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第4章 白野先輩とふたりっきり!
第24話
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ドアのところで遠慮がちにしている遠藤くんを、黒江くんが招き入れる。
「どうぞ。入って」
遠藤くんは落ち着かないようで、きょろきょろと視線を泳がせた。
「門倉部長。彼が作戦の協力者です」
ええええええ!
黒江くんってば、遠藤くんまで巻きこんだの!?
「遠藤です」
ぺこりと頭を下げる遠藤くん。門倉部長は腰に手をあて、まるで指揮官のように言った。
「ご苦労さま。あなたが協力者2号ね。協力に感謝するわ」
「2号……? 1号がいるんですか?」
小首をかしげる遠藤くん。
たぶん、山川さんのことだね。
黒江くんが肩をすくめ、口を開いた。
「ああ、こっちの話。それより……持ってきてくれた?」
「もちろん」
遠藤くんはカバンから一冊の本を取りだした。人気サッカー選手のインタビューをまとめたものだ。
「これ、白野先輩に借りてたやつ」
そう言って、遠藤くんはわたしに差しだした。
「え……?」
とまどいながら受け取るわたし。
「俺の代わりに返してくれよ。部活終わったけど、白野先輩、いつも木曜日は居残りで自主練やって帰るんだ。白野先輩がひとりになるときなんて、滅多にないぞ」
ああ、そういうことか!
黒江くんが「ナイス!」と言って、遠藤くんの腕をポン! とたたいた。数日前までいがみ合っていたとは思えない。やっぱり男子はカラッとしたものだね。
「遠藤は白野先輩と同じサッカー部だからね。なにか情報を得られれば……と思って協力を頼んだんだよ。赤木さんへの罪滅ぼしにもなるし……」
遠藤くんは軽くせき払いして、照れ臭そうにした。
そういうことであれば、この情報は無駄にはできない。
「ありがとう。じゃあ、行ってくるね」
行こうとしたら、遠藤くんが口を開いた。
「あっ、本当にいいのか?」
「えっ?」
「白野先輩、やさしい人だけどさ、それだけじゃないっていうか……なんていうか……」
「それだけじゃないって……?」
門倉部長がたずねた。
「いや、なんて言ったらいいか……」
「もうっ! じれったいわね! はっきり言いなさいよ!」
門倉部長にタジタジの遠藤くん。
「いや、イケメンだし、やさしい人だし、人気あるけどさ……実は裏表ありそうっていうか……」
「そんなはずないでしょ! 白野くんにかぎって!」
「はいっ! 俺が間違ってました!」
門倉部長に詰め寄られ、遠藤くんはあっさりと前言撤回した。
でも、わたしは遠藤くんの言っていることがわかる気がしたの。白野先輩は、あの爽やかな笑顔の裏に、なにかを隠しているんだ。そのなにかを確かめたい……。
「じゃあ……行ってきます」
わたしはカバンと、遠藤くんから受け取った本を手に、部室を出た。
「がんばれ、赤木さん」
「本を渡すだけじゃダメよ。会話! 会話を楽しむのよ!」
黒江くんと門倉部長の激励を背中で受け止めた。
◆ ◆ ◆
玄関から外に出ると、もう真っ暗。
部活を終えた生徒たちが校門から出ていくのとは逆に、わたしはひとり校庭に向かった。
心もとない照明に照らされたサッカーゴールのほうへ歩いていくと、ボールを蹴る音が響いている。
無人のゴールに向かって、黙々とシュート練習しているサッカー部員がひとり。
もちろん白野先輩だった。
練習の邪魔をするわけにはいかない。離れたところで待つことにした。
