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7. 第一村人と情報
しおりを挟む「そろそろ東京に入るな」
東京に入る手前で大悟はバイクを降りた。
そして、空間魔法の1つ『異収納』を使い、バイクを異空間の中にしまった。
感染者がウジャウジャいる中でバイク音を鳴らすのは危険だろうと判断したからだ。
「オープンMAP。
山手線周辺の図書館で検索っと」
山手線周辺の図書館が数十件MAPに表示される。
(検索機能付きMAPってホント便利ね。)
山手線は都内の中心部をグルグル周っている路線。
1周1時間ほどで周り、都内に住んでる人達には欠かせない路線である。
「結構多いな。
しょうがない、近い場所から漁っていくか。
あ、その前に仮拠点探さないと。」
拠点の事を思い出した大悟は再びMAPを見つめた。
(山手線沿いに仮拠点置きたいけど、さすがに危険かな? いや、危険だとしても東京の中心部に1つは拠点を置いときたいな。)
大悟は、さらにじっくりと舐め回すようにMAPを見た。
(……あ、ここいいんじゃないか?
ここなら安全そうだし、見晴らしも良さそうだ。)
大悟が見つけた場所、そこは新宿駅から10分ほど行ったところにある建物。
そう、東京都庁である。
(たぶん都庁の中には沢山の感染者が彷徨っているんだろうけど、問題ない。
使うのは一部だけだし、逆に感染者をうまく使わせてもらうさ)
大悟は不敵な笑みを浮かべると、目的地に向かって歩き出した。
「げ、こっちにも感染者かよ」
新宿に向かって歩いている大悟はMAPを開き、感染者を避けるように進んでいた。
「くそ、ウジャウジャいるなぁー。
面倒だが、片付けながら進……」
その時だった。
「キャー! 」
突如響き渡り女性の声。
「なんだ?」
大悟はMAPを確認した。
生命反応はない。
MAPは生命や敵対者の居場所を確認することが出来るが、感知の範囲は狭く半径50m内にいる者しか反応しない。
(反応なしか。それなら)
「サーチ」
大悟は索敵魔法を使った。
索敵魔法はMAPのように地図上から見ることは出来ないが、広範囲の生命反応を確認することができる。
「こっちか」
素早く静かに移動する大悟。
すると、感染者に囲まれている女性を発見した。
女性は噛まれる寸前、考えている時間はなかった。
「チッ! 」
大悟は咄嗟に異収納からハンドガンを取り出し、感染者の頭に撃ち込んだ。
バンッ!
感染者の頭は吹っ飛び、その前で倒れ込んでいた女性は呆然としていた。
(よ、よし。
今のうちに逃げよう、面倒くさくなりそうだし)
「ちょ、ちょっと待って」
女性は「はっ」と気づき、コチラに向かって声をかけてきた。
(ぐ、無理か。
はぁー、銃を使ったのバレてるだろうなぁ。)
「な、何か?」
恐る恐る振り向く大悟。
「まずは、助けてくれてありがとう。
それで質問なんだけど、いいかしら?」
彼女は軽く会釈をして、こちらを見つめてきた。
彼女は、死ぬ寸前だったとは思えないほど落ち着いていた。
「ちょ、ちょっと待って、流石にこんなところで話すのは危険なので移動しませんか?」
(さっき銃も撃っちゃったし、感染者が集まってきたら大変だ。)
兎に角、安全の確保。
異世界で学んだ事の1つ。
「そ、そうね。じゃあ私達の隠れ家が近くにあるからそこに行きましょう」
「いえ、話すなら貴方と2人で話したいのですが」
ここは慎重に行動したい。
信用できるか分からない状態で相手の拠点にはいけない。
この女性だけなら、なんとかなるだろうし。
「分かったわ。
それでどうするの?」
女性は即答した。
(即答か。
少しは考え込むかなと思ったけど、判断力があるのか? 何も考えてないのか?
まぁー俺には好都合だがな。)
「じゃあ俺について来てください。」
俺はMAPを開き、索敵魔法を使った。
もちろん、このMAPは他の人には見えない。
(うわ、結構集まって来てるな。
早いとこ移動するか。)
大悟と女性は感染者を掻い潜りながら、安全地帯へと移動した。
(それにしても、やっぱ敬語は疲れるな……。)
数十分後。
感染者に気をつけながら歩き、最適な場所を見つけた。
ここは3階建てのビルの一室。
周りには感染者も人も見当たらない安全な場所。
ドカッ!
「それで、聞きたいこととは?」
置いてあったソファーに座ると同時に大悟は喋り出した。
「貴方はこのへんに住んでいるの?
それと、さっき使ってたのは拳銃?」
女性はソファーに座り、質問をする。
「感染者を倒した武器は……秘密です。」
(まぁー、銃以外あり得ないだろうって思ってるだろうけど、わざわざ教えてやることでも無いし。)
「それと、ここに住んではいませんよ。
目的があって他の場所から来ただけです。」
「その目的って?
