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一章
1話―久しぶりの再会
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俺はあの後帰ってからもう一度冊子を読む。あの場でざっとは読んだがあまり詳しくは見ていなかったからだ。
依頼の内容は学園の警備兼監視。必要になれば軍と学園のパイプ役など、それと生徒として学園に通うこと、という項目に二重線。
前二つの方が大事じゃないのか……?
次に見るのは報酬。依頼があり、報酬があってこその仕事だ。その肝心な内容は
まず、授業料などの諸費用の免除。
あの学園は全寮制であるため、寮に入るための金額などもふくまれている。
次に月50万の給料。寮に入るため、生活費諸々(食費を除く)が掛からないことを考えるとフリーに使える金額だ。まあ仕送りで飛ぶためあまり気にはしないが。
それともうひとつ。これは今、自分の目を疑っている項目なのだが。
この学園の学生寮は四人一部屋であり、シェアハウス系の作りになっている。だが、ここからは高級ホテルもビックリの仕組みが揃っている。
まずリビングだが、備え付けの冷蔵庫にその他家具、キッチンなどに加えて、その辺のマンションなど比べるべくもない広さがあり、そこには全部で六つのドアが付いている。四つはそれぞれの個室へ向かうため、あとの二つはそれぞれお手洗いと風呂場だ。お手洗いはそれなりなのだが、風呂場がすごい。湯船の広さや洗い場の使いやすさに加えてジェットバスまで付いている。
ここで驚くにはまだ早すぎると思える情報を加える。これまでに言った通りに考えると寮はかなりの広大さを誇ることが容易に想像できる。しかし、実際はそこまで大きくはないようだ。
これは一体どういうことか。
そう思ってもっと詳しく見たのがついさっき、そして今。
「空間魔法の技術なんて、一つの学園にあって良いものじゃないだろうに」
これだ。これが敷地がそこまで大きくない理由。よく見てみたところ、寮は廊下に各々の部屋に入る入り口があり、
そこからリビングのある部屋へと入れるわけだが、それ意外の部屋へと通じる六つのドアは全て別の空間に繋がるように仕組まれているようで、実際のスペースはリビングの分しかとっていないということだ。この技術は最先端の技術であり、もう一度言うが、一つの学園にあっていいものではない。
これらのことから、依頼、報酬など全てを考慮し、一つの結論を出すとすれば
「……怪しい。とても」
これは何の予備知識もなくあの学園に向かうのはまずいだろう。
まだ編入まで時間があるし、少し調べるか。
そして、編入当日。
これまでに俺が学園について調べられたことについてまとめてみようと思う。勿論学園に向かいながら。
まず、この学園はエリアAS―Bの運営する唯一の域立の高校であること。
ちなみに一昔前にここはアジアの日本という国だったそうだ。
また、魔学を取り扱っている唯一の高等学校でもある。
そもそも魔学とは、その名の通り、
【魔】
というものについての学問であり、それを扱うための術を教えるためのものでもある。詳しいことは分からないが、今から少し前に謎のエネルギーが発見され、それに【魔力】なんて名前をつけたのが由来だそうで、なんとなく分かる通り、摩訶不思議な力を行使できるものなのだが、現在も詳しい仕組みは解明出来ていない。ほとんどの事柄に「らしい」がつくぐらい曖昧なものだ。
ではどうやってそんなことについて教えているのかというと、使える本人達はなんとなく分かるそうで。
これで魔力を使用出来るかどうかも判別するという曖昧さの塊とも言える実情ではあるのだが、今のところそれで上手くまわっているそうだから、なんというか。
で、だが、この学問は大きく三つに分けることが出来、それぞれ
【魔術】 【魔法】 【魔導】
となっている。
【魔術】は主に魔というものの仕組みについてを学び、それを技術として応用すること。平たく言えば魔についての型を学ぶこと。
【魔法】はこの三つの中ではあまり学問とは呼べない学問(?)だ。何故なら仕組み云々ではなく、感覚で魔というものについて理解しようとしている部門であり、その分自由度は高いが扱い辛い。ほとんどが才能に左右される。
【魔導】はかなり学問としての側面が強い。上の二つは実際に魔術や魔法を「使う」ことを目的としているが、これは魔というものを人々の生活や環境に活かそうというものであり、例えば今俺が乗っている「魔導列車」なんかもその成果の一つだったりする。が、それも平和なご時世だからであって、戦時中は兵器の開発に忙しかったようだ。
魔術や魔法は実際に火を起こしたり、水を作り出したりなどをする、要するにファンタジーな部類だが、魔導はエネルギー源を電力などから魔力に置き換える装置を作ったりなどをするSF的な部類になる。
と、まとめているとどうやら目的地に着いたようだ。
冊子には学園長室に寄ることと書かれていたから、学園に着いたら事務室にでも行くことにしよう。
というか、駅が敷地内にあるとかどういうことか。時間帯的に利用者はほとんどいないが、朝は学生で溢れるのだろう。駅のホームとしてはかなり広い方だ。
そして北口から外へ。南口はなく、西口から寮方面へ、東口からは商店街や大型のショッピングモールなどのある地区へ向かえるようだ。
そして北口は言うまでもなく、学園方面。学園の入り口までは真っ直ぐきれいに石のタイルが敷き詰められている。というか、駅から500mほど校門まであるんじゃないだろうか。なんだ、遅刻者でも増やしたいのか。
そんなことを考えて歩いていると直ぐ校門まで来た。案外近いのか?
