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第1章・『姫君を狙う者』:ウィーテネ編

#9. 初登場キャラの設定て最初だけ濃いよね2

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 逃げたワイバーンを探しにワイバーンの匂いがすると言うウィーテネの真下へ向かってみると。
 国を覆う様に貼られているシールド『ヴァージナクト』の上で倒れているワイバーンと1人の人間を発見する。

『もしかしてこの子のお迎えですか?いやぁ~助かりました~!今日ウィーテネにヘリでね向かってたんですけどこの、コレ!ワイバーン!ワイバーンですよね!?コレ!!このワイバーンが居て通れなさそうだったんでこの私が身を挺して飛び降りて先に進む様にこう言ったんですよ!「ここはオレに任せて先に行け!!」「で、でも!」「なぁに、日本といや、世界とウィーテネがハッピーに暮らせる為ならオレの命なんてグアッ!!行けっ!進むんだ!!オレの事は構わず!!……はぁ、はぁオレも焼きが回ったな、国の為に命を張る時が来るなんてぇ、な……ガクッ」』
 何やら目の前の人間は通じない言葉で何か伝えようと頑張って寸劇の様な物を披露している。

『無事にヘリはウィーテネの方へ迎えたんですけどこの子に着地した途端にそのまま落下しちゃって気ぃ失っちゃったみたいで~この有様なんですよ!だから足揉んで目ぇ覚まさせ様としてんですけど───』 
 ペラペラと彼は話すのを辞めず、こちらに言葉が通じていない事をまるで知らないみたいに。

「何コイツ!?怖いんですけど!!何さっきから魔法詠唱!?何で足触ってんの?キッショ!!」
「いや、多分身振り手振りで事の成り行きを伝え様としてるんじゃ?」

「新種の魔物なんじゃないの!?何か変な兜被ってるんですけど!顔隠すとかやっぱ魔物でしょ!!」
「でも、この人から魔力は感じ無いけど?そもそも魔物が装備付ける事はまず無いよね?」

「うっせぇな!!魔力隠すのが得意な魔物も鎧やら武器やら使う魔物も普通に居ますけどぉー」
「『まず無い』って言ったんじゃん何でさっきから怒ってんの?怖いよタイプ」

「キレてねぇぇぇしっ!!ワイバーン倒せるだけの奴だから魔力隠せてもおかしくねぇだろって言ってるだけだし」
 彼を蔑ろにしタイプとライフの2人は言い合い始める。
 きっと彼には我々の言葉は通じず怖い思いをさせて居る事だろう。
 ここに居るのがこの騒がしい人で無ければ良かったのだが。

『3人が乗ってるワイバーンはこの子よりも随分大っきいですね!?あれですか?もしかしなくてもワイバーンじゃ無くてドラゴンて呼んでたりします?ドラゴンとワイバーンの違いってなんなんですか?単純に大きさの違いですか?知ってますか?イルカとシャチ、クジラの違いって大きさらしいですよ?4m以上をクジラって言ったり、あっ!でもでもシロイルカは4m以上あったり、8mあるシャチはクジラって呼ばれなかったりワイバーンもそんな感じだったりラジバンダリしますか?ってイルカの背鰭ってクジラのどこに着いてるってんだよね?いや!オレが知らないだけで着いてる可能性あるのか───』

 ……何故だろうか?不安を取り払う為に無害をアピールする為に喋っているならまだ分かる。
 けれど、彼の顔は笑顔に満ち溢れていた。
 まるで自分の知識をひけらかすかの様に純粋な顔である事が、目が隠れていても3人にそう伝わっていた。

「もしかしたら妾達に分からぬだけで此奴には妾達の言葉が通じて居るのかもしれぬ。異世界の国の人々が今日ウィーテネに来ると聞いておる。異世界の魔術で翻訳されているのかもしれぬ。もし妾の言葉が分かるなら身分証を見せてみよ」
「…………」

「「「…………ん~?」」」
「…………」

「見せぬな?」
「ねぇ?」
「てか何で急に黙りこくってんのコイツ!!」

「やはり通じて居ないのか?」
「いや、まだ分かんないかも!単純にこの世界の人間は身分証が無いだけかもしれないし!」
「じゃあアレよ!!アンタの宗教の神様の名前を言いなさいよ!!」

『あの~?その大きなドラゴンでこのワイバーンごと島まで運んでもらえたりなんかしちゃったりなんか島せんせー?ヌルフフフ』
「「「…………」」」

「そもそも、言葉が通じぬのだ質問してもこちらが分からぬ」
「だったら他に何て聞いてみる?好きな人とか聞いちゃう?ねぇ聞いちゃう?」
「得意な魔法聞いて見てよ?アタシ異界の魔法がどんな物か見てみたい!!」

「言葉が通じてるか分からない時点で僕が代わりに伝えても二度手間でしかないでしょ?ねぇ何?人見知りなの?タイプって異界人に人見知り発動しちゃってるの?」
「魔力を感じぬのだから魔法を使えぬ可能性が高いと思うぞ」
「なっ!?何よ!!アンタ達だって間違ってたのにアタシだけ何でそんなん言われなきゃいけないのよ!」

『ウィーテネつれてって』
 男は私達に頭を下げ何かを話した。
 意味は分からないが、3人が同じ考えに至る。

「とりあえず国に連れて帰るわよ」
「そだね。国王様は異国と話し合いをするつもりらしいから、ここで問題を起こす訳にはいかないもんね」
「そうだな。ディーーカッ国王とは関係無いが頭を下げられたからには連れていかねばならぬの」

『そうだぞ、ここで南を島につれていかないと、一生ボヤくからな』
 そう。この男が何を言っているのか分からないけどこの男は頭を下げたのだ。

 頭を下げると言う行為は異世界人にとってこれ以上とない侮辱行為であった。
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