聞いてもいいのかしら?」
(まぁー図書館で本を探すだけだし、言っても問題はないけどここは……)
「では、私が幾つか質問しますのでそれに答えてくれたら教えます。」
(情報が欲しいの。)
「質問にもよるけど……。
いいわ、私が知ってる事で良ければ答えるわ。
それで何が聞きたいの?」
「それで構いませんよ。
それじゃーまず聞きたいのは……今の日本の現状ですね。」
「?」
困惑顔の女性。
(そりゃー困惑するわな。
だ・け・ど! )
「実は日本が感染症に襲われた時、私は両親と共に登山をしていたんですよ。
このパンデミックは山小屋のテレビで知って。
その後、私達は逃げるように森の奥へと……。
そして、そこで見つけた使われてない簡素な小屋でずっと暮らしていました。
だから、それからの日本の情報は一切無くて。
あの後どうなったのか? 対策は? 原因は何なのか?」
(はい、嘘八百。
パンデミックの時、異世界で魔王倒してました。)
「発症したのは10年以上前よ。
そんなずっと山奥にいたの?」
女性の声は、驚いたのか少し大きかった。
「正確には17年前ですね。
使われていない小屋、山菜にキノコや水、生きていくだけなら問題はありません。」
「両親は?」
「ちょっと前に揃って病気で……」
大悟は、事故で失った家族を思い出してしまっていた。
「そう……。」
「いえ。それで現状を」
「えぇそうね。
私もそこまで詳しくは分からないけど、今残ってる人達は各地でグループを作って、集団で隠れながら暮らしているらしいわ。
もちろん100人近いグループもあれば、私のように少数で動いてるグループもあるけど。」
「少数なんですか?」
「私達は女性3人で行動しているわ。」
「3人? そんなんでやってけるんですか?」
(こんな世界で女性3人。
よく生きてこれたな。)
「元々私達はこことは別の、もっと安全な場所で暮らしていたの。
でも、食料の問題で移動せざるを得なくなってしまって。
ここに来たのもつい最近よ。」
「なるほど。」
(食料問題か。)
「話を戻すわよ。
今この世界には警察や軍隊なんて物はないわ。
日本中が無法地帯よ。
それどころか軍隊そのものが1つのグループとして自分勝手に行動してるって聞いたことがあるわ。」
(うわぁ、軍に襲われたりしたら一溜りもないな。
俺以外は。)
「なるほどね。
軍隊も人の集まり、こんな世界になって他人に構ってる場合では無いのでしょうね。
……では次の質問をします。
感染者とは一体? 何故感染が広まったのでしょうか?」
(これが1番大事。)
「感染者については私も分からないわ。
広まった理由も分からないけど……あ! そう言えば噂でアホな集団が感染源を持って、世界中に一斉にバラ撒いたって話は昔聞いたことがあるわ。」
「はぁー? 何ですかそれは?」
(この世界にも魔王がいたか?)
「さぁ? 自殺志願者の集団なんじゃない。
まぁーあくまでも噂だから。」
(どんな噂だよ。)
「それはホントに噂であって欲しいですね。
それでは、最後の質問です。
この辺には、どういったグループが?」
「ごめんなさい。
私が分かるのは『ウラン』って言うクソグループだけね。
アイツらとはちょっと因縁があって、それ以外は分からないわ。大きいグループが何個かあるって話は聞いたことがあるけど。」
(まぁー最近ここに来たって行ってたし、そりゃー分からんか。)
「分かりました。
それじゃあ、約束通り私がここに来た目的を話しますね。」
大悟は、ここに来た目的を彼女に話した。
……。
彼女は大悟が話してる間は一言も喋らず、ずっと大悟の目を見つめながら話を聞いていた。
(話しずらい。)
話が終わると彼女は話しかけてきた。
「へぇー、本をね。
どういった本を探してるの?」
「うぅーん。まぁー色々ですね。」
(どういったと言われても困る。
ためになりそうな本を片っ端から持ってこうと思ってるだけだし。)
「そういえば残りの2人は一緒に行動してないんですね。
別行動中ですか?」
(女性3人でも危ないのに、1人って。)
「別行動中と言えば別行動中だけど、あの2人は隠れ家で休んでもらってるの。
移動の疲れでフラついてたから。」
「貴方は疲れてないんですか? 1人行動は危険ですよ。」
「1人行動してる貴方に言われてもね。」
(そりゃーそうだ。)
「休みたいのは山々なんだけど、さっきも言った通り食料がそろそろヤバいのよ。」
(なるほど、動けるウチにと。)
「ちょっといいかしら。」
彼女は突然、真剣な顔をして大悟を見つめる。
「な、なんですか?」
「貴方私達と一緒にこな」
「お断りします。」
掌を相手に向け、食い気味に断る大悟であった。
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