校門はとりあえず「立派」の一言。それ意外表現のしようがない。そのまま昇降口付近まで進むと、左の方に来校者の方はこちら。なんて電子板に表示されている入り口があるのでそちらへ進む。
「すいません」
「どうもこんにちは。どういったご用件で……おや」
受付の職員に声をかけると挨拶が返ってくる。そのあと定型文が来ると思ったのだが、どうかしたのか?
「これは初めまして。編入生さんですね」
「そうですけど、何故分かったんです?」
なんとなく分かる問いを投げかけてみる。すると一つは予想通り、もう一つは予想外の答えが返ってきた。
「まず、こんな時間に登校しては遅刻ですし、まず事務室には来ません。それとその制服です」
ん?何だって?制服がどうかしたのか。
「その制服はよく見ないと分かりませんが、この学園の制服とは少し違うんです。本当に些細な違いですが、襟の部分の校章、よく見てみて下さい。気づくと思いますよ」
「これ……知ってるんですか?」
「ええ、勿論。あなたの-裏-での名前も存じていますよ」
「……そうですか」
このバッジ。おかしいと思ったがビンゴか。部隊の紋章を入れるとかなに考えてるんだ。まあ大抵の人は気づかないから問題はあまりないか。
「おっと、そうでした。学園長室へご案内しなくては。あのお方を怒らせるとまずい。さあ、此方です」
あのお方?一体誰だろうか。
学園長?
ならそう呼ぶはずだ。今は考えてもも仕方ないか。とにかくついていこう。
トントン。
「編入生をお連れしました」
「よし、入れ」
ん?
「では、どうぞ。私はここで」
そういうと、事務員さんは踵を返して戻っていく。
それより、今の声は。まさか
「早く入ってこい。時間の無駄だ」
やっぱり
「失礼します。何故隊長が此方に?」
「なんだ、いたらおかしいか」
「おかしいです。断言します」
「そんなことより学園長に挨拶しろ。俺のことなんざどうでも良いんだ」
じゃあなんでいるんだ。
この人は俺の「上司」であり、部隊長の「東 錬次」。昨日の会話相手だ。
そして学園長はというと。
「……寝てるこの方ですか?」
「爺さん……寝るんじゃねえよ……」
寝ている老人がいた。
「む……むぅ? おお、黒野君ではないか、久しぶりだの。元気にしとったか?」
「ええ、まあ。というか学園長って源爺だったんですね」
この人は「源 玄三」俺のことを知っていて、識っている人物の一人。また奇妙な縁があるものだ。
「源爺、今日から編入することになりました。黒野冥斗です」
「知っとるよ。今さら挨拶などせんでもええ」
「だ、そうですよ。隊長」
「形式だ。形式。こんなもん」
言っちゃうのか。と、聞きたいことがあったんだ。聞いておこう。
「このバッジ。どういうことですか?部隊の紋章を入れるなんて」
「んなん、何かあったときに顔パスするために決まってんだろ?それに、そんな2×2㎝のちぃせえバッジに気づける奴なんざ関係者くらいだ」
まあ、確かに。ということはあの事務員さんも関係者か。それから
「俺って、クラスとかどうなるんですか?」
そう聞くと、源爺が答える。
「お前はSに入ることになっとるの。良かったのう。お嬢さんたちも居るぞ」
「故意ですか。それよりSとは?」
言い方からしてSクラスとかそんなところか?だがそんなの情報になかったが、どういうことだ?
