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9 超変身!
第31話
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「お待たせ」
奥から出てきた咲也くんは、すっかりオシャレ男子に変身していた。
下は細身のグレーのパンツ。上は白のカットソーに、チャコールのジャケットを羽織っている。
落ちついた色味でまとめたコーディネートだけど、いつも見てる学ランとのギャップが新鮮だよ。暑いせいか、ジャケットの袖をまくっているのがワイルドで、咲也くんらしいかも。
まじまじと見ていると、咲也くんはニコッとして、
「つぎは、一千花センパイの番だよ」
って言ったんだ。
「え……?」
聞き返すと、芽依さんが笑った。
「変身するのよ」
――――変身。
その言葉に反応して、ぎくりとした。
「制服のままデートってのも味気ないでしょ? あたしの服、貸してあげるよ。奥に何着かあるからさ。おいで。咲也、店番たのんだわよ」
わたしの手を引いて、奥へと進む芽依さん。
変身って、着がえのことかぁ。
びっくりしちゃった。
◆
二十分後、お店に戻ったとき、わたしはワンピースに身をつつんでいた。
花柄プリントの入った、ラベンダー色の上品なワンピなの。
ウエストのシャーリングが大人っぽくて、ドキドキするっ!
「どう? 見事な変身でしょ?」
芽依さんがにんまりして問いかけると、咲也くんは顔を赤らめて、ぽつりとつぶやいた。
「スゲーかわいい……」
わたしはふわりと足元が浮きあがるような心地になって、思わずうつむいた。
裏で着がえたあと、芽依さんはノリノリになって。ヘアアレンジと、簡単なメイクもしてくれたんだ。
普段下ろしている前髪を上げたり、両サイドのヘアをねじって、うしろでまとめたり。うすく口紅もひいてもらった。
なんだか自分じゃないみたいで、ホントに変身した気分!
魔法少女アイカに変身したときも、容姿が変わったけれど、魔法を使わなくたって変身できちゃうんだね。
「どうよ? あたしのスタイリング能力!」
得意げに胸をはって、あらためて、わたしの全身を見つめる芽依さん。
「このワンピ、店の売り物を自分で買いとったのよ。一千花ちゃんに似あうと思ったらドンピシャ!」
「待った甲斐あったなぁ」
ふたりしてほめてくれるから、くすぐったい。
白いハンドバッグもお借りして、そこに財布やスマホを入れた。
靴だけは自分のスニーカーのままだけれど、上品ワンピとスニーカーのMIXコーデだと思えば、そう悪くないかも。
「芽依さん、ありがとうございます。お借りします」
ぺこりと頭を下げるわたし。
「一千花センパイ、そろそろ行こうか。めいめい、ありがとね」
咲也くんにうながされて、店を出る。
「楽しんできなよー!」
送りだしてくれた芽依さんに手をふり、わたしはまた咲也くんと歩きはじめた。
どちらからともなく、ふたたび手をつなぐ。
手をつなぐのが当たり前みたいになってきたけれど、やっぱり照れくさい。
わたしは、ドキドキしながら口をひらいた。
「芽依さん、とっても素敵だね」
「まあ、面倒見がいいタイプだね」
「咲也くん、めいめいって呼んでるの?」
「ああ、そういえば、昔からそう呼んでるなぁ」
実は――お店の裏で着がえたとき、芽依さんとの会話で、咲也くんの話題になったんだ。
「咲也って、昔は気が弱くてさ、いつもオドオドしてたんだよ。友だちも、ぜんぜんできなかったみたいだし……。でも、大きく成長して帰ってきたよ。一千花ちゃんみたいな、かわいいセンパイをデートに誘う、大胆な子になるとは思いもしなかったけどね」
そう言って笑う芽依さんは、なんだかうれしそうだった。
咲也くんはホントに生まれ変わったんだ。
自分の気持ちをストレートに表現できる強さがある。
横にいてもらえると、なんだか安心するから、頼りがいもあるんだと思う。
「一千花センパイはきれいだ。かがやいてるよ」
中庭で再会したとき、そう言ってくれたけど、咲也くんこそ、かがやいてる。
それにひきかえ、自分は……。
なにも変わってない。成長できてない。
奥から出てきた咲也くんは、すっかりオシャレ男子に変身していた。
下は細身のグレーのパンツ。上は白のカットソーに、チャコールのジャケットを羽織っている。
落ちついた色味でまとめたコーディネートだけど、いつも見てる学ランとのギャップが新鮮だよ。暑いせいか、ジャケットの袖をまくっているのがワイルドで、咲也くんらしいかも。
まじまじと見ていると、咲也くんはニコッとして、
「つぎは、一千花センパイの番だよ」
って言ったんだ。
「え……?」
聞き返すと、芽依さんが笑った。
「変身するのよ」
――――変身。
その言葉に反応して、ぎくりとした。
「制服のままデートってのも味気ないでしょ? あたしの服、貸してあげるよ。奥に何着かあるからさ。おいで。咲也、店番たのんだわよ」
わたしの手を引いて、奥へと進む芽依さん。
変身って、着がえのことかぁ。
びっくりしちゃった。
◆
二十分後、お店に戻ったとき、わたしはワンピースに身をつつんでいた。
花柄プリントの入った、ラベンダー色の上品なワンピなの。
ウエストのシャーリングが大人っぽくて、ドキドキするっ!
