・アイフォース(アイフォース島中央地区)の現領主であるオルド・エンボス氏から、王都への誘いを受けた俺とユナは、それほどの長旅にならないことと(王都までは船で二日程度)、占いをするだけなら危険は無いと思われたこともあり、彼の旅に同行することを申し出た。
一度王都に行ってみたいと考えていた俺にとっては、半分旅行気分という面もあった。
しかし、結婚相談所の助手という事になっているユナは、何度か王都に行ったことはあるらしいが、王女の危機と聞いて、これは何が何でも行かなければならない、と表情を引き締めていた。
話を聞いた限りでは、王女と面識があるようなのだが……そうなると、ますますユナの過去が気になってくるところだ。
ただ、サウスバブルの自分の店をずっと閉めているのも気になるし、旅となればそれなりの準備も必要だ。
また、サウスバブルからも王都行きの船は出ている。ならば、準備を調えた後、二日後にこのサウスバブルの港街で落ち合おうという話になった。
王都に行くのは、オルド・エンボス氏と、自分の後継者として紹介したいということでユアン、そして結婚させようと考えている一人娘のミウの三人。
そしてこちらからは、王の命により、優秀な医者としてジルさん、占い師として俺と、助手のユナの、計六人だ。
ジルさんには既に使者が出ていて、了解をもらっているということで、落ち合う場所は同じだ。
ちなみに、サウスバブルはエンボス家の領土ではなく、また別の貴族が治めているのだが、お抱えの医師と占い師がおり、今回はその二人が派遣されるらしい。
また、その貴族は、エンボス家とは親戚関係だということだった。
来たときと同じ馬車にて『タクヤ結婚相談所』に帰り着いたのは、午後二時を過ぎてからだった。
大分遅くなったが、一応店を開けると……どこからか、俺が帰ってきたという情報が広まったようで、三十分もしないうちに十数人の行列ができた。
わざわざ遠くから評判を聞きつけてきたものの、俺が不在だったために仕方無く港街の宿屋で時間を潰していた人もいたようで、ちょっと申し訳ない気分だった。
最初に占ったのは、二十代前半ぐらいのカップルだった。
自分達が本当に最良の結婚相手なのか、占って欲しいというのだ。
普通、この手の依頼の場合、問題無くベストカップルである可能性が高いのだが……今回、二人の運命の糸は直結しておらず、それぞれ別方向へ伸びてしまっていた。
俺が沈痛な面持ちでその事を二人に告げると、
「……そうですか……」
と、落胆した表情で答えられてしまった。
「……実は、お互い、そうかもしれないと話はしていたのですが、両親が決めてしまった縁談であり、二人とも幼い頃から知った仲だったので、そういう運命なのかと思っていたのですが……」
男性の方の声は、ちょっと寂しそうだ。
「……お互いに最高に幸せな相手ではないかもしれませんが、それでも、不幸になると決まった訳ではありません。二番目、三番目に幸せな相手かもしれないわけで……」
と、あまり慰めにならないことを言って、隣のユナに小突かれてしまった。
「……いえ、やはり、両親に相談して、この縁談はなかったことにしてもらいます。その可能性もあると、お互いに話していましたので……それで、もう一つお願いなのですが、せっかくですので、私達の本当に最高に幸せになれる結婚相手がどんな人なのか、占ってもらえませんでしょうか?」
と、今度は女性の方が聞いて来た。
ちょっと驚いて、男性の方を見ると、彼も大きく頷いていたので、事前にこうなったときの相談をしていたのだろう。
そうであれば、俺としても断る理由がない。
そこでまず、男性の方の相手を占い、その特徴を告げると……。
「……それって、私の妹です!」
と、女性の方が目を丸くして驚いていた。
男性の方も、
「まさか……」