「Sは対外的には公開しておらん。まあ、調べれば分かる程度だがの。ちなみに概要としては、魔術と魔法、その両方を修め、未来の主力を育成する。と言ったところかの」
「それは、戦線に立つ、と。そういうことですか?」
それでは、あのときの約束と違う。かといってこの二人が違えることはないだろう。なら、何故?
「あの子達が望んだことじゃて。覚悟を決めておった。故に許可した。……不満かの?」
「……少し。でも、彼女達が望んだのなら、俺がどうこう言う資格はない」
「そうだの。それよりじゃ、そろそろ教室へ向かった方がいいじゃろう。坊主、連れていってやれ」
坊主?誰のこと…………あぁ。
「ったく。坊主じゃねぇ、クソ爺め」
って言ってるから坊主って呼ばれるんじゃないか?おっと、睨んできた。割と怖いな。
「ええい、とりあえず冥斗。ついてこい」
はい、と答えて部屋を出たとき、源爺に声をかけられる。
「あの子達を、もう置いていってやらんでくれ。これはこの老いぼれからの頼みじゃ。依頼ではないぞ」
「…………はい。分かりました」
隊長のあとを追って数分後、俺は一つの教室の前にいた。ここは4階で、回りには他の教室はない。どうやら下の階にあるようで、丁度休み時間なのかここまで喧騒が響いてくる。
と、なると何故この教室は静かなんだ?
「おい、こっち来てろ」
「え、ちょ」
状況が把握できない内に、俺は物陰に引きずり込まれる。なにがなんだか分からなかったが、そのあと直ぐに理解した。
向こうの方から何人か此方へ向かって来ている。人数は20人弱か、そして教室へと入っていく。あれはSの生徒達だったか。
そんなことを思いながらその集団を見ていると、後ろの方に見覚えのある、しかし見違えるような三人組がいた。
「……そっか。すっかり大きくなったんだな」
「そりゃそうだ。子供の成長は早い。お前にも言えることだが、三年間ってのは案外長いもんだ」
そうかもしれない。何故なら、三年前でも既に抜きん出ていた容姿にはさらに磨きがかかっており、周りに比べても赤子と大人ほどの違いのある魔力の質から、彼女達の成長を存分に感じられる。
「んじゃ。そろそろいくか。準備はいいな?よし行くぞ」
いや、聞いてくださいよ。出来てますけど。
「摩利、入るぞ」
「え?どうしたのよ錬次さん。また息抜き?」
「いや、今回は仕事だ。つうかパシリだ。爺さんにこいつを連れてけって言われてな」
そう言って俺の方を指差す。すると、その女性は「ああ、そういえば」といって、俺に手招きする。
「ごめんね。皆に紹介する子がいるの忘れちゃってたわ。と言うわけで紹介するわね。いらっしゃい」
俺は教室の中へと足を踏み入れる。そして教室を見渡してみる。当たり前だが、やはり見知った顔は三つしかなかった。そしてその三つの顔はどれも全てキョトンとしている。
(……こういう表情は変わらないな)
それ以外の顔は全て困惑を絵にしたような表情だった。すると摩利と呼ばれた女性が俺に目を向ける。
「この子が今日から編入することになった子よ。あ、それとこのおじさんは気にしなくていいわよ~」
「誰が おじさん だ!誰が!まだ三十路半ばだっつうの!」
「立派なおじさんですよ。あと、ちょっと黙って下さい。彼が自己紹介してませんので。じゃ、どうぞ~」
あ、隊長が引っ張られてく……。
そんなことより、話を振られたんだからしないとか。自己紹介。すっごく久しぶりな気がする。
「えっ……と。紹介して貰いました。黒野です。宜しくお願いします」
と、当たり障りない自己紹介をする。そして、し終わると同時に摩利(さん?)が戻ってくる。
「さあ!編入生くんに質問をしちゃおうタイムの始まりだあ!」
いきなりどうしたんだろう?なんか一気にテンション高くなって戻ってきたな。……ん?今、こっちにウインクした?
(……ああ、そういうことですか)
一応この人も隊長も考えてくれた上での行動か。確かに警戒を解くという面ではこれ以上はないか。
で、質問をしちゃおうタイムとやらか、何からくるのやら。
「では、まず先生から。そもそも名前は何よ?」
あ。忘れてた。
「すいません。冥斗です。いい忘れました」
「冥斗君ね。じゃあ次!」
まだあるのか。
「特技とかその他諸々を教えてちょーだい!ありませんはなしで」
「………………あれ?」
そういえば、何かあったか?殺人術はアウトだろう。それ以外……ないぞ?