いまさらドキドキしてきて、白野先輩の本を持つ手に力が入る。
しばらくして、ゴールに散らばったボールをすべてあつめると、車輪のついたカゴに入れていく白野先輩。
そして、体育用具倉庫までカゴを押していき、なかに入れて、外に出てきたところで、わたしは思い切って駆けていって……。
「あ……あの……白野先輩!」
「……え?」
「あ……二年の赤木です」
「ああ、赤木さんか。びっくりしたよ。どうしたの?」
「突然すみません。あの……遠藤くんに、この本を白野先輩に返すように頼まれたので……」
本を渡すと、白野先輩はあきれたようにため息を吐いた。
「あいつ、自分で返せばいいのに、そんなことを赤木さんに頼んだの? ごめんね、うちの後輩が……。明日キツく叱っておかないとな」
「いえっ! そんな! いいんです!」
わたしはあわてて両手の平をぶんぶんとふった。
協力してくれたのに、怒られるのはあまりに可哀想だ。
「遠藤くん、用事があるとかで、急いでるみたいだったので……」
アドリブで思わず嘘をついてしまった。
白野先輩はクスッと笑って。
「やさしいんだね、赤木さんは……」
「いえ、やさしいだなんて……」
白野先輩は辺りを見回した。
「もうすっかり暗いね。女の子ひとりじゃ危ない。よかったら家まで送るよ」
「えっ、大丈夫です!」
「後輩が迷惑かけたお詫びだよ。すぐ着がえてくるから、校門のところで待ってて」
言い終わらないうちに、白野先輩は駆け出していた。
◆ ◆ ◆
校門に着くと、人影があった。
――黒江くんだった。
「待っててくれたの?」
一気に気がゆるんで、心の底からホッとした。
「うん。心配だったからね。……で、どうだった?」
「ちゃんと本を返して、少し話せたよ。家まで送ってくれるって」
「えっ、そうなの!?」
「うん。着がえてくるから、先にここで待っててって……」
「そうなんだ。よかったね! これは急展開だ。チャンスだよ!」
暗くて表情がよく見えないけれど、テンションが上がっている様子の黒江くん。
「じゃあ、がんばってね」
歩き出す黒江くんを見て、わたしはあわてた。
「えっ、ちょっと待って! いっしょに帰ってくれるんじゃなかったの!?」
「白野先輩とふたりっきりで帰れるんじゃないか。俺がいたんじゃ意味ないでしょ」
「それは……」
「明日の結果報告を楽しみにしてるよ!」
爽やかに言い残して、黒江くんは帰ってしまった。
ぽつんと取り残され、言いようのない不安に襲われる。
「どうぞ。入って」
遠藤くんは落ち着かないようで、きょろきょろと視線を泳がせた。
「門倉部長。彼が作戦の協力者です」
ええええええ!
黒江くんってば、遠藤くんまで巻きこんだの!?
「遠藤です」
ぺこりと頭を下げる遠藤くん。門倉部長は腰に手をあて、まるで指揮官のように言った。
「ご苦労さま。あなたが協力者2号ね。協力に感謝するわ」
「2号……? 1号がいるんですか?」
小首をかしげる遠藤くん。
たぶん、山川さんのことだね。
黒江くんが肩をすくめ、口を開いた。
「ああ、こっちの話。それより……持ってきてくれた?」
「もちろん」
遠藤くんはカバンから一冊の本を取りだした。人気サッカー選手のインタビューをまとめたものだ。
「これ、白野先輩に借りてたやつ」
そう言って、遠藤くんはわたしに差しだした。
「え……?」
とまどいながら受け取るわたし。
「俺の代わりに返してくれよ。部活終わったけど、白野先輩、いつも木曜日は居残りで自主練やって帰るんだ。白野先輩がひとりになるときなんて、滅多にないぞ」
ああ、そういうことか!