と絶句していたが……ひょっとしたら、その妹さんの方が彼のことをずっと好きだったのかもしれませんね、と笑顔で伝えた。
そして次に女性の相手の特徴を告げると……。
「……それ、僕の弟ですっ!」
今度は男性が叫んだ。
と、いうことは……理想の相手としては、兄弟、姉妹が逆になっていたわけで……。
聞いた話では、両親は弟、妹同士も結婚させようと考えていたらしいので、その辺りうまく説明すれば、丸く収まるんじゃないかということになって、結果、二人とも笑顔でお礼を述べ、帰って言った。
ふう、一組目から疲れた……。
で、次はフードをかぶった女性の相談。
目しか見えないぐらい深くかぶっていたので人相すら分からなかったのだが、彼女がそのフードを取って驚いた。
頭の上方に、犬みたいな耳がある……。
「獣人族の方ですね。アイフォースではめずらしい……」
と、ユナが呟いた。
「はい、このせいで目立ってしまって、あまり視線を集めるのが苦手なので、普段はこうしてフードをかぶっています……」
ちょっと悲しげだ。
ごめんなさい、ジロジロ見てしまいました。
こういう人種も普通にいるんだな、とカルチャーショック? を受けたが、それよりその獣人族の結婚相手、普通に占えるのか心配だった。
普通の人と同じ手順で、お相手のイメージを頭の中に浮かべてみる。
「……今までに見たことも無いぐらい賑やかな町並み、白色の大きな城がちょっと離れた場所に見える……そこに、貴方と同じような獣人族の方が、多数集まっています……この商店街、八割以上が獣人族の方です」
「……その特徴だと、王都のノイドタウン、ですね……」
ユナがフォローしてくれる。なるほど、そういう街があるのか……。
「……お相手の方は……店……これは、飲み屋……いわゆるバーかな……そのカウンターの向こうにいます……」
「カウンターの向こう……ということは、店員さん、でしょうか?」
獣人族の、たぶんまだ若い(人種が違うのではっきり分からない)女性の声は真剣だ。
「……それで、特徴は……えっと、頭の上部に耳があって……」
「……獣人族だから当然、ね……」
うっ……ユナの指摘は正しく、冷たい。
「……うん? 左右で瞳の色が違う……左目は青だけど、右目は半分金色で、もう半分が青色です……」
「……それは獣人族でも珍しいです! それに、その特徴の人の話、聞いた事あります!」
と、依頼者は驚いたような、嬉しそうな表情で立ち上がった。
心当たり有り、っていうところか。会ったことはないようだけど……。
「王都のノイドタウンで、ちょっと変わったオッド・アイでバーテンダーをしている男性……これなら、比較的探しやすいんじゃないでしょうか」
俺が自信満々にそう言うと、彼女は喜々として料金を払い、フードをかぶり直すのも忘れて帰っていった。
ふう、なんとか解決したか。
でも、まだたった三人……。
ちょっと気が重くなるのを感じた。
結局、夕方までかかって、来ていた人全員を占い終わった。
お金にはなるけど、相当疲れた……。
しかし、本日終了の札を出した後、店内でユナが自分を占って欲しいと言い出した。
『運命の糸』が出ていないか、また見て欲しいというのだ。
ちょっと何かが引っかかったが、助手ということで無料で占ってあげることにした……といっても、ちょっと意識して彼女のオーラと、そこから伸びる糸のイメージを感じ取るだけなのだが……。
残念ながら、今回も見えなかったとユナに告げると、あからさまにがっかりした顔をされた。
それはそれで、ちょっとショックだった。
女性の最良の結婚相手が見えない場合、その可能性としては
・最良の結婚相手なし(誰と結婚しても幸せになれない)
・最良の結婚相手は俺である
の二つの場合しかない。
最良結婚相手なし、で落ち込むのは分かるが、『その相手が俺である』というパターンがあるのにがっかりしているということは……俺は恋愛対象ではない?