「記憶力……とか。よかったでしょ?」
「おや?月奈さん。知ってるんですか?」
ああ、そうだったそうだった。……て。
「もしかして、前から知り合いだったりする?」
「先生、その前に確認させて下さい。もし、私の知ってる人じゃなかったら謝らないといけないので」
「そういうことなら、聞いてみて」
そっか。まあ十中八九当たりだけどな。確かに三年もすれば顔も体格も変わるからな。
「じゃ聞かせて。多分あなたにはもう一つ名字があるはずなの。それを教えて」
「……当たりだよ、月奈。随分と大人になったみたいだね。……宵明だよ。もう一つの名字は」
「やっぱり……。本当に、久しぶりね。兄さん」
「……ああ、久しぶり」
どうやら三人の中では月奈が一番精神的に成長してたみたいだな。あとの二人なんかアワアワしっぱなしだ。もう少し落ち着こうよ……。
「陽奈と、星奈も。久しぶり」
「えっ、ああ、うん……」
「ひ、久しぶり、です」
こりゃ相当だな。ああ、そろそろ先生が突っ込んでくるな。さて、何て説明するか。そのままでいいか。あと、周りの生徒達はしばらく置き去りにさせて貰おう。
「ちょっとそこ!知り合いだけでいい雰囲気作らない!私たちにも説明しなさい!」
「分かりましたから、少し落ち着いて下さい。声が大きいです」
「あ、ごめんね。つい」
「……で、説明ですよね。どこからしますか?」
「そりゃ馴れ初めから今までを全――「駄目ですからね!?」え~月奈さんのケチ~」
「となると説明することなんてないぞ?」
「兄さんもしなくていいから!」
「そっか。まあ、要約すれば、俺と月奈、陽奈、星奈は兄妹ってことです。血は繋がってませんけど」
そこまで言って一度周りを見渡す。やっぱりついてこれてないね。そろそろ混ぜないと。
「じゃあ、この話題に関してはまたいずれ。それ以外にしましょう」
そういえば、先生もちゃんと乗っかってくれる。
「ん~なら、皆からも質問もらおっかな。はい、じゃあ質問ある奴!」
「はい!」
お、やっぱり元気のいい野郎はどこにでもいるんだな。ありがたい限りだが。
「お!今日も元気だね太一っちゃん!いいよ、言っちゃえ!」
許可は先生が出すんだ……。
「センセーそれ止めて!何回もいってんじゃん!でーえっと、黒野だっけか?聞きたいことは、まあ簡単に言うとだな」
そこで太一とやらは一拍置いて、とんでもないことを聞いてきた。
「お前、何でそんなに血の臭いがするんだ?」
「…………どういうことだ?」
「ああ、気のせいならわりぃ。なんかそんな気がしただけだ」
「そうか、俺には分からないから、なんとも言えないが」
「だよな、変なこと聞いたな。悪かった。それともう一つあるんだが、こっちの方が割と重要だ」
さっきのより重要?あれでもかなり肝を冷やしたのに。こいつ、何か持ってるのか?
「ズバリ聞きたい」
なんだ?なにが来る?
「お前にしろ、あの宵明姉妹にしろ、お前ら兄妹はなんでそんなに顔が良いんだ!教えてくれ!」
「……まず、あの三人に関しては俺もお前に同意するよ。俺は普通だろう」
「キサマァ!全フツメンどもに謝れ!なんだ!?嫌味なのか!?そうなのか!?」
とりあえず、落ち着いて欲しい。というか俺はそんなに顔は良くないだろう。あの三人と比べたら尚更だ。
「俺って、そんなにいいのか?」
教室を見渡してみる。男子生徒の幾名かは何故か突っ伏したが、あとは大抵頷いている。これは、新たな事実だな。
と、もうかなり時間が経ってるな。もうすぐ昼時じゃないか?
「な~んてやってたら、皆もうすぐお昼だよ!でも今日はとりあえず教室に残っておくれ!このまま歓迎会といこうじゃないか!」
先生……アクティブ過ぎです。
って、皆その気になっちゃったし。
このクラス、色々とすごいんだな。
これが俺のこのクラスへの第一印象だ。そしてあまり間違っていなかったことをこのあと俺は再確認することになる。
依頼の内容は学園の警備兼監視。必要になれば軍と学園のパイプ役など、それと生徒として学園に通うこと、という項目に二重線。
前二つの方が大事じゃないのか……?
