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4 ふたりでダンス
第8話
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体育館の一角――。
ここがダンスクラブの練習場所。
三年生から六年生までのダンス好きの女子があつまって、週に三回練習しているんだよ。
涼ちんだけは例外で、ひとりきりの男子部員だけどね。
顧問は塚原先生で、いつも練習を見てくれるんだけど、今日はまだ来ていない。
ストレッチが済んでも塚原先生が来ないので、六年生の結衣ちゃんが指示を出した。
「もう始めちゃおう。『夢幻ZONE』から」
備品のCDデッキで音楽を流す。
大人気のダンスユニット【ブルームスティック】の最新曲『夢幻ZONE』だ。
ミュージックビデオを参考にしつつ、みんなで振り付けやフォーメーションを考えたの。
きっもちいい~!
自分の体の動きがどう見えているのか。
手足の指先にまで神経を配りつつ、みんなとも息を合わせる。
その一方で、ある意味では頭をからっぽにして、音楽に身をまかせてしまう。
この瞬間が、あたしは大好きだ。
しばらくみんなで踊っていると、塚原先生がやってきた。
「おーい、あつまってくれ」
音楽が止まり、みんなが塚原先生のところへ集合する。
塚原先生の横に立っているのは――Tシャツと短パンに着がえた美月!?
涼ちんが興奮したように何度もひじで突いてきて、「青柳さんだよ……」と小声でささやいてる。
あたしも胸の高鳴りを感じながら美月を見つめていると、塚原先生が口を開いた。
「今週、五年二組に転校してきた青柳美月さんだ。このクラブに入部希望らしいので、さっそく連れてきた」
みんながどよめくなか、あたしは涼ちんとハイタッチ!
やった! 涼ちんの情報は正しかった!
美月と、同じクラブの部員同士になれるっ!
あらためて見ると、やっぱり美月はお人形さんのように美しくて、スラリとのびた脚はかなり細かった。
スタイルはいいのだけれど、積極的にスポーツをしたり、ダンスを踊っている姿は想像できない。
だからダンスクラブに入ってくるなんて、正直、意外だよ。
「青柳美月です。前の学校にはダンスクラブはなかったのですが、ダンスは大好きで、独学で踊っていました。よろしくおねがいします」
美月が大人びた話し方で自己紹介を終えると、拍手がひびいた。
校内のうわさになっていた美少女は、みんなに大歓迎で迎えられたみたい。
――と、美月と目が合う。
にっこりとほほ笑みかけてくれたので、あたしもほほ笑み返した。
「――とりあえず、青柳にはどんな感じか見学してもらおうか。さっきの『夢幻ZONE』を最初からやってみてくれ」
「はい!」
あたしたちは、ふたたびポジションについた。
音楽が流れ、踊りはじめる。
その様子を、美月はじっと見つめていた。
……ていうか、あたしだけを目で追ってるんですけど!?
美月の視線に気づいて、気はずかしさを覚えると同時に、うれしくもあった。
ヒップホップ主体の激しいダンスなんだけど、もっと激しく! もっとキレよく!
あたしは気合いが入って、美月に見せつけるように、いつもより動きが派手になっていく。
曲が二番に入ったとき――。
「え……?」
気がつけば、あたしのとなりに美月がいた。
美月……?
とまどうあたしにお構いなく、リズムをとって、踊りはじめる。
「わあっ……」
みんながおどろきの声をあげて動きを止め、踊っているのは、あたしと美月のふたりだけになった。
美月はちょっと見ただけで、振り付けを大体覚えてしまったらしい。
最初は微妙にズレていたけれど、アイコンタクトと呼吸で修正していく。
青味がかってるように見える美月の瞳が、その色をどんどん濃くする。
美月と何度も目を合わせるうちに、あたしの頭の中に流れこんでくるイメージ――。
それは【水】だった。
水の流れと、美月のダンスが重なっていく。
しなやかな動きは、まさに水が流れていくかのように自然で。
体を大きく動かして、キレを意識しているあたしのダンスとは対照的に思えた。
まさに太陽と月。
持ち味がちがうから、合わさったときは最強なんだ!
