魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~

エール

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新武装テストの総括

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 ミクはその後も、『ツイン・カノン・ギミック』による冷却魔法、さらには金属弾の射出テストを繰り返し、その性能を確認、その結果をこの試験場の職員に報告、議論していた。

 さらに、ライナスの武器『ツーハンデッドソード +3 (クリューガ・カラエフモデル)』のテストも行うこととなった。
 先ほどのミクのド派手な試験を見た後に、自分の武器を見せるのは少々恥ずかしかったが、それでも市価なら一千万ウェンはくだらない名剣だ。

 対象は、中古のチェインメール(中古品)を着せた藁人形。鉄兜も乗せている。
 壊されることを前提としたノーマルのもので、魔石も埋め込まれていない。
 今までライナスが装備していた両手剣ならば、刃こぼれ、最悪では剣が折れてしまうことが心配で、ちょっと全力で打ち据えるには躊躇するような対象だったが、ミクや職員の

「その剣なら全く問題ない」

 という言葉を信用して、また、何かあっても保証するという言葉も後押しとなり、それでも心配で、五割ほどの力で鉄兜に向かって刃を振り下ろした。
 ザシュッ、と言う音と共に、あっけなく鉄兜からチェインメル全てを両断し、両手剣の刃先は地面にまで達していた。

「お見事!」

 という言葉と共に、それを見ていた三人の職員から拍手が起きた。
 鉄兜に刃が触れる瞬間、オレンジ色の光が剣先を保護していることは分かったが、それでも心配で、鉄兜を切った後の刀身を確認する。

 刃こぼれ一つ無く、刃先はカミソリのような鋭さを保ったままだ。
 ライナスからすれば、全く全力ではない打ち込みだったのだが、鉄製の装備を簡単に切り裂いたその切れ味に驚愕し、また、その丈夫さにも舌を巻いた。

 これが、名工カラエフが作成し、クリューガブランドの充魔石と魔水晶の『魔導コンポ』の力が加わった名剣の実力だった。
 そもそも、カラエフモデルの剣は入手が困難で、予約しても一年待ちと言うこともザラにあるという。それだけに、彼が手にした最新モデルはクリューガ工房の技師達にとっても興味津々だったというわけだ。

 あとは、彼には教えられなかったが、年頃の美少女であるミクが連れてきた若いイケメンの男、ということも、実は職員達の間で話題になっていたのだが。
 ミクが新装備で使用したロッドと鎧の充魔には、大量の魔石が使用され、それだけで市販価格で百五十万ウェンにもなるという。

 これらは、全額この試験場の経費で賄われる。それだけの価値があったということだ。
 実戦では充魔用の魔石は自分たちで稼がないといけないのだが、ミクによれば、そもそもこれだけの火力を使うような戦闘にはならないはずだという。

「だって、私まだ星一つも持っていないから……受けられる依頼も大した内容じゃないよ」

 そう言って笑う。
 それもそうか、とライナスは納得した。これだけの戦闘力を使うとなれば、それはもう戦争レベルだ。

「あと、私の装備の弱点として、接近戦は苦手なの。私自体が格闘の素人っていうこともあるけど……一応、敵に組み付かれたりしたときのために、鎧自体が熱や炎、電撃を纏うことがあるから。なるべく使わないようにしたいけど、その点は注意してね」

 ミクにそう念を押された。

「ああ、そうならないように、敵が接近してきた時は僕が盾になって、君を守り抜く」

 ライナスはそう宣言した。
 中距離、遠距離では火力に大きな差があるが、真に危険が迫るのは敵に詰め寄られたときだ。
 ダンジョンや建物内など、そんな場面はいくらでも想定できる。いや、実際のハンター活動では、むしろそういう状況の方が多いだろう。

 そのことを見越していたからこそ、姉のメルも、これだけ装備が充実しているミクが一人で冒険に出ることを許可しなかったのだ。
 それが分かっていたから、そしてミクの圧倒的な攻撃力を見せつけられて、その上で弱点を補って、と言われれば、ライナスも奮起してそう言うしかなかった。
 その決意を込めて一人頷き、ミクを見ると、なぜか彼女は真っ赤になって照れていた。

「……どうしたんだい?」

「……その……男の人に、『君を守り抜く』なんて言われたの、初めてだったから……嬉しかった」

 ミクの感想に、今度はライナスが照れる。

「あ、いや……うん、頑張るから……」

 そんな初々しいやり取りを、現場の職員達は、あるものはニヤニヤと興味を持って、またあるものは微笑みを浮かべて応援するように眺めていた。
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