黒江くんが「ナイス!」と言って、遠藤くんの腕をポン! とたたいた。数日前までいがみ合っていたとは思えない。やっぱり男子はカラッとしたものだね。
「遠藤は白野先輩と同じサッカー部だからね。なにか情報を得られれば……と思って協力を頼んだんだよ。赤木さんへの罪滅ぼしにもなるし……」
遠藤くんは軽くせき払いして、照れ臭そうにした。
そういうことであれば、この情報は無駄にはできない。
「ありがとう。じゃあ、行ってくるね」
行こうとしたら、遠藤くんが口を開いた。
「あっ、本当にいいのか?」
「えっ?」
「白野先輩、やさしい人だけどさ、それだけじゃないっていうか……なんていうか……」
「それだけじゃないって……?」
門倉部長がたずねた。
「いや、なんて言ったらいいか……」
「もうっ! じれったいわね! はっきり言いなさいよ!」
門倉部長にタジタジの遠藤くん。
「いや、イケメンだし、やさしい人だし、人気あるけどさ……実は裏表ありそうっていうか……」
「そんなはずないでしょ! 白野くんにかぎって!」
「はいっ! 俺が間違ってました!」
門倉部長に詰め寄られ、遠藤くんはあっさりと前言撤回した。
でも、わたしは遠藤くんの言っていることがわかる気がしたの。白野先輩は、あの爽やかな笑顔の裏に、なにかを隠しているんだ。そのなにかを確かめたい……。
「じゃあ……行ってきます」
わたしはカバンと、遠藤くんから受け取った本を手に、部室を出た。
「がんばれ、赤木さん」
「本を渡すだけじゃダメよ。会話! 会話を楽しむのよ!」
黒江くんと門倉部長の激励を背中で受け止めた。
◆ ◆ ◆
玄関から外に出ると、もう真っ暗。
部活を終えた生徒たちが校門から出ていくのとは逆に、わたしはひとり校庭に向かった。
心もとない照明に照らされたサッカーゴールのほうへ歩いていくと、ボールを蹴る音が響いている。
無人のゴールに向かって、黙々とシュート練習しているサッカー部員がひとり。
もちろん白野先輩だった。
練習の邪魔をするわけにはいかない。離れたところで待つことにした。
いまさらドキドキしてきて、白野先輩の本を持つ手に力が入る。
しばらくして、ゴールに散らばったボールをすべてあつめると、車輪のついたカゴに入れていく白野先輩。
そして、体育用具倉庫までカゴを押していき、なかに入れて、外に出てきたところで、わたしは思い切って駆けていって……。
「あ……あの……白野先輩!」
「……え?」
「あ……二年の赤木です」
「ああ、赤木さんか。びっくりしたよ。どうしたの?」
「突然すみません。あの……遠藤くんに、この本を白野先輩に返すように頼まれたので……」
本を渡すと、白野先輩はあきれたようにため息を吐いた。
「あいつ、自分で返せばいいのに、そんなことを赤木さんに頼んだの? ごめんね、うちの後輩が……。明日キツく叱っておかないとな」
「いえっ! そんな! いいんです!」
わたしはあわてて両手の平をぶんぶんとふった。
協力してくれたのに、怒られるのはあまりに可哀想だ。
「遠藤くん、用事があるとかで、急いでるみたいだったので……」
アドリブで思わず嘘をついてしまった。
白野先輩はクスッと笑って。
「やさしいんだね、赤木さんは……」
「いえ、やさしいだなんて……」
白野先輩は辺りを見回した。
「もうすっかり暗いね。女の子ひとりじゃ危ない。よかったら家まで送るよ」
「えっ、大丈夫です!」
「後輩が迷惑かけたお詫びだよ。すぐ着がえてくるから、校門のところで待ってて」
言い終わらないうちに、白野先輩は駆け出していた。
◆ ◆ ◆
校門に着くと、人影があった。
――黒江くんだった。
「待っててくれたの?」
一気に気がゆるんで、心の底からホッとした。
「うん。心配だったからね。……で、どうだった?」
「ちゃんと本を返して、少し話せたよ。家まで送ってくれるって」
「えっ、そうなの!?」
「うん。着がえてくるから、先にここで待っててって……」
「そうなんだ。よかったね! これは急展開だ。チャンスだよ!」
暗くて表情がよく見えないけれど、テンションが上がっている様子の黒江くん。
「じゃあ、がんばってね」
歩き出す黒江くんを見て、わたしはあわてた。
「えっ、ちょっと待って! いっしょに帰ってくれるんじゃなかったの!?」
「白野先輩とふたりっきりで帰れるんじゃないか。俺がいたんじゃ意味ないでしょ」
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