次に見るのは報酬。依頼があり、報酬があってこその仕事だ。その肝心な内容は
まず、授業料などの諸費用の免除。
あの学園は全寮制であるため、寮に入るための金額などもふくまれている。
次に月50万の給料。寮に入るため、生活費諸々(食費を除く)が掛からないことを考えるとフリーに使える金額だ。まあ仕送りで飛ぶためあまり気にはしないが。
それともうひとつ。これは今、自分の目を疑っている項目なのだが。
この学園の学生寮は四人一部屋であり、シェアハウス系の作りになっている。だが、ここからは高級ホテルもビックリの仕組みが揃っている。
まずリビングだが、備え付けの冷蔵庫にその他家具、キッチンなどに加えて、その辺のマンションなど比べるべくもない広さがあり、そこには全部で六つのドアが付いている。四つはそれぞれの個室へ向かうため、あとの二つはそれぞれお手洗いと風呂場だ。お手洗いはそれなりなのだが、風呂場がすごい。湯船の広さや洗い場の使いやすさに加えてジェットバスまで付いている。
ここで驚くにはまだ早すぎると思える情報を加える。これまでに言った通りに考えると寮はかなりの広大さを誇ることが容易に想像できる。しかし、実際はそこまで大きくはないようだ。
これは一体どういうことか。
そう思ってもっと詳しく見たのがついさっき、そして今。
「空間魔法の技術なんて、一つの学園にあって良いものじゃないだろうに」
これだ。これが敷地がそこまで大きくない理由。よく見てみたところ、寮は廊下に各々の部屋に入る入り口があり、
そこからリビングのある部屋へと入れるわけだが、それ意外の部屋へと通じる六つのドアは全て別の空間に繋がるように仕組まれているようで、実際のスペースはリビングの分しかとっていないということだ。この技術は最先端の技術であり、もう一度言うが、一つの学園にあっていいものではない。
これらのことから、依頼、報酬など全てを考慮し、一つの結論を出すとすれば
「……怪しい。とても」
これは何の予備知識もなくあの学園に向かうのはまずいだろう。
まだ編入まで時間があるし、少し調べるか。
そして、編入当日。
これまでに俺が学園について調べられたことについてまとめてみようと思う。勿論学園に向かいながら。
まず、この学園はエリアAS―Bの運営する唯一の域立の高校であること。
ちなみに一昔前にここはアジアの日本という国だったそうだ。
また、魔学を取り扱っている唯一の高等学校でもある。
そもそも魔学とは、その名の通り、
【魔】
というものについての学問であり、それを扱うための術を教えるためのものでもある。詳しいことは分からないが、今から少し前に謎のエネルギーが発見され、それに【魔力】なんて名前をつけたのが由来だそうで、なんとなく分かる通り、摩訶不思議な力を行使できるものなのだが、現在も詳しい仕組みは解明出来ていない。ほとんどの事柄に「らしい」がつくぐらい曖昧なものだ。
ではどうやってそんなことについて教えているのかというと、使える本人達はなんとなく分かるそうで。
これで魔力を使用出来るかどうかも判別するという曖昧さの塊とも言える実情ではあるのだが、今のところそれで上手くまわっているそうだから、なんというか。
で、だが、この学問は大きく三つに分けることが出来、それぞれ
【魔術】 【魔法】 【魔導】
となっている。
【魔術】は主に魔というものの仕組みについてを学び、それを技術として応用すること。平たく言えば魔についての型を学ぶこと。
【魔法】はこの三つの中ではあまり学問とは呼べない学問(?)だ。何故なら仕組み云々ではなく、感覚で魔というものについて理解しようとしている部門であり、その分自由度は高いが扱い辛い。ほとんどが才能に左右される。
【魔導】はかなり学問としての側面が強い。上の二つは実際に魔術や魔法を「使う」ことを目的としているが、これは魔というものを人々の生活や環境に活かそうというものであり、例えば今俺が乗っている「魔導列車」なんかもその成果の一つだったりする。が、それも平和なご時世だからであって、戦時中は兵器の開発に忙しかったようだ。
魔術や魔法は実際に火を起こしたり、水を作り出したりなどをする、要するにファンタジーな部類だが、魔導はエネルギー源を電力などから魔力に置き換える装置を作ったりなどをするSF的な部類になる。
と、まとめているとどうやら目的地に着いたようだ。
冊子には学園長室に寄ることと書かれていたから、学園に着いたら事務室にでも行くことにしよう。
というか、駅が敷地内にあるとかどういうことか。時間帯的に利用者はほとんどいないが、朝は学生で溢れるのだろう。駅のホームとしてはかなり広い方だ。
そして北口から外へ。南口はなく、西口から寮方面へ、東口からは商店街や大型のショッピングモールなどのある地区へ向かえるようだ。
そして北口は言うまでもなく、学園方面。学園の入り口までは真っ直ぐきれいに石のタイルが敷き詰められている。というか、駅から500mほど校門まであるんじゃないだろうか。なんだ、遅刻者でも増やしたいのか。
そんなことを考えて歩いていると直ぐ校門まで来た。案外近いのか?
