異世界結婚相談所 ~最高に幸せになれる結婚相手、ご紹介しますっ!~

エール

文字の大きさ
59 / 72

第56話 正体

しおりを挟む
「それは凄い。ならば貴殿は、『究極完全回復魔法アルティメイト・ヒーリング』も使えるというのか?」

 アクトが問うた。

「いや……残念ながら、今の僕では使えませんよ。でも……そうだなあ、半年もあれば、使えるようになるかも」

「ほう、その根拠は?」

 アクトは、チラチラと指輪を見ながら話を進める。
 遠目から見た限りでは、指輪は光っていない。

「それだけ、僕が有能って事だよ」

「なるほど……しかし、我々はすぐにでも『究極完全回復魔法』を使って欲しいのだ。半年も待てない」

「……だったら、他を当たってもらうしかないね。どのみち、アイゼンハイム様が居たって、半年は使うことができないんだ……おっと、これは失言だったか」

 人を食ったような話し方をする青年だが、アクトの指輪が光らないところを見ると、嘘は言っていないようだった。

「……では、半年後であれば『究極完全回復魔法』、使ってもらえるのですか?」

 今まで黙って聞いていたミウが、切羽詰まった様子でそう問いかけてくれた。

「それは、アイゼンハイム様次第だ。でも、無理だと思うよ。あの人は、もはやお金や地位、名誉なんかでは動かないんだ。そしてそれが女性であっても、子供であっても、同情するような事もない。キリがないからね」

 確かに、アイゼンハイムが『究極完全回復魔法』を使えると知って、藁をもすがる思いでここを訪れる者は多いだろう。実際、俺達もそうだ。

 しかし、術者が生涯で数回しか使えないというのが、この大魔法のネックのようだ。よっぽどの理由がなければ使用できない、というのもまた頷ける話だ。

「そもそも、僕が話を聞くだけで特別対応なんだ。王女様の紹介状があったから、僕が対応せざるをえなくなった……まあ、呪われて眠っていた姫様を助けたっていうのに興味を持ったのもあるけどね。どうやって助けたのか、教えてもらってもいいかな?」

 相変わらず上から目線の青年だが、彼にせよアイゼンハイムにせよ、『究極完全回復魔法』の鍵を握っている以上、向こうの方が立場は強い。

 それに、ソフィア王女が呪いを受け眠っており、誰も助けられなかったところを俺達が解呪した、という事情も知っているようだ。まあ、どこまで紹介状に書いてあったのか、開封していない俺達には分からないのだが。

「……それでアイゼンハイム殿に会わせてもらえるなら、喜んで教えるが」

 アクトが揺さぶりをかける。

「……分かったよ。教えてくれたら、アイゼンハイム様に会わせてあげる」

 あっさりと、彼は言い放った。
 俺達はその言葉に驚いたが、アクトは冷静だ。

「ほう……いつ会わせてくれるのだ?」

「そうだなあ……なるべく早く」

「それでは、教えることはできないな」

 アクトはなるべくこちらが有利になるようにと交渉を進める。

「だったら話は終わりだよ……って言いたいところだけど、僕でも助けられなかったあの状態の姫様をどうやって救ったのか気になるなあ……」

 彼は真剣に悩み始めた。
 そしてどうやら、彼もソフィア王女の解呪に挑戦した一人であるらしいことも分かった。

「じゃあさ、もう一つぐらい、何かないかな。僕は興味本位で解呪の方法を知りたいだけだけど、君たちはどうしてもアイゼンハイム様に会いたい。だったら、条件として釣り合わないでしょ? 何かもう一つ、僕を満足させてくれたら、本当にすぐにでも会わせてあげるよ。ただし、秘密は守るって言う約束……いや、契約魔法は使わせてもらうけど」

「……ふむ、すぐに会わせてもらう事も契約のうちなのだな?」

「もちろん。ただし、さっきも言ったように僕が満足できたら、だよ?」

 ここでいう契約魔法とは、条件を確認して、それを必ず守ると約束して、互いに魔法を掛け合うことだ。

 いくつか種類は存在するが、今回使用するのは最も基本的な、秘密保守・及び依頼契約魔法であり、秘密保守に関してはそれを漏らそうとしても言葉に出ず、文章にも書けず、さらに契約内容を最優先で誠実に実行するよう強制力が働き、それを逸する行動ができなくなってしまう魔法だ。
 それは深層心理に刷り込まれ、両者合意の上で契約破棄するまで一生続く。

「……だったら、貴方にとって最高に幸せになれる結婚相手を見つけ出すっていうのはどうですか? 俺はそれを実践する能力を神に与えられています」

 俺は一歩前に進み出て、そう宣言した。

「……へえ、それは面白いや。いっとくけど、契約魔法を使ったら、嘘はつけなくなるよ?」

「もちろん。貴方も、『満足できなかった』なんて嘘はつけなくなりますよ」

 ウィンが若い男性だったので、ひょっとしたら乗ってくるかと賭けに出たのだが、予想以上に彼が食いついてきたのでラッキーだった。

 そして互いに契約魔法をかけ合って、そして俺は彼を占った。

「……まだ若い、二十歳ぐらいの女性が見える……」

「……へえ、二十歳!? これは面白いや……」

 ウィンがそう茶化してくるが、それは無視する。

「……これはどこだ? 見たこともない建物、部屋の中……形容するのが難しいけど、我々が住んでいるのとは全く異国の地に思える……彼女が着ている服も、なんて言うか、異国のものだ……」

「それだけ聞いても、さっぱりわからないね」

 彼は依然として疑っているようだ。

「……彼女は美しい顔立ちで、口元に小さなほくろがある。それに、右手首に、アザがある……」

「……口元にほくろ? 右手首にアザ!?」

 ウィンの反応が変わった。

「……ハンターライセンスを持っている……かなり年季が入っている、本人のものだろうか……ランクは上級……名前はぼやけていて見えないが、発行年は……六十年前になっている……」

「なん……だと!?」

 ウィンが、驚きの声を上げた。

「そ、その右手のアザは、どんな形だ!?」

「……掌側を上にしたならば、いわゆるハート型。やや細長い形状だ」

「……ばかな……あり得ない……」

 俺が目を開けると、ウィンは目を見開いて驚いていた。

「……それが事実なら……その女性は、僕と同じく、六十年以上歳を取っていないことになる……まさか、『究極完全回復魔法』を使った副作用か……」

 ウィンの言葉の意味が分からず、俺達はしばらく混乱していたが、彼は一旦深呼吸をした後、目をカッと見開き、内に秘めたる何かを解放した。
 その途端、彼から強烈な魔力、威圧感、オーラを感じて、俺達は思わず身構える程だった。

「……我が本名はアイゼンハイム。皆、騙してすまなかった。若者よ、おまえの占い、とても興味深いものだった。それだけで、名を明かすにふさわしい満足を得てしまった。まあ、契約通り、王女の解呪の方法も教えてもらうがな」

 唖然としている俺達に対して、彼はニヤリと笑みをこぼした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

処理中です...