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第4章 白野先輩とふたりっきり!
第23話
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◆ ◆ ◆
そしていま、あの白野先輩を目で追っているわたしがいる。
――と、サッカーボールがコロコロと、わたしたちのほうへ転がってきた。山川さんがすばやく拾い上げる。
「ごめーん」
笑顔で走ってきたのは――白野先輩!
「はい、赤木さん」
ニヤリとして、なぜかわたしにボールを渡す山川さん。
近づいてきた白野先輩に、きゃあきゃあと、みんなが色めき立った。
「ごめん」
パスを要求した白野先輩にボールを投げると、それを華麗にリフティングして、足元におさめた。
「ありがとう」
爽やかにお礼を言って走り出そうとした白野先輩だけど、わたしの顔を見て「あれ?」と、立ち止まった。
「あっ……もしかして……文芸部の……?」
「は、はいっ! 赤木です!」
「ああ、やっぱり。覚えてるよ。まだあそこで部活動してるの?」
「はい!」
「あともうひとりの子は……ええと……」
「水原さんです! 先月、転校しちゃったんですけど……」
「そうなんだ……。それは寂しいね」
すると、遠くのほうから「おーい、白野! なにしてんだよ!」とせっつく声がした。
「おう! いま行くよ!」
そう叫ぶと、白野先輩はわたしにニコッとして、「じゃあね」と踵を返し、ドリブルで離れていった。
その背中を見つめるわたし。
久しぶりに近くで見た白野先輩の笑顔。やはり――悲しみを感じさせるものだった。
「赤木さん、すごいね!」
「えっ?」
我に返ったわたしを、山川さんのグループの子たちが取り囲む。
「白野先輩に覚えてもらってるじゃん!」
「うらやましすぎる!」
「てか、赤木さんって、モテる人? 黒江くんとも仲いいし!」
「ええっ! 黒江くんは友だちだってば!」
「またまた~」
そこへ山川さんが割って入った。
「はーい、そこまで! アンタたち、うらやましがってないで、イケメンと付き合えるよう努力しなさいよ」
そして、わたしの手を引っぱった。
「ちょっとごめん。赤木さんとふたりで話させてね」
みんなから少し離れて、朝礼台まで引っぱってこられた。
「……どうしたの?」
とまどっていると、山川さんはコソッと耳打ちしてきた。
「黒江くんから話はきいてるよ。白野先輩が好きなんでしょ?」
ええええっ!
「な、な、なにを……」
「ああ、大丈夫! 口は堅いし、誰にも言わないから」
いやいや、そういうことではなくてっ! 黒江くんは一体……?
「黒江くんに頼まれたのよ。協力してくれって。上手い具合に白野先輩が近づいてきてくれてよかったわ。あたしのアシストよかったでしょ?」
そして、山川さんは視線を移して手をふった。
「……?」
わたしも視線をそちらへ移すと……体育用具倉庫の陰に黒江くんが!
黒江くんはわたしたちに向かって手をふった。一部始終を見守っていたらしい。
とたんに頭がクラクラしてきた。
黒江くんは本気だ。本気でわたしと白野先輩をくっつけようとしてるよ!
◆ ◆ ◆
五時間目の授業中。
わたしは自分のノートに伝言を書き、黒江くんに回した。
――どうなってるの?
黒江くんは顔色を変えずにササッと返事を書いた。
――作戦決行。山川さんにも協力してもらってる。
それはわかってるってば!
――わたしには無理!
珍しくストレートに意志を伝えてみる。
――ネガティブ禁止! 大丈夫! 俺にまかせて。
わたしの意志は、ちっとも伝わらなかったらしい。
親指を立ててみせる黒江くん。それ、お気に入りのポーズだね。
はぁ。自然とため息が出る。
わたしの隣は、突っ走っちゃう系イケメンでした。
◆ ◆ ◆
放課後。文芸部の部室――。
作戦会議がはじまっていた。参加者は黒江くん、門倉部長。
わたしはというと、いつものように静かに読書している。
「――というわけで、偶然が重なったけれども、接触に成功したわけです」
「まずは第一段階、突破ね。接触しなければ、はじまらないもの」
なにか言ってるけど、スル―。
「ちょっとヒナちゃん! なにしてるの?」
「……部活動です」
「うぐっ。……こっちだって大切な部活動よ。ヒナちゃんの恋を応援しよう大作戦!」
あきらめて、本をぱたんと閉じるわたし。
「赤木さん。相手と言葉を交わせたのは大いなる一歩だよ。情報を集めたけど、白野先輩は、いまは誰とも付き合ってないみたいなんだ。いまがチャンスだよ。これからどんどん攻勢をかけていこう」
「ヒナちゃんのことを覚えてたのよね。脈ありだわ!」
「はあ……」
黒江くんと門倉部長には、白野先輩とはじめて会ったときのこと、昼休みに交わした言葉について説明済みだ。
なにやら盛り上がってるふたりをよそに、わたしのテンションはさほど上がっていない。
わたしの白野先輩に対する気持ちが恋なのかなんなのか、まだハッキリしないんだもん。
そりゃあ、黒江くんに負けず劣らずのイケメンだからドキドキするけど……それよりも笑顔から感じる悲しみが気にかかる。
作戦会議とやらが終わって、ようやく部活動がはじまった。
門倉部長が紙に鉛筆を走らせる音。わたしと黒江くんが本のページをめくる音。
わたしの大好きな時間と空間――。
外が薄暗くなってきて、帰り支度をはじめたころ、戸をノックする音。
入ってきたのは、なんと、遠藤くんだった。
どうして文芸部の部室に!?