校門はとりあえず「立派」の一言。それ意外表現のしようがない。そのまま昇降口付近まで進むと、左の方に来校者の方はこちら。なんて電子板に表示されている入り口があるのでそちらへ進む。
「すいません」
「どうもこんにちは。どういったご用件で……おや」
受付の職員に声をかけると挨拶が返ってくる。そのあと定型文が来ると思ったのだが、どうかしたのか?
「これは初めまして。編入生さんですね」
「そうですけど、何故分かったんです?」
なんとなく分かる問いを投げかけてみる。すると一つは予想通り、もう一つは予想外の答えが返ってきた。
「まず、こんな時間に登校しては遅刻ですし、まず事務室には来ません。それとその制服です」
ん?何だって?制服がどうかしたのか。
「その制服はよく見ないと分かりませんが、この学園の制服とは少し違うんです。本当に些細な違いですが、襟の部分の校章、よく見てみて下さい。気づくと思いますよ」
「これ……知ってるんですか?」
「ええ、勿論。あなたの-裏-での名前も存じていますよ」
「……そうですか」
このバッジ。おかしいと思ったがビンゴか。部隊の紋章を入れるとかなに考えてるんだ。まあ大抵の人は気づかないから問題はあまりないか。
「おっと、そうでした。学園長室へご案内しなくては。あのお方を怒らせるとまずい。さあ、此方です」
あのお方?一体誰だろうか。
学園長?
ならそう呼ぶはずだ。今は考えてもも仕方ないか。とにかくついていこう。
トントン。
「編入生をお連れしました」
「よし、入れ」
ん?
「では、どうぞ。私はここで」
そういうと、事務員さんは踵を返して戻っていく。
それより、今の声は。まさか
「早く入ってこい。時間の無駄だ」
やっぱり
「失礼します。何故隊長が此方に?」
「なんだ、いたらおかしいか」
「おかしいです。断言します」
「そんなことより学園長に挨拶しろ。俺のことなんざどうでも良いんだ」
じゃあなんでいるんだ。
この人は俺の「上司」であり、部隊長の「東 錬次」。昨日の会話相手だ。
そして学園長はというと。
「……寝てるこの方ですか?」
「爺さん……寝るんじゃねえよ……」
寝ている老人がいた。
「む……むぅ? おお、黒野君ではないか、久しぶりだの。元気にしとったか?」
「ええ、まあ。というか学園長って源爺だったんですね」
この人は「源 玄三」俺のことを知っていて、識っている人物の一人。また奇妙な縁があるものだ。
「源爺、今日から編入することになりました。黒野冥斗です」
「知っとるよ。今さら挨拶などせんでもええ」
「だ、そうですよ。隊長」
「形式だ。形式。こんなもん」
言っちゃうのか。と、聞きたいことがあったんだ。聞いておこう。
「このバッジ。どういうことですか?部隊の紋章を入れるなんて」
「んなん、何かあったときに顔パスするために決まってんだろ?それに、そんな2×2㎝のちぃせえバッジに気づける奴なんざ関係者くらいだ」
まあ、確かに。ということはあの事務員さんも関係者か。それから
「俺って、クラスとかどうなるんですか?」
そう聞くと、源爺が答える。
「お前はSに入ることになっとるの。良かったのう。お嬢さんたちも居るぞ」
「故意ですか。それよりSとは?」
言い方からしてSクラスとかそんなところか?だがそんなの情報になかったが、どういうことだ?