「どう? 見事な変身でしょ?」
芽依さんがにんまりして問いかけると、咲也くんは顔を赤らめて、ぽつりとつぶやいた。
「スゲーかわいい……」
わたしはふわりと足元が浮きあがるような心地になって、思わずうつむいた。
裏で着がえたあと、芽依さんはノリノリになって。ヘアアレンジと、簡単なメイクもしてくれたんだ。
普段下ろしている前髪を上げたり、両サイドのヘアをねじって、うしろでまとめたり。うすく口紅もひいてもらった。
なんだか自分じゃないみたいで、ホントに変身した気分!
魔法少女アイカに変身したときも、容姿が変わったけれど、魔法を使わなくたって変身できちゃうんだね。
「どうよ? あたしのスタイリング能力!」
得意げに胸をはって、あらためて、わたしの全身を見つめる芽依さん。
「このワンピ、店の売り物を自分で買いとったのよ。一千花ちゃんに似あうと思ったらドンピシャ!」
「待った甲斐あったなぁ」
ふたりしてほめてくれるから、くすぐったい。
白いハンドバッグもお借りして、そこに財布やスマホを入れた。
靴だけは自分のスニーカーのままだけれど、上品ワンピとスニーカーのMIXコーデだと思えば、そう悪くないかも。
「芽依さん、ありがとうございます。お借りします」
ぺこりと頭を下げるわたし。
「一千花センパイ、そろそろ行こうか。めいめい、ありがとね」
咲也くんにうながされて、店を出る。
「楽しんできなよー!」
送りだしてくれた芽依さんに手をふり、わたしはまた咲也くんと歩きはじめた。
どちらからともなく、ふたたび手をつなぐ。
手をつなぐのが当たり前みたいになってきたけれど、やっぱり照れくさい。
わたしは、ドキドキしながら口をひらいた。
「芽依さん、とっても素敵だね」
「まあ、面倒見がいいタイプだね」
「咲也くん、めいめいって呼んでるの?」
「ああ、そういえば、昔からそう呼んでるなぁ」
実は――お店の裏で着がえたとき、芽依さんとの会話で、咲也くんの話題になったんだ。
「咲也って、昔は気が弱くてさ、いつもオドオドしてたんだよ。友だちも、ぜんぜんできなかったみたいだし……。でも、大きく成長して帰ってきたよ。一千花ちゃんみたいな、かわいいセンパイをデートに誘う、大胆な子になるとは思いもしなかったけどね」
そう言って笑う芽依さんは、なんだかうれしそうだった。
咲也くんはホントに生まれ変わったんだ。
自分の気持ちをストレートに表現できる強さがある。
横にいてもらえると、なんだか安心するから、頼りがいもあるんだと思う。
「一千花センパイはきれいだ。かがやいてるよ」
中庭で再会したとき、そう言ってくれたけど、咲也くんこそ、かがやいてる。
それにひきかえ、自分は……。
なにも変わってない。成長できてない。
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