「……今、私が落ち込んでいるのを見て、落ち込んだ?」
イタズラっぽくそう語りかけてくるユナ。
そんなことない、と答えようとしたが、彼女はアイテムでウソが見抜ける。
ここは沈黙しておいた。
するとユナは、小悪魔っぽく笑った。
「もし糸が見えたら、少なくとも、『誰と結婚しても幸せになれない』って事にはならないって思っただけ。そうなったら、二番目、三番目に幸せになれる人だって、いるかもしれないんでしょう?」
「ああ、そうなる」
「だったら、もし糸が見えても、その人のこと、占わなくてもいいって言おうと思ってたの」
「……どういうことだ?」
「だって、教えてもらったら気になるじゃない」
「……意味が分からない……」
「例えば、タクが、二番目か三番目の可能性だって出てくるわけでしょう?」
「あ……」
ちょっと頬を赤くしてそういうユナの言葉に、トクン、と鼓動が高まった。
「要は、『誰と結婚しても幸せになれない』っていう可能性が消えて欲しかっただけ。一番目の人が見えたとしても、当面、その人を探すつもりはないよ。とりあえず、タクと一緒にいるといろいろ変わった冒険ができて、楽しそうだから」
……えっと、これって、ひょっとしてユナに、からかわれている?
それとも、まさか、迫られている?
彼女なんか出来たことのない俺は、ちょっと戸惑ってしまう。
うっ……ちょっと恥ずかしそうにするユナ、むちゃくちゃ可愛い……。
今、二人っきりの空間にいるわけで……。
「ユナ……」
と、俺が言葉を発しようとしたまさにその時、不意に店の扉を叩く音が聞こえて、はっと我に帰った。
本日終了の札を出しているのに、客が来たのだろうか……。
慌てて出て行って扉を開くと……そこには、十歳ぐらいの女の子が立っていた。
お小遣いを貯めて来たので、自分の将来の結婚相手、教えて欲しいというのだ。
さすがに俺もユナも、顔を見合わせて笑いそうになったが、ここはぐっと堪えた。
そして、十六歳未満の女の子は、保護者同伴でないと占わない事にしていると説明すると、渋々帰っていった。
タイミングがよかったのか悪かったのか分からないが、当面、ユナは一緒に冒険してくれるという事だけは分かったので、まずはそれでいい、と自分を納得させたのだった。
一度王都に行ってみたいと考えていた俺にとっては、半分旅行気分という面もあった。
しかし、結婚相談所の助手という事になっているユナは、何度か王都に行ったことはあるらしいが、王女の危機と聞いて、これは何が何でも行かなければならない、と表情を引き締めていた。
話を聞いた限りでは、王女と面識があるようなのだが……そうなると、ますますユナの過去が気になってくるところだ。
ただ、サウスバブルの自分の店をずっと閉めているのも気になるし、旅となればそれなりの準備も必要だ。
また、サウスバブルからも王都行きの船は出ている。ならば、準備を調えた後、二日後にこのサウスバブルの港街で落ち合おうという話になった。
王都に行くのは、オルド・エンボス氏と、自分の後継者として紹介したいということでユアン、そして結婚させようと考えている一人娘のミウの三人。
そしてこちらからは、王の命により、優秀な医者としてジルさん、占い師として俺と、助手のユナの、計六人だ。
ジルさんには既に使者が出ていて、了解をもらっているということで、落ち合う場所は同じだ。
ちなみに、サウスバブルはエンボス家の領土ではなく、また別の貴族が治めているのだが、お抱えの医師と占い師がおり、今回はその二人が派遣されるらしい。
また、その貴族は、エンボス家とは親戚関係だということだった。
来たときと同じ馬車にて『タクヤ結婚相談所』に帰り着いたのは、午後二時を過ぎてからだった。
大分遅くなったが、一応店を開けると……どこからか、俺が帰ってきたという情報が広まったようで、三十分もしないうちに十数人の行列ができた。
わざわざ遠くから評判を聞きつけてきたものの、俺が不在だったために仕方無く港街の宿屋で時間を潰していた人もいたようで、ちょっと申し訳ない気分だった。
