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プロローグ
国王
しおりを挟むーガレリアル王国にて
夜も更けてきたころ、ガレリアル国王しか居ない執務室にノックの音が響いた。
それに対して国王はやっと来たかとでも言うかのような表情をしてから、今までずっと手にしていた黒色のペンを置いた。
そうすると、国王が未だに一言も発していないのにノックをした相手は入ってきた。
普通、ノックをした方は国王に名乗ってから入室の許可が出るまで待つはずなのだがと国王はあの出来事からの頭痛の種を見やった。
あの出来事の前までは他の貴族よりも純粋で礼儀正しかったし、国王に対して一種の尊敬もしていた筈だ。
それがなぜこんな悲惨なことになったのか、国王は理解していた。
だが、それしか方法は無いのだ。
よって、彼女がこんな行為をしていても何も言わない。
いや、言えなかった。
だが、そんな奇行ももう終わるだろうと思うと感慨深いものがある。
そんなことを考えているうちにも彼女はこちらへと歩み寄ってくる。
ドスドスといった足音が聞こえてきそうな程に苛立っているらしい。
彼女の実力も合わせて考えてみると、まるで怪獣だ。
怪獣を元の少女に戻すにはどうすればいいのだろうか。
カエルになった王子様は大切な人とキスをしたら元に戻った。
怪獣になった彼女はこの紙で元に戻ってくれるだろうか。
紙を国王は眼前に迫って来ている黒髪の少女に渡す。
少女は一瞬驚いた顔をした後にその手渡した紙をじっくりと読んでいたが、どうやらお気に召さなかったようだ。
すぐに恐ろしい表情となる。
だが、もうこれくらいしか無いのだ。
なんとかこの怪獣を説得しなければならない。
さて、そのミッションはいつ終わるのだろうかと国王は時計を見やった。
まだまだ夜は続く。
せめて睡眠時間が無くなることはありませんように、と国王は信じていないこの国の守護神に祈ったのだった。
…結局、説得は成功したが彼の睡眠時間を取ることは失敗した。
先行きが不安しか感じないスタートに、ガレリアル王国の国王はこの国が荒れないことを今度は世界神に祈った。
無駄なことを知りながら。
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