魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~

エール

文字の大きさ
39 / 42

裏の大剣

しおりを挟む
 メルはカラエフの元から持ってきた「いわく付きの大剣」をライナスの足下に放り投げた後、近くにいた数体のワーウフル達をあっという間にただの肉塊に変え、そしてすぐに黒騎士へと走り出した。

 迫っていた周囲のワーウルフがいなくなったことで、アクト達に若干の余裕が生まれる。

「……サザンの剣、その『裏物』か……確かにライナス、お前はこれを使えたっていう話だったな」

「えっと……すごく短時間でしたけど、はい」

「私も見てたよ。最初は凄く重そうだったけど、突然軽々と扱うようになって、もう、みんなビックリして……」

 ミクがそうフォローする。

「にわかには信じがたかったが……そいつは、今から千年以上も前に作られたと伝わる剣だ。五百年程前、かの大将軍『サザン』が、一人で千人が守る城を落としたという逸話があるが、そのときの魔剣の話を聞いたことはないか?」

「あ、はい、それはあります。有名な英雄伝説で、七大神器に次ぐ威力を持つ魔剣だって……えっ、まさかこれがそうなんですか?」

「いや、そうじゃない。さすがにそれは未だに王宮に保管されている。ただ、その剣と対となる魔剣が同時に制作されていた。出来の良い方をサザンが使用し、国宝となり、残りは別の貴族階級のものが受け継いできた。今は話す余裕がないから詳細は省くが、それが巡りめぐってカラエフの工房に保管されてたってわけだ。まあ、どこまで本当かは分からないがな……とんでもなく重い剣で、俺も引き抜くことができなかった。馬鹿力がある奴なら、持ち上げることはできたかもしれないが、実戦では到底使えない。メルも重そうにしていただろう? だが、伝説ではサザンが軽々と使いこなしていた……それが再現した。だから騒ぎになっていたんだ」

「……騒ぎになっていたんですか?」

「おまえにその自覚はなかったんだろうがな。軽々と扱える者が出た時点で、伝説は本当だった、ということだ。そしておまえは、ひょっとしたら大将軍サザンの再来なのかもしれない、ってことだ」

「……はっ? いえ、そんなことを言われても……」

「まあ、それはどうでもいいとして……一度は自在に扱えたんだろう? もう一度同じ事をすればいい。メルはこの剣を取ってくるために、往復でかなりの魔力を消費した。そうまでしてでも、おまえにその剣を使ってもらいたかったんだ。理由はただ一つ。あの黒騎士の防御力が高すぎるからだ」

 今、メルとその黒騎士が死闘を繰り広げている。
 手数や速さではメルが圧倒しているが、アクトが言う通り、鎧も分厚く、そして巨大な盾を持っており、それで防がれるとメルの剣はダメージを全く与えられていないように見えた。

「……あの戦いに、僕に加勢しろと……」

「そうだ。そのために、その剣を取ってきたんだ」

 アクトがライナスを見つめる。
 ライナスは、やや戸惑ったようにミクを見た。
 彼女も、ライナスの目を見てうなずいた。

「やってみせろ……ミクもそれを期待している」

 ライナスは、別にミクに良いところを見せたいと思っていたわけではない……はずだった。
 けれど、アクトの言葉に、ミクも真剣な表情で彼を見ている。
 自分は期待されている……まだ共に過ごした時間は短いが、いつの間にか好意を持ってしまっていた彼女に。

「……一つだけ教えてください。『サザンの剣』の『裏物』っていうのは、どういう意味なんですか?」

「さっき言ったように、できの良い方をサザンが受け取った。その剣は、できが悪い方だ。だが、威力が弱いという意味ではない。むしろ逆……扱いが難しい、いわば『暴れ馬』っていうことらしい。少なくとも、伝承ではそういうことだ」

「扱いが難しい……でも、分かりました。やります」

 彼はそう言って、刃が半分地面にめり込んだ大剣の、その柄を握った。
 ……以前と同様に、剣から声が聞こえてくるような気がする。

「モット、ヨコセ……」

 ライナスは、それに心の中の言葉で応じる。

「好きなだけ持って行け。その代わり、一時だけ俺の相棒になれっ!」

 刹那、剣全体が黄金色に輝きだした。
 そしてライナスは、その大剣を軽々と持ち上げ、振り回した。
 すさまじい唸りを上げるその威圧威圧に、ミクは思わず身を縮めた。

 ファーウルフたちの攻撃は、メルに数体倒された後、少し止まっていた。
 しかし新手のワーウルフ達がまた迫っていたのだが、ライナスの持つ大剣から発せられる威圧感にたじろぐ。

 そこに、ライナスがまずは小手調べとばかりにそのワーウルフ達に襲いかかる。
 一振りで、二体のワーウルフが吹き飛んだ。かすっただけで、その巨体が砕け散る威力だ。
 先ほどまでの苦戦がウソのように、残り数体のワーウルフを倒したライナスは、未だ激闘を繰り広げる黒騎士とメルの元へと向かって駆けだした。

「……来たわね、ライナス君。どう、使いこなせそう?」

「はい、今のところは。でも、全身の力を吸い続けられている感じではあります。でも、なんとか気力で頑張ります!」

「そう、さすがね。ミクも見てるから、良いところ見せてね!」

「はい!」

 まだ、メルも冗談を言う余裕がある。
 会話からそれを感じたライナスは、伝説の大剣……正確はその『裏物』を、黒騎士に向かって振り下ろした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

処理中です...