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7 美月の魔眼

第16話

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     ◆


 次の日。
 問題の五月二十七日。

 ダークピースがだれにとり憑いているのか、どうしてもわからない。
 わたしには、【洞察】の力が必要だよ。

 ヒナタちゃんは、ダンスクラブに所属しているらしい。
 顧問の塚原先生に頼んで、見学することができた。
 魔眼と魔眼は引かれあい、魔力を高めあうと言われているの。
 ヒナタちゃんと仲よくなれば、早く力に目覚めてくれるはず!

 わたしにダンスを見せようと塚原先生が提案して、部員のみんなが踊り始めた。
 やはりヒナタちゃんに視線がくぎづけになる。
 だれよりもダイナミックな動きで、キレがすごい。
 わたしは運動オンチで、ダンスも苦手だけれど、魔眼の力があれば……。

【水】の魔眼――合流ごうりゅう
 わたしは自然と魔眼を発動させ、気がつけばヒナタちゃんのとなりにいた。
 ヒナタちゃんの動きに合わせて、わたしも踊り始める。

 といっても、そっくりそのまま同じ動きをするわけじゃない。
 水が流れるように、しなやかに……。
 わたしの性格が反映され、ヒナタちゃんとは異なった動き――。
 それでいて、ふたりの息が合わさっていく。
 まるで、枝分かれしていた川が一つに合わさり、大きな流れとなるように……。

「すごいじゃん!」

 踊り終わると、みんながあつまってきたけれど、わたしはヒナタちゃんから目をそらさなかった。
 ヒナタちゃんは、わたしの魔眼に気づいたかもしれない。

「……水が見えたんだ」

 ぼそりとつぶやいた言葉が耳に入り、それは確信へと変わった。

「ヒナタちゃん、目をひらいたんだね……」

 わたしの言葉に絶句するヒナタちゃん。
 どんな言葉を返すのか待っていたのだけれど、興奮したみんなが次々と質問してきて、さえぎられてしまった。

 少し気がそれたあと、ふたたびヒナタちゃんに視線をもどす。
 彼女は男の子と話しこんでいた。
 ヒナタちゃんと同じクラスの緑山涼くん。

「――っ!」

 緑山くんの髪がのびて、かわいらしいツインテールへと変わったんだよ!
 そうだ。緑山涼は男の子じゃない。女の子なんだ!
 魔術によって、性別を変えられていたんだ!
 それも、どす黒い闇を感じる魔術だ。
 そういえば転校初日、ヒナタちゃんのとなりにいたのは女の子だった。
 いつの間にか、わたしもだまされてた!?

「おい! 桃瀬!」

 怒りの声を発したのは、塚原先生だった。

 ヒナタちゃんに近づき、こわい顔でにらみつけて、
「おまえ……どうして緑山が女だってわかったんだ?」
 と、責めるように言った。

 その両目は、まがまがしい紫色の光を発している。
 そうか! ダークピースがとり憑いているのは塚原先生!

「俺の術を見やぶるとは……まさか……魔眼ホルダーかっ!?」

 ヒナタちゃんが【洞察】の魔眼を使って、緑山さんにかけられていた魔術を見やぶったんだ!

【洞察】の魔眼――それは真実を探求する魔力を有している。
 真実をかくしていた闇を晴らして、塚原先生の魔術をあっさり打ち消してしまった。

 当のヒナタちゃんは右目をおさえ、立ちすくんでいる。
 まだ完全に能力に目覚めたわけじゃない。だけど、そのときはもうすぐ!

「ちくしょう! 完全に目がひらく前に! やり直しだ!」

 塚原先生は口をあんぐりと開けて、真っ黒な煙を吐きだした。
【水】の魔眼――水壁すいへき
 わたしはとっさに魔眼を発動させ、水の壁で自分の体をおおった。
 またたく間に、黒い煙が体育館全体へと広がっていく。

 煙が晴れたとき、体育館にいた生徒たちはみんな、倒れていた。
 ヒナタちゃんも倒れている。
 闇の魔術で眠らされてしまったんだ。
 ひとりだけ立っているわたしを、塚原先生が指さす。

「おまえも魔眼ホルダーかっ!」
「そうよ。とうとうシッポを出したわね。『闇の魔女』のカケラよ、あなたを破壊させてもらうわ!」

 水壁を解除して言いはなつと、塚原先生は不気味な笑みを浮かべた。

「ふふん、俺を攻撃するのは結構だが、この男の体を傷つけるつもりか?」
「おあいにくさま。わたしの魔眼をナメないでね」

 あらゆる魔眼の中でも、使える魔術の種類が多いのが【水】なんだ。

「【水】の魔眼! 浄化!」

 あらゆるものを清める浄化の能力を使って、塚原先生の体から、ダークピースを追いだす!

 両手のひらを塚原先生に向け、水流をはなった。

「おっと!」

 いとも簡単に水流をかわす塚原先生。

「くっ!」

 水流を連発したけど、人間ばなれした動きでかわされてしまう。
 なんてすばしっこいの!?
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