カラフルマジック ~恋の呪文は永遠に~

立花鏡河

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第7章 時をこえる魔法少女

第46話

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 光が消えたとき、モアちゃんのポニーテールはほどけて、そのキレイな髪に黄色のメッシュが入り、頭にはピカピカのティアラが付いていた。
 そしてなにより、モアちゃんはフリルの付いた黄色いワンピースに身を包み、手にはロンググローブ、足元はロングブーツという装い。

 かつて、わたしとユメちゃんも身にまとった魔法少女のコスチュームだ。
 そのかわいらしい格好とは裏腹に、敵意のこもった魔力を感じて、全身が金縛りにでもかかったようにこわばった。

「奥さまのご命令により、あなたたちの存在を消します」

 モアちゃんが言い放つと、体育館の床から、ぬっと姿を現すものがあった。
 それは……四つの巨大な十字架!
 そのうち二つの十字架には、ユメちゃんとシラノがはりつけにされていて……。

「ユメちゃん! シラノ!」

 叫んだけど、ふたりともピクリとも動かない。
 まさか……。

「大丈夫。気を失っているだけのようだ」

 わたしの横にいるクロエが言った。

「本当!?」

 すると、モアちゃんが口を開き、冷たい声を出した。

「なにを安心しているの。これからあなたたちの処刑がはじまるのよ」

 そう言うと、モアちゃんは魔法のステッキをわたしに向けた。

「あぶないっ!」

 クロエがわたしの前に立つと、一瞬にして、その身体は十字架へと移動した。そして、ユメちゃんたちと同じように磔にされて。

「クロエ! クロエ!」

 わたしの声に反応することもなく、目を閉じているクロエ。

「バカですねえ。守ったところで結果は変わらないのに。……さあ、最後はあなたです」
「もうこんなことやめてよ! 奥さまの言いなりにならないで!」
「奥さまの命令は絶対です。そんなことも忘れてしまったんですか?」

 魔法のステッキがわたしに向けられて――。
 次の瞬間、わたしは十字架に磔にされていた。隣にはクロエが。

「散々、奥さまに逆らった罰です。意識を保ったまま、この世から消えてもらいましょうか」

 モアちゃんがニヤリとするのが見えた。
 どうしよう!? 本当に存在を消されてしまう! でも、いまのわたしにはモアちゃんに対抗できるような魔力もない。
 ただの、どこにでもいる、普通の中学生なんだ。

 モアちゃんの瞳が妖しく光った。

「わたしは時をつかさどる魔法少女。あなたたちを時と時の狭間はざまに送ります。もう二度と戻ってくることはできません。さあ……最初は赤木姫奈。あなたです」
「――っ!」
「あなたは存在しなかったことになり、家族すらあなたのことは忘れ去ってしまう。ほーら、ご覧なさい。足元から消えていってますよ」
「あっ……」

 本当だった。下を向くと、十字架の根元からわたしの足首まで消えているのがわかった。

「くっ!」

 必死に暴れたけど、わたしを十字架につなぎ止めている鎖が外れるわけもなく……。

「うふふ。ムダですよ。わたしが魔法でとびきり固くした鎖ですから」

 そうこうしてるうちに、胸のあたりまで消えてしまった。
 十字架ごとわたしを消し去る気だ!

 わたしは横のクロエを見た。わたしの好きな男の子がそこにいる。でも、もう手をのばすこともできないんだ。
 さよなら、クロエ。
 魔法を使えないわたしは、このまま消えていくしかないみたい。

 くやしいなあ。たとえわたしは消えても、クロエ、ユメちゃん、シラノの三人は助けたい。
 だって悲しすぎるじゃない! みんな自分を取り戻したばかりなんだから!
 助けたい! 助けたい! 助けたい!

 ――――そのときだった。

 空中に光が現れて、そこから人影が出てきたんだ。
 華麗に着地したのは……モアちゃんと同じ魔法服の、赤いバージョンに身を包んだ女の子。
 肩にかからないくらいのミディアムヘアに、赤いメッシュが入っていて目に鮮やかだ。
 間違いなかった。あれは魔法少女だったころのわたし!

 わたしは、過去のわたしと目が合った。
 まっすぐで、キラキラしている瞳。「あとはわたしに任せてよ」とでも言うように過去のわたしがうなずいたので、わたしは安心してほほ笑んで、うなずいた。

 そして、わたしの視界は真っ暗になった――。


   ◆ ◆ ◆


 光をくぐって飛び降り、着地した。
 最上級魔法の一つ【タイムレスな手】が発動し、わたしはこの時空へとやってきたんだ。

 十字架に磔になっている四人の姿が目に飛びこんできた。そのうちのひとりは首から下が消えている。
 あの女の子は、わたしの未来の姿! わたしは、未来のわたしに助けを求められてやってきたんだ。ただ、未来のわたしは自分が助かることを望んだわけじゃない。
 他の三人を助けてほしいと願っているんだ。そうでなければ、【タイムレスな手】は発動しない。みんなの幸せのために使うのが魔法の本質なんだもの。

 ――大丈夫。わたしが助けるからね。

 そんな想いをこめてうなずくと、通じたらしい。未来のわたしはほほ笑んで、うなずき返した。
 そして、その姿は完全に消えてしまって――。

「お、お前は誰!?」

 目の前にいる黄色い魔法服の女の子が、うろたえたような声を出した。

「わたしは赤木姫奈。火を司る魔法少女……。あなたは?」
「そ、そんな……」

 黄色の魔法少女は目を見開き、口をあんぐりとさせている。
 こっちは名乗ったんだから、あなたも名乗ってほしいんだけど!
 まあ……そんなことはどうでもいいか。

 わたしは、手にしていた魔法のステッキを水平にふった。
 目覚ましの魔法!
 十字架に磔にされていた三人が目を覚ました。
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