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山おくのにぎやかな春

小助くんとワン太くんはいつもいっしょ(その2)

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 小助たちの目の前には、大きな池が向こうのほうまで広がっています。近くには、たくさんの水がながれおちる大きなたきがあります。

「みじゅあそび(水あそび)! みじゅあそび!」
「ねえねえ! ぼくもおよぎたい! およぎたい!」

 ワン太は、池の中へ入ろうとする小助にしがみついたままはなれようとしません。どうやら、小助みたいに自分も池でおよごうとしています。

「いっちょにおよごう! いっちょにおよごう!」

 小助のことばに、ワン太はうれしそうにしっぽをふっています。ワン太をだきかかえながら、小助は池の中へ足を入れました。

 すこし歩くと、小助はワン太をおよがせようとだいていた手をはなしました。しかし、ワン太は犬かきがなかなかできません。

「わわっ! お、おぼれそう……」

 小助は、おぼれかけていたワン太をふたたびだき上げるとすぐに池から上がりました。ワン太は、自分でおよぐことができずにしょんぼりしています。

 これを見たお母さん犬は、ワン太のそばでやさしい声をかけています。

「大じょうぶだよ。れんしゅうすれば上手におよげるから」
「本当におよげるの?」
「お母さんも、さいしょからおよげたわけではないのよ。池の中でうまくおよげるようになったのも、何回もれんしゅうしたおかげだよ」

 犬のお母さんは、ワン太に自分のおよぎを見せようと池の中をすすんでいます。これについていこうと、小助はお母さん犬のいるところまでおよいで行きます。

「小助くん、上手におよげるんだね」
「ねえねえ、こっち見て! こっち見て!」

 小助は、水中から池のふかいところまで一気にもぐっていきます。お母さん犬は、池のそこへ向かった小助のことがちょっとしんぱいになっています。

「あんなところまでもぐって大じょうぶかしら」

 そんなことを犬のお母さんが思っていたその時、小助がふかいところからふたたび池の中をうかび上がってきました。

「かあちゃ! おちゃかな(お魚)いっぱい! おちゃかないっぱい!」
「小助くんはお魚を見るのが大すきかな?」
「うん! だいちゅき(大すき)! だいちゅき!」

 小助は、池のふかいところを大ぼうけんしたことをお母さん犬の前で元気な声を上げています。お母さん犬も、いつも元気な小助のすがたをほほえましそうに見つめています。

「ワン太くんもいっしょにおよげるといいね」

 犬のお母さんは、ワン太がいる池のそばへもどるといっしょにおよぐれんしゅうをはじめました。ワン太は、顔を水の中につけるれんしゅうを小助といっしょにすることです。

「いっちょにちよう(いっしょにしよう)! いっちょにちよう!」

 小助は池の中へ入ってワン太の前で水中にしゃがむようにもぐると、すぐに水しぶきを上げながら出てきました。

「ばあっ!」
「わっ!」

 ワン太は、池の中からいきなりあらわれた小助のすがたを見て思わずびっくりしてしまいました。でも、小助のかわいいえがおにワン太はうれしそうにしっぽをふっています。

「ペロペロペロッ、ペロペロペロペロッ」
「キャッキャッ、くちゅぐったいよ(くすぐったいよ)」

 小助は、自分にとびついてきたワン太に顔をペロペロなめられてもいつも通りのえがおを見せています。

「ふふふ、小助くんもワン太くんもあいかわらず元気にはしゃいでいるね」

 犬のお母さんは、池のそばで楽しくあそんでいる小助とワン太のようすをやさしい目で見つめています。
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