最初に占ったのは、二十代前半ぐらいのカップルだった。
自分達が本当に最良の結婚相手なのか、占って欲しいというのだ。
普通、この手の依頼の場合、問題無くベストカップルである可能性が高いのだが……今回、二人の運命の糸は直結しておらず、それぞれ別方向へ伸びてしまっていた。
俺が沈痛な面持ちでその事を二人に告げると、
「……そうですか……」
と、落胆した表情で答えられてしまった。
「……実は、お互い、そうかもしれないと話はしていたのですが、両親が決めてしまった縁談であり、二人とも幼い頃から知った仲だったので、そういう運命なのかと思っていたのですが……」
男性の方の声は、ちょっと寂しそうだ。
「……お互いに最高に幸せな相手ではないかもしれませんが、それでも、不幸になると決まった訳ではありません。二番目、三番目に幸せな相手かもしれないわけで……」
と、あまり慰めにならないことを言って、隣のユナに小突かれてしまった。
「……いえ、やはり、両親に相談して、この縁談はなかったことにしてもらいます。その可能性もあると、お互いに話していましたので……それで、もう一つお願いなのですが、せっかくですので、私達の本当に最高に幸せになれる結婚相手がどんな人なのか、占ってもらえませんでしょうか?」
と、今度は女性の方が聞いて来た。
ちょっと驚いて、男性の方を見ると、彼も大きく頷いていたので、事前にこうなったときの相談をしていたのだろう。
そうであれば、俺としても断る理由がない。
そこでまず、男性の方の相手を占い、その特徴を告げると……。
「……それって、私の妹です!」
と、女性の方が目を丸くして驚いていた。
男性の方も、
「まさか……」
と絶句していたが……ひょっとしたら、その妹さんの方が彼のことをずっと好きだったのかもしれませんね、と笑顔で伝えた。
そして次に女性の相手の特徴を告げると……。
「……それ、僕の弟ですっ!」
今度は男性が叫んだ。
と、いうことは……理想の相手としては、兄弟、姉妹が逆になっていたわけで……。
聞いた話では、両親は弟、妹同士も結婚させようと考えていたらしいので、その辺りうまく説明すれば、丸く収まるんじゃないかということになって、結果、二人とも笑顔でお礼を述べ、帰って言った。
ふう、一組目から疲れた……。
で、次はフードをかぶった女性の相談。
目しか見えないぐらい深くかぶっていたので人相すら分からなかったのだが、彼女がそのフードを取って驚いた。
頭の上方に、犬みたいな耳がある……。
「獣人族の方ですね。アイフォースではめずらしい……」
と、ユナが呟いた。
「はい、このせいで目立ってしまって、あまり視線を集めるのが苦手なので、普段はこうしてフードをかぶっています……」
ちょっと悲しげだ。
ごめんなさい、ジロジロ見てしまいました。
こういう人種も普通にいるんだな、とカルチャーショック? を受けたが、それよりその獣人族の結婚相手、普通に占えるのか心配だった。
普通の人と同じ手順で、お相手のイメージを頭の中に浮かべてみる。
「……今までに見たことも無いぐらい賑やかな町並み、白色の大きな城がちょっと離れた場所に見える……そこに、貴方と同じような獣人族の方が、多数集まっています……この商店街、八割以上が獣人族の方です」
「……その特徴だと、王都のノイドタウン、ですね……」
ユナがフォローしてくれる。なるほど、そういう街があるのか……。
「……お相手の方は……店……これは、飲み屋……いわゆるバーかな……そのカウンターの向こうにいます……」
「カウンターの向こう……ということは、店員さん、でしょうか?」
獣人族の、たぶんまだ若い(人種が違うのではっきり分からない)女性の声は真剣だ。
「……それで、特徴は……えっと、頭の上部に耳があって……」
「……獣人族だから当然、ね……」
うっ……ユナの指摘は正しく、冷たい。
「……うん? 左右で瞳の色が違う……左目は青だけど、右目は半分金色で、もう半分が青色です……」