「Sは対外的には公開しておらん。まあ、調べれば分かる程度だがの。ちなみに概要としては、魔術と魔法、その両方を修め、未来の主力を育成する。と言ったところかの」
「それは、戦線に立つ、と。そういうことですか?」
それでは、あのときの約束と違う。かといってこの二人が違えることはないだろう。なら、何故?
「あの子達が望んだことじゃて。覚悟を決めておった。故に許可した。……不満かの?」
「……少し。でも、彼女達が望んだのなら、俺がどうこう言う資格はない」
「そうだの。それよりじゃ、そろそろ教室へ向かった方がいいじゃろう。坊主、連れていってやれ」
坊主?誰のこと…………あぁ。
「ったく。坊主じゃねぇ、クソ爺め」
って言ってるから坊主って呼ばれるんじゃないか?おっと、睨んできた。割と怖いな。
「ええい、とりあえず冥斗。ついてこい」
はい、と答えて部屋を出たとき、源爺に声をかけられる。
「あの子達を、もう置いていってやらんでくれ。これはこの老いぼれからの頼みじゃ。依頼ではないぞ」
「…………はい。分かりました」
隊長のあとを追って数分後、俺は一つの教室の前にいた。ここは4階で、回りには他の教室はない。どうやら下の階にあるようで、丁度休み時間なのかここまで喧騒が響いてくる。
と、なると何故この教室は静かなんだ?
「おい、こっち来てろ」
「え、ちょ」
状況が把握できない内に、俺は物陰に引きずり込まれる。なにがなんだか分からなかったが、そのあと直ぐに理解した。
向こうの方から何人か此方へ向かって来ている。人数は20人弱か、そして教室へと入っていく。あれはSの生徒達だったか。
そんなことを思いながらその集団を見ていると、後ろの方に見覚えのある、しかし見違えるような三人組がいた。
「……そっか。すっかり大きくなったんだな」
「そりゃそうだ。子供の成長は早い。お前にも言えることだが、三年間ってのは案外長いもんだ」
そうかもしれない。何故なら、三年前でも既に抜きん出ていた容姿にはさらに磨きがかかっており、周りに比べても赤子と大人ほどの違いのある魔力の質から、彼女達の成長を存分に感じられる。
「んじゃ。そろそろいくか。準備はいいな?よし行くぞ」
いや、聞いてくださいよ。出来てますけど。
「摩利、入るぞ」
「え?どうしたのよ錬次さん。また息抜き?」
「いや、今回は仕事だ。つうかパシリだ。爺さんにこいつを連れてけって言われてな」
そう言って俺の方を指差す。すると、その女性は「ああ、そういえば」といって、俺に手招きする。
「ごめんね。皆に紹介する子がいるの忘れちゃってたわ。と言うわけで紹介するわね。いらっしゃい」
俺は教室の中へと足を踏み入れる。そして教室を見渡してみる。当たり前だが、やはり見知った顔は三つしかなかった。そしてその三つの顔はどれも全てキョトンとしている。
(……こういう表情は変わらないな)
それ以外の顔は全て困惑を絵にしたような表情だった。すると摩利と呼ばれた女性が俺に目を向ける。
「この子が今日から編入することになった子よ。あ、それとこのおじさんは気にしなくていいわよ~」
「誰が おじさん だ!誰が!まだ三十路半ばだっつうの!」
「立派なおじさんですよ。あと、ちょっと黙って下さい。彼が自己紹介してませんので。じゃ、どうぞ~」
あ、隊長が引っ張られてく……。
そんなことより、話を振られたんだからしないとか。自己紹介。すっごく久しぶりな気がする。
「えっ……と。紹介して貰いました。黒野です。宜しくお願いします」
と、当たり障りない自己紹介をする。そして、し終わると同時に摩利(さん?)が戻ってくる。
「さあ!編入生くんに質問をしちゃおうタイムの始まりだあ!」
いきなりどうしたんだろう?なんか一気にテンション高くなって戻ってきたな。……ん?今、こっちにウインクした?
(……ああ、そういうことですか)
一応この人も隊長も考えてくれた上での行動か。確かに警戒を解くという面ではこれ以上はないか。
で、質問をしちゃおうタイムとやらか、何からくるのやら。
「では、まず先生から。そもそも名前は何よ?」
あ。忘れてた。
「すいません。冥斗です。いい忘れました」
「冥斗君ね。じゃあ次!」
まだあるのか。
「特技とかその他諸々を教えてちょーだい!ありませんはなしで」
「………………あれ?」
そういえば、何かあったか?殺人術はアウトだろう。それ以外……ないぞ?