出会ったばかりなのに、もう何年もいっしょに踊ってきた……みたいな安心感。
ダンスって、こんなに楽しかったんだ……。
ここがダンスクラブの練習場所。
三年生から六年生までのダンス好きの女子があつまって、週に三回練習しているんだよ。
涼ちんだけは例外で、ひとりきりの男子部員だけどね。
顧問は塚原先生で、いつも練習を見てくれるんだけど、今日はまだ来ていない。
ストレッチが済んでも塚原先生が来ないので、六年生の結衣ちゃんが指示を出した。
「もう始めちゃおう。『夢幻ZONE』から」
備品のCDデッキで音楽を流す。
大人気のダンスユニット【ブルームスティック】の最新曲『夢幻ZONE』だ。
ミュージックビデオを参考にしつつ、みんなで振り付けやフォーメーションを考えたの。
きっもちいい~!
自分の体の動きがどう見えているのか。
手足の指先にまで神経を配りつつ、みんなとも息を合わせる。
その一方で、ある意味では頭をからっぽにして、音楽に身をまかせてしまう。
この瞬間が、あたしは大好きだ。
しばらくみんなで踊っていると、塚原先生がやってきた。
「おーい、あつまってくれ」
音楽が止まり、みんなが塚原先生のところへ集合する。
塚原先生の横に立っているのは――Tシャツと短パンに着がえた美月!?
涼ちんが興奮したように何度もひじで突いてきて、「青柳さんだよ……」と小声でささやいてる。
あたしも胸の高鳴りを感じながら美月を見つめていると、塚原先生が口を開いた。
「今週、五年二組に転校してきた青柳美月さんだ。このクラブに入部希望らしいので、さっそく連れてきた」
みんながどよめくなか、あたしは涼ちんとハイタッチ!
やった! 涼ちんの情報は正しかった!
美月と、同じクラブの部員同士になれるっ!
あらためて見ると、やっぱり美月はお人形さんのように美しくて、スラリとのびた脚はかなり細かった。
スタイルはいいのだけれど、積極的にスポーツをしたり、ダンスを踊っている姿は想像できない。
だからダンスクラブに入ってくるなんて、正直、意外だよ。
「青柳美月です。前の学校にはダンスクラブはなかったのですが、ダンスは大好きで、独学で踊っていました。よろしくおねがいします」
美月が大人びた話し方で自己紹介を終えると、拍手がひびいた。
校内のうわさになっていた美少女は、みんなに大歓迎で迎えられたみたい。
――と、美月と目が合う。
にっこりとほほ笑みかけてくれたので、あたしもほほ笑み返した。
「――とりあえず、青柳にはどんな感じか見学してもらおうか。さっきの『夢幻ZONE』を最初からやってみてくれ」
「はい!」
あたしたちは、ふたたびポジションについた。
音楽が流れ、踊りはじめる。
その様子を、美月はじっと見つめていた。
……ていうか、あたしだけを目で追ってるんですけど!?
美月の視線に気づいて、気はずかしさを覚えると同時に、うれしくもあった。
ヒップホップ主体の激しいダンスなんだけど、もっと激しく! もっとキレよく!
あたしは気合いが入って、美月に見せつけるように、いつもより動きが派手になっていく。
曲が二番に入ったとき――。
「え……?」
気がつけば、あたしのとなりに美月がいた。
美月……?
とまどうあたしにお構いなく、リズムをとって、踊りはじめる。
「わあっ……」
みんながおどろきの声をあげて動きを止め、踊っているのは、あたしと美月のふたりだけになった。
美月はちょっと見ただけで、振り付けを大体覚えてしまったらしい。
最初は微妙にズレていたけれど、アイコンタクトと呼吸で修正していく。
青味がかってるように見える美月の瞳が、その色をどんどん濃くする。
美月と何度も目を合わせるうちに、あたしの頭の中に流れこんでくるイメージ――。
それは【水】だった。
水の流れと、美月のダンスが重なっていく。
しなやかな動きは、まさに水が流れていくかのように自然で。
体を大きく動かして、キレを意識しているあたしのダンスとは対照的に思えた。
まさに太陽と月。
持ち味がちがうから、合わさったときは最強なんだ!
出会ったばかりなのに、もう何年もいっしょに踊ってきた……みたいな安心感。
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