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第5章 ドキドキ☆交流戦
第30話
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ホッとしていたら、すぐに黒江くんからメッセージ。
――交流戦だけど、白野先輩と距離を縮めるチャンスだよ。
ああ……黒江くんとは友だちという関係なんだ。しかも恋を応援されているという立場で。
ここにきて現実がズシーンと肩にのしかかってきた。
すこし時間をかけて返信メッセージを送信する。
――白野先輩は気になる人だけど、本気で好きかどうかわかんない。
黒江くんが盛り上がっちゃってるから、なかなか面と向かって言えなかったこと。メッセージだと簡単に伝えられるね。
――照れない、照れない。応援するから!
伝わっていなかった……。
ため息をつくわたし。
――ありがと。
わたしのモヤモヤした気分をこめて、汗をかいている笑顔の絵文字を添えた。
でも、そんなわたしの気持ちにはお構いなく、黒江くんは恋のアドバイスを送ってくる。
――門倉部長が話してたけど、恋にはギャップが大切なんだって。
――ギャップ?
――たとえば、交流戦のとき、いつもとは違う髪型にしてみるとか。
――髪型を変えるのは難しいから、髪をおろすのは?
――いいと思うよ。いつもと違うヒナちゃんを見せられたら成功!
不意打ちだった。メッセージの文面に「ヒナちゃん」が入っているのを見て、うれしいやら恥ずかしいやら。
いきなり胸キュンさせるなんてズルいよ、黒江くん!
――そのギャップ作戦のった!
わたしが持ってるぬいぐるみと同じキャラクターの、黒猫のスタンプを添えた。「がんばるニャ!」というボイスつき。
――かわいいね。交流戦は俺も行くから。
――ありがとう。安心!
――もう遅いし、また明日。
――うん。おやすみなさい。
――おやすみ。
メッセージでの会話を終え、わたしはふぅ……と長く息を吐いた。
いつもは、ふたつくくりにしている髪をおろして、学校に行く。そして……。
白野先輩ではなくて、黒江くんの反応が気になっている自分がいた。
わたし……黒江くんのことを……?
◆ ◆ ◆
日曜日になった。ついに二中との交流戦の日。
運動部と関係のない観戦者は制服での参加が原則なので、いつも通りセーラー服を着て家を出た。いつもと違うのは……髪をおろしていること。
待ち合わせ場所の児童公園に先に来ていた黒江くんは、肩より下におりている黒髪ストレートのわたしを見て、少し驚いたような表情を見せた。
「ど……どうかな……?」
なにも絶賛されることを期待したわけじゃないけれど、黒江くんはすぐにクールな表情に戻って。
「うん。いいと思うよ」
それだけ!? って、肩すかしをくらった気分。我ながら図々しいとは思うけど。
黒江くんが提案したギャップ作戦にのったんだもん。もう少しリアクションがあってもいいんじゃない?
学校に行くまでの道すがら、黒江くんは作戦の話ばかりした。「タイミングを見て白野先輩に話しかけなよ」とか、「好きだという気持ちを眼差しや声にこめるといいよ」とかなんとか。
生返事をくり返していたわたしは、なんだか胸のあたりがモヤモヤしてきて、それが顔に出てしまったのか、黒江くんはあわてたように言った。
「どうしたの? 俺、なんか変なこと言った?」
「ううん。そんなことないよ」
そう返したものの、わたしはすっかり機嫌が悪くなっていた。
学校に着くと、思っていたより多くの人がいた。
うちの学校と二中の運動部員はもちろん、応援に来ている両校の生徒、さらに家族もいるから、なかなかの人数があつまっている。
さらに驚いたことに、PTAの人たちが屋台を出していた。焼きそばとか、フランクフルトとか食べ物を売っているし、ヨーヨーすくいとか射的のお店もあって、小さな子どもに大人気だ。
「うわあ……すごい……。お祭りみたい!」
思わずテンションが上がって、声も大きくなった。
「ヒナちゃん、交流戦に来るのはじめて?」
「うん。去年は家で本読んでたもん」
運動部ばっかりズルいよ。大人のサポートもたっぷり受けられて、こんなお祭りみたいなこともやってもらえて。
自分が、決して日の当たることがない文芸部員であることを思い出して、気が滅入ってくる。
そのとき……焼きそばのおいしそうな匂いがわたしの鼻をくすぐった。
「うぅ……お腹すいてきた! 黒江くん、焼きそば食べようよ!」
黒江くんはホッとしたように表情をゆるめた。
「よかった。機嫌なおしてくれたみたいだね」
「べ、べつに怒ってなかったもーん」
「はいはい。おわびに焼きそばおごるからさ」
「えっ、そんなの悪いよ」
「いいって。それくらいさせてよ。俺、買ってくるから、ここで待ってて」
「う、うん……」
わたしにほほ笑んで、屋台の列に並びにいった黒江くん。
やさしいな、黒江くん。……あっ、なにか飲み物もあったほうがいいよね。ペットボトル売ってる屋台もあるし、いまのうちに黒江くんの分と二本買っておこうかな。
そんなことを考えていたら、肩をポン! とたたかれた。
「ヒナ!」
ふり返ると、希世学院の制服に身をつつんだユメちゃんが立っていた。
――交流戦だけど、白野先輩と距離を縮めるチャンスだよ。
ああ……黒江くんとは友だちという関係なんだ。しかも恋を応援されているという立場で。
ここにきて現実がズシーンと肩にのしかかってきた。
すこし時間をかけて返信メッセージを送信する。
――白野先輩は気になる人だけど、本気で好きかどうかわかんない。
黒江くんが盛り上がっちゃってるから、なかなか面と向かって言えなかったこと。メッセージだと簡単に伝えられるね。
――照れない、照れない。応援するから!