そしていま、あの白野先輩を目で追っているわたしがいる。
――と、サッカーボールがコロコロと、わたしたちのほうへ転がってきた。山川さんがすばやく拾い上げる。
「ごめーん」
笑顔で走ってきたのは――白野先輩!
「はい、赤木さん」
ニヤリとして、なぜかわたしにボールを渡す山川さん。
近づいてきた白野先輩に、きゃあきゃあと、みんなが色めき立った。
「ごめん」
パスを要求した白野先輩にボールを投げると、それを華麗にリフティングして、足元におさめた。
「ありがとう」
爽やかにお礼を言って走り出そうとした白野先輩だけど、わたしの顔を見て「あれ?」と、立ち止まった。
「あっ……もしかして……文芸部の……?」
「は、はいっ! 赤木です!」
「ああ、やっぱり。覚えてるよ。まだあそこで部活動してるの?」
「はい!」
「あともうひとりの子は……ええと……」
「水原さんです! 先月、転校しちゃったんですけど……」
「そうなんだ……。それは寂しいね」
すると、遠くのほうから「おーい、白野! なにしてんだよ!」とせっつく声がした。
「おう! いま行くよ!」
そう叫ぶと、白野先輩はわたしにニコッとして、「じゃあね」と踵を返し、ドリブルで離れていった。
その背中を見つめるわたし。
久しぶりに近くで見た白野先輩の笑顔。やはり――悲しみを感じさせるものだった。
「赤木さん、すごいね!」
「えっ?」
我に返ったわたしを、山川さんのグループの子たちが取り囲む。
「白野先輩に覚えてもらってるじゃん!」
「うらやましすぎる!」
「てか、赤木さんって、モテる人? 黒江くんとも仲いいし!」
「ええっ! 黒江くんは友だちだってば!」
「またまた~」
そこへ山川さんが割って入った。
「はーい、そこまで! アンタたち、うらやましがってないで、イケメンと付き合えるよう努力しなさいよ」
そして、わたしの手を引っぱった。
「ちょっとごめん。赤木さんとふたりで話させてね」
みんなから少し離れて、朝礼台まで引っぱってこられた。
「……どうしたの?」
とまどっていると、山川さんはコソッと耳打ちしてきた。
「黒江くんから話はきいてるよ。白野先輩が好きなんでしょ?」
ええええっ!
「な、な、なにを……」
「ああ、大丈夫! 口は堅いし、誰にも言わないから」
いやいや、そういうことではなくてっ! 黒江くんは一体……?
「黒江くんに頼まれたのよ。協力してくれって。上手い具合に白野先輩が近づいてきてくれてよかったわ。あたしのアシストよかったでしょ?」
そして、山川さんは視線を移して手をふった。
「……?」
わたしも視線をそちらへ移すと……体育用具倉庫の陰に黒江くんが!
黒江くんはわたしたちに向かって手をふった。一部始終を見守っていたらしい。
とたんに頭がクラクラしてきた。
黒江くんは本気だ。本気でわたしと白野先輩をくっつけようとしてるよ!
◆ ◆ ◆
五時間目の授業中。
わたしは自分のノートに伝言を書き、黒江くんに回した。
――どうなってるの?
黒江くんは顔色を変えずにササッと返事を書いた。
――作戦決行。山川さんにも協力してもらってる。
それはわかってるってば!
――わたしには無理!
珍しくストレートに意志を伝えてみる。
――ネガティブ禁止! 大丈夫! 俺にまかせて。
わたしの意志は、ちっとも伝わらなかったらしい。
親指を立ててみせる黒江くん。それ、お気に入りのポーズだね。
はぁ。自然とため息が出る。
わたしの隣は、突っ走っちゃう系イケメンでした。
◆ ◆ ◆
放課後。文芸部の部室――。
作戦会議がはじまっていた。参加者は黒江くん、門倉部長。
わたしはというと、いつものように静かに読書している。
「――というわけで、偶然が重なったけれども、接触に成功したわけです」
「まずは第一段階、突破ね。接触しなければ、はじまらないもの」
なにか言ってるけど、スル―。
「ちょっとヒナちゃん! なにしてるの?」
「……部活動です」
「うぐっ。……こっちだって大切な部活動よ。ヒナちゃんの恋を応援しよう大作戦!」
あきらめて、本をぱたんと閉じるわたし。
「赤木さん。相手と言葉を交わせたのは大いなる一歩だよ。情報を集めたけど、白野先輩は、いまは誰とも付き合ってないみたいなんだ。いまがチャンスだよ。これからどんどん攻勢をかけていこう」
「ヒナちゃんのことを覚えてたのよね。脈ありだわ!」
「はあ……」
黒江くんと門倉部長には、白野先輩とはじめて会ったときのこと、昼休みに交わした言葉について説明済みだ。
なにやら盛り上がってるふたりをよそに、わたしのテンションはさほど上がっていない。
わたしの白野先輩に対する気持ちが恋なのかなんなのか、まだハッキリしないんだもん。
そりゃあ、黒江くんに負けず劣らずのイケメンだからドキドキするけど……それよりも笑顔から感じる悲しみが気にかかる。
作戦会議とやらが終わって、ようやく部活動がはじまった。
門倉部長が紙に鉛筆を走らせる音。わたしと黒江くんが本のページをめくる音。
わたしの大好きな時間と空間――。
外が薄暗くなってきて、帰り支度をはじめたころ、戸をノックする音。
入ってきたのは、なんと、遠藤くんだった。
どうして文芸部の部室に!?
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