厨二病には荷が重い!

カヲス神

文字の大きさ
1 / 7
プロローグ

人魔大戦

しおりを挟む






ー気づいた時には全てが赤だった。

私、  吉田よしだ 祐奈ゆうなは自分以外の人が全員血塗れになって倒れているという異常な光景を見た後に一つ、溜息を吐いた。

それがこんな悲惨な光景を見ても何も感情が浮かんで来ない己に対してなのか、呆気なく倒れてしまった敵魔族に対してなのかは解らなかった。

ただ、悲しかった。

この世界に勇者として召喚された時には、兎の皮を剥ぐことにすら泣きながら吐いたというのに、今では自分と同じ人という形をした魔族を何万人と倒しても何も感じなかった。

もしも、元の世界地球に戻れたとしても私は異端者扱いをされるに違いない。

そう思えるほど私は容易く命を奪っていっていた。

そう言えば、最後に倒した魔族に『悪魔』と呼ばれたな。

酷い奴だ。

私はみんなから『勇者』と呼ばれて慕われているのに。

『悪魔』だなんて。

寧ろ悪魔はお前らだろうと言いたい。

まぁ、もう言っても返事なんて返してくれないだろうけど。

そんな事を考えながら自分の国に戻る為に歩く。

私が一歩進むごとにグチュリと下の死体から音がする。

これは別に私が出したいから出しているわけではないし、死体を踏みたくて踏んでいるわけでもない。

ただ、目測で分かる範囲全ての地面の上に死体が敷き詰められているのだ。

例え踏むのが嫌でも、立ち尽くしていたら死んでしまう。

だから仕方なく、踏みながら進んでいるのだ。

歩きながら誰にともなく、そんな意味のない言い訳を考えてみる。

きっとこんな事を言ったら、私の国の人たちは寧ろ踏めと唆されるだろうし、魔族の人たちはお前が殺したくせにと罵られるだろうな。

いや、その前に私を殺そうとかかって来るだろう。

そう考えると、魔族の人たちは私に何もということになるな。

少しだけ、辛いかもしれない。

何に対してかは解らないけど。

こういうのを『冷徹』というのかな。

それとも『残虐』?

…どちらにもあっているようで違う気がする。

ならば聞いてみるか。

丁度、国境に建てられている砦が見えて来たし。

砦には、何人もの兵士たちが集まっていた。

皆、笑顔だ。

それちに釣られて私も笑顔になる。

私は、兵士たちに手を振りながら砦の中へと入って行く。

目指すのは自分の部屋だ。

その途中で、少しだけ変な一人の若い兵士に聞いてみた。

私は残虐かどうか。

そしたら、その兵士は真面目な顔で「ええ、とても」と答えたが、その直後慌てて魔族から見たら、と言った。

そうか、私は魔族から見たらとても酷い奴なんだなと思った。

その後、私は思い出したように他の地域でも聞いて見たが、魔族視点で答えてくれたのは彼だけだった。

その彼はこの戦争が終結したときに何か手柄を立てたようで、偉い人の養子になったらしい。

私の大きな部屋で聞いたその話は、ずっと心に残っている。

まさか、彼が私と同い年とは思わなかった。

精々、一つ二つ年下だと思っていた。

彼的には微妙な覚えられ方だとは思うが、私には驚きでしかなかった。

結果、未だに彼のことは覚えている。

名前はもう覚えていないけど。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

処理中です...