伝わっていなかった……。
ため息をつくわたし。
――ありがと。
わたしのモヤモヤした気分をこめて、汗をかいている笑顔の絵文字を添えた。
でも、そんなわたしの気持ちにはお構いなく、黒江くんは恋のアドバイスを送ってくる。
――門倉部長が話してたけど、恋にはギャップが大切なんだって。
――ギャップ?
――たとえば、交流戦のとき、いつもとは違う髪型にしてみるとか。
――髪型を変えるのは難しいから、髪をおろすのは?
――いいと思うよ。いつもと違うヒナちゃんを見せられたら成功!
不意打ちだった。メッセージの文面に「ヒナちゃん」が入っているのを見て、うれしいやら恥ずかしいやら。
いきなり胸キュンさせるなんてズルいよ、黒江くん!
――そのギャップ作戦のった!
わたしが持ってるぬいぐるみと同じキャラクターの、黒猫のスタンプを添えた。「がんばるニャ!」というボイスつき。
――かわいいね。交流戦は俺も行くから。
――ありがとう。安心!
――もう遅いし、また明日。
――うん。おやすみなさい。
――おやすみ。
メッセージでの会話を終え、わたしはふぅ……と長く息を吐いた。
いつもは、ふたつくくりにしている髪をおろして、学校に行く。そして……。
白野先輩ではなくて、黒江くんの反応が気になっている自分がいた。
わたし……黒江くんのことを……?
◆ ◆ ◆
日曜日になった。ついに二中との交流戦の日。
運動部と関係のない観戦者は制服での参加が原則なので、いつも通りセーラー服を着て家を出た。いつもと違うのは……髪をおろしていること。
待ち合わせ場所の児童公園に先に来ていた黒江くんは、肩より下におりている黒髪ストレートのわたしを見て、少し驚いたような表情を見せた。
「ど……どうかな……?」
なにも絶賛されることを期待したわけじゃないけれど、黒江くんはすぐにクールな表情に戻って。
「うん。いいと思うよ」
それだけ!? って、肩すかしをくらった気分。我ながら図々しいとは思うけど。
黒江くんが提案したギャップ作戦にのったんだもん。もう少しリアクションがあってもいいんじゃない?
学校に行くまでの道すがら、黒江くんは作戦の話ばかりした。「タイミングを見て白野先輩に話しかけなよ」とか、「好きだという気持ちを眼差しや声にこめるといいよ」とかなんとか。
生返事をくり返していたわたしは、なんだか胸のあたりがモヤモヤしてきて、それが顔に出てしまったのか、黒江くんはあわてたように言った。
「どうしたの? 俺、なんか変なこと言った?」
「ううん。そんなことないよ」
そう返したものの、わたしはすっかり機嫌が悪くなっていた。
学校に着くと、思っていたより多くの人がいた。
うちの学校と二中の運動部員はもちろん、応援に来ている両校の生徒、さらに家族もいるから、なかなかの人数があつまっている。
さらに驚いたことに、PTAの人たちが屋台を出していた。焼きそばとか、フランクフルトとか食べ物を売っているし、ヨーヨーすくいとか射的のお店もあって、小さな子どもに大人気だ。
「うわあ……すごい……。お祭りみたい!」
思わずテンションが上がって、声も大きくなった。
「ヒナちゃん、交流戦に来るのはじめて?」
「うん。去年は家で本読んでたもん」
運動部ばっかりズルいよ。大人のサポートもたっぷり受けられて、こんなお祭りみたいなこともやってもらえて。
自分が、決して日の当たることがない文芸部員であることを思い出して、気が滅入ってくる。
そのとき……焼きそばのおいしそうな匂いがわたしの鼻をくすぐった。
「うぅ……お腹すいてきた! 黒江くん、焼きそば食べようよ!」
黒江くんはホッとしたように表情をゆるめた。
「よかった。機嫌なおしてくれたみたいだね」
「べ、べつに怒ってなかったもーん」
「はいはい。おわびに焼きそばおごるからさ」
「えっ、そんなの悪いよ」
「いいって。それくらいさせてよ。俺、買ってくるから、ここで待ってて」
「う、うん……」
わたしにほほ笑んで、屋台の列に並びにいった黒江くん。
やさしいな、黒江くん。……あっ、なにか飲み物もあったほうがいいよね。ペットボトル売ってる屋台もあるし、いまのうちに黒江くんの分と二本買っておこうかな。
そんなことを考えていたら、肩をポン! とたたかれた。
「ヒナ!」
ふり返ると、希世学院の制服に身をつつんだユメちゃんが立っていた。
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