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第52話 浮気者
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「まず、黒杖を使ってユナの時を止めた後の事だけど……さすがにみんな、落ち込んだ……ミリアまで涙を流してた」
「ミリアが? ……明日、ちゃんと謝らないといけないね……」
ユナは、申し訳なさそうな……しかし、少しだけ嬉しそうな表情を浮かべた。
「ミリアは、この半年でずいぶん表情が豊かになった……気がする。まあ、それは追々話すとして……とにかく、ユナは命を落とした訳じゃないし、必ず助ける方法があるだろうから、時間がかかってもそれを捜そう、という話になった。中には、俺の能力を使えばすぐに見つけられるんじゃないかって意見もあったけど……あっ!」
そこまで話して、ある重要な事柄を思い出した。
「……まさか、私の運命の糸、見えなかったなんて、言ってないでしょうね?」
「……ごめん、言っちゃった……」
それを聞いたユナは、大きくため息をついた。
「だって、それはしょうがないだろう? 『糸を辿ろうか』と言ったって、見えないんだから」
「……まあ、それはそうね。ただ見えないっていうだけなら、まだマシかな。その理由まで言った訳じゃあないんでしょう?」
「……」
「まさか……言っちゃったの?」
「言った……」
「二つとも?」
「二つとも」
ユナは、さらに大きくため息をついた。
「もう……信じられない、そんな大事なこと、本人の了承もなく言っちゃうなんて……」
拗ねたようにそう話すユナ。
「あのときは、相当動揺してたから……それで、誰かに、そのときのユナの状況が、誰とも結婚できないっていう理由なのか、と聞かれて、俺はそれだけは考えたくなかったし、認めたくないって言った」
「……そっか……その可能性、あったんだね……」
「だから、その……もう一つの方の可能性に賭けようってことになって……」
「……それって、タクが私の理想の結婚相手……ってこと? えっ、だからみんな、今日私とタクが二人っきりになるように仕組んだの?」
「どうも、そうらしい……」
ユナは三度目の、大きなため息をついた。
「……だって、私にとっては、他の人と同じ様に、ずっと一緒にいた相手なのよ。いきなりそんな風に言われたり、気を使われたりしても困る……」
「俺にとっては、会いたくても、半年も会えなかった相手だ」
「……会いたかったの?」
「会いたかった」
俺がそう真剣に答えたものだから、さすがにユナはちょっと赤くなって、指輪が光っていないことを確認していた。
「……ありがと……うん、嬉しいし……申し訳なかったと思ってる……」
「さっきも言っただろう? 謝るのはこっちの方だ。半年もかかった」
「……なんか、タク……」
「うん?」
「ううん、なんでもない……それで、半年の間に、新しく女友達とか、できなかった?」
「……」
「……ちょっと、どうして黙るの!」
「い、いや、友達ぐらいなら、できたかなって思って」
「ひどい、浮気者っ! ちょっとカッコ良くなったかなって思ったのに!」
「べ、別に浮気ってわけじゃないよ、本当にただの友達だから!」
俺の必死の弁明に、ユナはちょっとむっとしていたが……しばらく見つめ合って、それがおかしくて、互いに笑った。
「……よく考えたら、浮気って言葉も変だけどね……あーあ、せっかくいい雰囲気だったのに……」
「そっちが、女友達なんか言い出すからだよ」
「だって、気になるでしょ? 半年の間、その……ああ、もうっ! 全然話が前に進まないじゃない!」
「ああ、まだ、迷宮から出てすらいない」
「……長い夜になりそうだね」
「そうだな……」
俺は、久しぶりのユナとの会話がまだまだ続くことを、神に感謝した。
「ミリアが? ……明日、ちゃんと謝らないといけないね……」
ユナは、申し訳なさそうな……しかし、少しだけ嬉しそうな表情を浮かべた。
「ミリアは、この半年でずいぶん表情が豊かになった……気がする。まあ、それは追々話すとして……とにかく、ユナは命を落とした訳じゃないし、必ず助ける方法があるだろうから、時間がかかってもそれを捜そう、という話になった。中には、俺の能力を使えばすぐに見つけられるんじゃないかって意見もあったけど……あっ!」
そこまで話して、ある重要な事柄を思い出した。
「……まさか、私の運命の糸、見えなかったなんて、言ってないでしょうね?」
「……ごめん、言っちゃった……」
それを聞いたユナは、大きくため息をついた。
「だって、それはしょうがないだろう? 『糸を辿ろうか』と言ったって、見えないんだから」
「……まあ、それはそうね。ただ見えないっていうだけなら、まだマシかな。その理由まで言った訳じゃあないんでしょう?」
「……」
「まさか……言っちゃったの?」
「言った……」
「二つとも?」
「二つとも」
ユナは、さらに大きくため息をついた。
「もう……信じられない、そんな大事なこと、本人の了承もなく言っちゃうなんて……」
拗ねたようにそう話すユナ。
「あのときは、相当動揺してたから……それで、誰かに、そのときのユナの状況が、誰とも結婚できないっていう理由なのか、と聞かれて、俺はそれだけは考えたくなかったし、認めたくないって言った」
「……そっか……その可能性、あったんだね……」
「だから、その……もう一つの方の可能性に賭けようってことになって……」
「……それって、タクが私の理想の結婚相手……ってこと? えっ、だからみんな、今日私とタクが二人っきりになるように仕組んだの?」
「どうも、そうらしい……」
ユナは三度目の、大きなため息をついた。
「……だって、私にとっては、他の人と同じ様に、ずっと一緒にいた相手なのよ。いきなりそんな風に言われたり、気を使われたりしても困る……」
「俺にとっては、会いたくても、半年も会えなかった相手だ」
「……会いたかったの?」
「会いたかった」
俺がそう真剣に答えたものだから、さすがにユナはちょっと赤くなって、指輪が光っていないことを確認していた。
「……ありがと……うん、嬉しいし……申し訳なかったと思ってる……」
「さっきも言っただろう? 謝るのはこっちの方だ。半年もかかった」
「……なんか、タク……」
「うん?」
「ううん、なんでもない……それで、半年の間に、新しく女友達とか、できなかった?」
「……」
「……ちょっと、どうして黙るの!」
「い、いや、友達ぐらいなら、できたかなって思って」
「ひどい、浮気者っ! ちょっとカッコ良くなったかなって思ったのに!」
「べ、別に浮気ってわけじゃないよ、本当にただの友達だから!」
俺の必死の弁明に、ユナはちょっとむっとしていたが……しばらく見つめ合って、それがおかしくて、互いに笑った。
「……よく考えたら、浮気って言葉も変だけどね……あーあ、せっかくいい雰囲気だったのに……」
「そっちが、女友達なんか言い出すからだよ」
「だって、気になるでしょ? 半年の間、その……ああ、もうっ! 全然話が前に進まないじゃない!」
「ああ、まだ、迷宮から出てすらいない」
「……長い夜になりそうだね」
「そうだな……」
俺は、久しぶりのユナとの会話がまだまだ続くことを、神に感謝した。
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