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第59話 治癒能力者
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この国は、南北に延びるように並ぶ四つの大きな島と、周辺の幾千もの小さな島々から成り立っている。
王都セントラル・バナンの南西にアイフォースという島があり、そこは五つの領土で成り立っており、その中にサウスバブルの街やアーテムの村が存在している。
さらに南方に、十二もの領土で成り立つ、アイフォースの倍以上も大きな島が存在しているのだが、ウィンはその地方の名家出身だということだった。
といっても、もう六十年以上前の話であり、その時の名前は明かしたくない、ということなので、あえて聞いてはいない。
彼の家は、代々治癒魔法の名門として、領主から貴族の地位を与えられていたという。
彼も幼い頃から英才教育を受けていた。
元々才能があったようで、相当上級の回復魔法が、十五歳の時には使えるようになっていたらしい。
しかし、幸か不幸か彼は三男であり、歳の離れた長男は既に結婚して家督を継ぎ、男の子が二人も生まれていた。
次男は別の貴族に婿入りしたが、ウィンはそんな縁談もなく、家督を継ぐこともない、中途半端な立場だったらしい。
それでも、例えば軍隊の従軍医師になったり、あるいは市民として町医者になる道もあったのだが、彼は、
「一民間人として他の領地に住み、冒険者になりたい」
と希望を伝えて、十八歳で家を出たのだという。
一応、長男は止めたのだが、本心ではそうなることを望んでいたのかもしれない。
ウィンは、治癒能力者として優秀すぎたのだ。
領主の専属医師として仕える長男よりも、三男の方がずっと優秀であるという噂が立っても困る。そう考えていたに違いない、とウィンは語った。
本人が言っているだけなので事実は定かではないのだが……それはともかく、他領地へ赴き、冒険者登録した彼は、引く手あまただったという。
冒険者パーティーにとって、優秀な治癒能力者は喉から手が出るほど欲しい存在だったのだ。
多少の止血や鎮痛程度なら基本的な魔法を身につけている者は多いが、例えば内臓を損傷するような怪我を負った場合、やはり高度な治癒術が必要となる。
パーティーに上級の治癒能力者がいた場合とそうでない場合は、生存確率に格段の差が生まれるのだ。
とある有名な冒険者パーティーにスカウトされた彼は、そこで才能を開花させた。
上級ハンターの揃ったそのパーティーに加わった彼は、戦闘は素人だが、強力な回復魔法はもちろん、仲間の士気を上げたり、防御力を高めたり、魔法攻撃に対する障壁を展開したりと、仲間の期待以上の活躍をやってのけた。
わずか一年の間に三つもの未攻略迷宮を突破し、賞金のかかった凶悪な魔獣を撃退して行く彼等は、次第に増長し、自分達の実力を過信するようになってしまった。
そしてとある深い山中で、数千万の賞金首である伝説級の真竜に挑み、極大の火炎を浴びて、一撃で全滅したのだという。
ウィンも例外ではなく、灼熱を感じた次の瞬間には意識を失っていたのだが、臨死の夢の中で神と思われる存在に会い、彼自身が特別な存在であること、そのしるしとして、一生のうちで七回だけ使用できる『究極完全回復魔法』を授けられた。
彼は、ほとんど無意識でそのうちの一回を自分自身に使い……気がつくと、大木に寄りかかるように横たわっていたという。
かすり傷一つ負っていない自分に驚いたが、それ以上に衝撃を受けたのが、焼け焦げた六つの塊……もはやどれが誰だか分からなくなった、パーティーメンバーの変わり果てた姿だった。
何処かへ行ってしまった気まぐれな真竜に怯えながら、彼は街へと帰った。
しかしそこで待っていたのは、仲間を捨てて自分だけ無傷で逃げ帰った臆病者だという酷評だった。
以降、ほとんどの冒険者パーティーが彼を仲間にすることを躊躇し、彼もまた、やる気を失っていた。
そんな彼に声をかけたのが、彼と同じぐらいの年齢の少女、クラーラだった。
話を聞くと、彼女もウィンと同じような境遇だったらしい。
騎士の家庭で育ち、女性ばかり三人も生まれており、長女だった彼女は優れた魔法の才能があったため、魔導剣士として英才教育を受けたという。
しかし、彼女が十二歳の時、弟が生まれた。
その子の方が、潜在的に魔力量も多いと分かり、この子こそが後継者としてふさわしいと判断され、クラーラは次第に冷遇されるようになってしまった。
そして彼女も十八歳で家を飛び出し、冒険者となったのだという。
よく似た経歴の二人は意気投合し、彼は彼女の所属するパーティーに紹介された。
そのパーティーは、仲間となる者は、噂などではなく実力で判断するという実践的な五人パーティであり、治癒能力者の獲得が急務であったため、すんなりとウィンを受け入れてくれた。
幻惑魔法使用者であるクラーラと治癒能力者のウィンは後衛であり、危険は少ない。
また、前のパーティーと比較にならないぐらい慎重な行動を行うメンバー達に、ウィンはこれならやっていけると考えたという。
そして彼は、クラーラと恋に落ちた。