「……それは獣人族でも珍しいです! それに、その特徴の人の話、聞いた事あります!」
と、依頼者は驚いたような、嬉しそうな表情で立ち上がった。
心当たり有り、っていうところか。会ったことはないようだけど……。
「王都のノイドタウンで、ちょっと変わったオッド・アイでバーテンダーをしている男性……これなら、比較的探しやすいんじゃないでしょうか」
俺が自信満々にそう言うと、彼女は喜々として料金を払い、フードをかぶり直すのも忘れて帰っていった。
ふう、なんとか解決したか。
でも、まだたった三人……。
ちょっと気が重くなるのを感じた。
結局、夕方までかかって、来ていた人全員を占い終わった。
お金にはなるけど、相当疲れた……。
しかし、本日終了の札を出した後、店内でユナが自分を占って欲しいと言い出した。
『運命の糸』が出ていないか、また見て欲しいというのだ。
ちょっと何かが引っかかったが、助手ということで無料で占ってあげることにした……といっても、ちょっと意識して彼女のオーラと、そこから伸びる糸のイメージを感じ取るだけなのだが……。
残念ながら、今回も見えなかったとユナに告げると、あからさまにがっかりした顔をされた。
それはそれで、ちょっとショックだった。
女性の最良の結婚相手が見えない場合、その可能性としては
・最良の結婚相手なし(誰と結婚しても幸せになれない)
・最良の結婚相手は俺である
の二つの場合しかない。
最良結婚相手なし、で落ち込むのは分かるが、『その相手が俺である』というパターンがあるのにがっかりしているということは……俺は恋愛対象ではない?
「……今、私が落ち込んでいるのを見て、落ち込んだ?」
イタズラっぽくそう語りかけてくるユナ。
そんなことない、と答えようとしたが、彼女はアイテムでウソが見抜ける。
ここは沈黙しておいた。
するとユナは、小悪魔っぽく笑った。
「もし糸が見えたら、少なくとも、『誰と結婚しても幸せになれない』って事にはならないって思っただけ。そうなったら、二番目、三番目に幸せになれる人だって、いるかもしれないんでしょう?」
「ああ、そうなる」
「だったら、もし糸が見えても、その人のこと、占わなくてもいいって言おうと思ってたの」
「……どういうことだ?」
「だって、教えてもらったら気になるじゃない」
「……意味が分からない……」
「例えば、タクが、二番目か三番目の可能性だって出てくるわけでしょう?」
「あ……」
ちょっと頬を赤くしてそういうユナの言葉に、トクン、と鼓動が高まった。
「要は、『誰と結婚しても幸せになれない』っていう可能性が消えて欲しかっただけ。一番目の人が見えたとしても、当面、その人を探すつもりはないよ。とりあえず、タクと一緒にいるといろいろ変わった冒険ができて、楽しそうだから」
……えっと、これって、ひょっとしてユナに、からかわれている?
それとも、まさか、迫られている?
彼女なんか出来たことのない俺は、ちょっと戸惑ってしまう。
うっ……ちょっと恥ずかしそうにするユナ、むちゃくちゃ可愛い……。
今、二人っきりの空間にいるわけで……。
「ユナ……」
と、俺が言葉を発しようとしたまさにその時、不意に店の扉を叩く音が聞こえて、はっと我に帰った。
本日終了の札を出しているのに、客が来たのだろうか……。
慌てて出て行って扉を開くと……そこには、十歳ぐらいの女の子が立っていた。
お小遣いを貯めて来たので、自分の将来の結婚相手、教えて欲しいというのだ。
さすがに俺もユナも、顔を見合わせて笑いそうになったが、ここはぐっと堪えた。
そして、十六歳未満の女の子は、保護者同伴でないと占わない事にしていると説明すると、渋々帰っていった。
タイミングがよかったのか悪かったのか分からないが、当面、ユナは一緒に冒険してくれるという事だけは分かったので、まずはそれでいい、と自分を納得させたのだった。
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