「記憶力……とか。よかったでしょ?」
「おや?月奈さん。知ってるんですか?」
ああ、そうだったそうだった。……て。
「もしかして、前から知り合いだったりする?」
「先生、その前に確認させて下さい。もし、私の知ってる人じゃなかったら謝らないといけないので」
「そういうことなら、聞いてみて」
そっか。まあ十中八九当たりだけどな。確かに三年もすれば顔も体格も変わるからな。
「じゃ聞かせて。多分あなたにはもう一つ名字があるはずなの。それを教えて」
「……当たりだよ、月奈。随分と大人になったみたいだね。……宵明だよ。もう一つの名字は」
「やっぱり……。本当に、久しぶりね。兄さん」
「……ああ、久しぶり」
どうやら三人の中では月奈が一番精神的に成長してたみたいだな。あとの二人なんかアワアワしっぱなしだ。もう少し落ち着こうよ……。
「陽奈と、星奈も。久しぶり」
「えっ、ああ、うん……」
「ひ、久しぶり、です」
こりゃ相当だな。ああ、そろそろ先生が突っ込んでくるな。さて、何て説明するか。そのままでいいか。あと、周りの生徒達はしばらく置き去りにさせて貰おう。
「ちょっとそこ!知り合いだけでいい雰囲気作らない!私たちにも説明しなさい!」
「分かりましたから、少し落ち着いて下さい。声が大きいです」
「あ、ごめんね。つい」
「……で、説明ですよね。どこからしますか?」
「そりゃ馴れ初めから今までを全――「駄目ですからね!?」え~月奈さんのケチ~」
「となると説明することなんてないぞ?」
「兄さんもしなくていいから!」
「そっか。まあ、要約すれば、俺と月奈、陽奈、星奈は兄妹ってことです。血は繋がってませんけど」
そこまで言って一度周りを見渡す。やっぱりついてこれてないね。そろそろ混ぜないと。
「じゃあ、この話題に関してはまたいずれ。それ以外にしましょう」
そういえば、先生もちゃんと乗っかってくれる。
「ん~なら、皆からも質問もらおっかな。はい、じゃあ質問ある奴!」
「はい!」
お、やっぱり元気のいい野郎はどこにでもいるんだな。ありがたい限りだが。
「お!今日も元気だね太一っちゃん!いいよ、言っちゃえ!」
許可は先生が出すんだ……。
「センセーそれ止めて!何回もいってんじゃん!でーえっと、黒野だっけか?聞きたいことは、まあ簡単に言うとだな」
そこで太一とやらは一拍置いて、とんでもないことを聞いてきた。
「お前、何でそんなに血の臭いがするんだ?」
「…………どういうことだ?」
「ああ、気のせいならわりぃ。なんかそんな気がしただけだ」
「そうか、俺には分からないから、なんとも言えないが」
「だよな、変なこと聞いたな。悪かった。それともう一つあるんだが、こっちの方が割と重要だ」
さっきのより重要?あれでもかなり肝を冷やしたのに。こいつ、何か持ってるのか?
「ズバリ聞きたい」
なんだ?なにが来る?
「お前にしろ、あの宵明姉妹にしろ、お前ら兄妹はなんでそんなに顔が良いんだ!教えてくれ!」
「……まず、あの三人に関しては俺もお前に同意するよ。俺は普通だろう」
「キサマァ!全フツメンどもに謝れ!なんだ!?嫌味なのか!?そうなのか!?」
とりあえず、落ち着いて欲しい。というか俺はそんなに顔は良くないだろう。あの三人と比べたら尚更だ。
「俺って、そんなにいいのか?」
教室を見渡してみる。男子生徒の幾名かは何故か突っ伏したが、あとは大抵頷いている。これは、新たな事実だな。
と、もうかなり時間が経ってるな。もうすぐ昼時じゃないか?
「な~んてやってたら、皆もうすぐお昼だよ!でも今日はとりあえず教室に残っておくれ!このまま歓迎会といこうじゃないか!」
先生……アクティブ過ぎです。
って、皆その気になっちゃったし。
このクラス、色々とすごいんだな。
これが俺のこのクラスへの第一印象だ。そしてあまり間違っていなかったことをこのあと俺は再確認することになる。
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