年齢や境遇の近さ、そして美男、美女同士であり、冒険時もプライベートでもいつも並んで歩いているとなれば、それは必然だったのかもしれない。
しかし出会って半年ほど経ったその日、ウィンにとっては二度目の悲劇が起こった。
王都セントラル・バナンの南西にアイフォースという島があり、そこは五つの領土で成り立っており、その中にサウスバブルの街やアーテムの村が存在している。
さらに南方に、十二もの領土で成り立つ、アイフォースの倍以上も大きな島が存在しているのだが、ウィンはその地方の名家出身だということだった。
といっても、もう六十年以上前の話であり、その時の名前は明かしたくない、ということなので、あえて聞いてはいない。
彼の家は、代々治癒魔法の名門として、領主から貴族の地位を与えられていたという。
彼も幼い頃から英才教育を受けていた。
元々才能があったようで、相当上級の回復魔法が、十五歳の時には使えるようになっていたらしい。
しかし、幸か不幸か彼は三男であり、歳の離れた長男は既に結婚して家督を継ぎ、男の子が二人も生まれていた。
次男は別の貴族に婿入りしたが、ウィンはそんな縁談もなく、家督を継ぐこともない、中途半端な立場だったらしい。
それでも、例えば軍隊の従軍医師になったり、あるいは市民として町医者になる道もあったのだが、彼は、
「一民間人として他の領地に住み、冒険者になりたい」
と希望を伝えて、十八歳で家を出たのだという。
一応、長男は止めたのだが、本心ではそうなることを望んでいたのかもしれない。
ウィンは、治癒能力者として優秀すぎたのだ。
領主の専属医師として仕える長男よりも、三男の方がずっと優秀であるという噂が立っても困る。そう考えていたに違いない、とウィンは語った。
本人が言っているだけなので事実は定かではないのだが……それはともかく、他領地へ赴き、冒険者登録した彼は、引く手あまただったという。
冒険者パーティーにとって、優秀な治癒能力者は喉から手が出るほど欲しい存在だったのだ。
多少の止血や鎮痛程度なら基本的な魔法を身につけている者は多いが、例えば内臓を損傷するような怪我を負った場合、やはり高度な治癒術が必要となる。
パーティーに上級の治癒能力者がいた場合とそうでない場合は、生存確率に格段の差が生まれるのだ。
とある有名な冒険者パーティーにスカウトされた彼は、そこで才能を開花させた。
上級ハンターの揃ったそのパーティーに加わった彼は、戦闘は素人だが、強力な回復魔法はもちろん、仲間の士気を上げたり、防御力を高めたり、魔法攻撃に対する障壁を展開したりと、仲間の期待以上の活躍をやってのけた。
わずか一年の間に三つもの未攻略迷宮を突破し、賞金のかかった凶悪な魔獣を撃退して行く彼等は、次第に増長し、自分達の実力を過信するようになってしまった。
そしてとある深い山中で、数千万の賞金首である伝説級の真竜に挑み、極大の火炎を浴びて、一撃で全滅したのだという。
ウィンも例外ではなく、灼熱を感じた次の瞬間には意識を失っていたのだが、臨死の夢の中で神と思われる存在に会い、彼自身が特別な存在であること、そのしるしとして、一生のうちで七回だけ使用できる『究極完全回復魔法』を授けられた。
彼は、ほとんど無意識でそのうちの一回を自分自身に使い……気がつくと、大木に寄りかかるように横たわっていたという。
かすり傷一つ負っていない自分に驚いたが、それ以上に衝撃を受けたのが、焼け焦げた六つの塊……もはやどれが誰だか分からなくなった、パーティーメンバーの変わり果てた姿だった。
何処かへ行ってしまった気まぐれな真竜に怯えながら、彼は街へと帰った。
しかしそこで待っていたのは、仲間を捨てて自分だけ無傷で逃げ帰った臆病者だという酷評だった。
以降、ほとんどの冒険者パーティーが彼を仲間にすることを躊躇し、彼もまた、やる気を失っていた。
そんな彼に声をかけたのが、彼と同じぐらいの年齢の少女、クラーラだった。
話を聞くと、彼女もウィンと同じような境遇だったらしい。
騎士の家庭で育ち、女性ばかり三人も生まれており、長女だった彼女は優れた魔法の才能があったため、魔導剣士として英才教育を受けたという。
しかし、彼女が十二歳の時、弟が生まれた。
その子の方が、潜在的に魔力量も多いと分かり、この子こそが後継者としてふさわしいと判断され、クラーラは次第に冷遇されるようになってしまった。
そして彼女も十八歳で家を飛び出し、冒険者となったのだという。
よく似た経歴の二人は意気投合し、彼は彼女の所属するパーティーに紹介された。
そのパーティーは、仲間となる者は、噂などではなく実力で判断するという実践的な五人パーティであり、治癒能力者の獲得が急務であったため、すんなりとウィンを受け入れてくれた。
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また、前のパーティーと比較にならないぐらい慎重な行動を行うメンバー達に、ウィンはこれならやっていけると考えたという。
そして彼は、クラーラと恋に落ちた。
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