無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定

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気弱な冒険者。

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『ミルフィナンド伯爵家所属ゲーゲンヒューバー・フォン・クライスト名誉騎士爵』

 これが名誉騎士爵に叙されたヒューブの肩書きだ。
 これに加えて、

『ルッテンローグ領冒険者支部ギルドBランク冒険者』

 で、ついた二つ名が、

『ルッテンローグの殲滅王』

 だそうだ。
 何ともご大層な二つ名だが、今までヒューブの事を舐めていた奴らはビビりまくっているみたいで、側に寄るだけでビクビクしている。
 叙爵されてから二週間。
 ミラティランド伯爵様にちょこちょことお呼び出しを受けている。
 王都ラスクルまでの護衛を頼みたいとの事なので、護衛騎士達との打ち合わせで何かと忙しい日を過ごしていた。
 収納ストレージスキルを持っているのがヒューブ一人だけだったので、街で食糧や予備の武具、ポーションにその他諸々の必需品を大量に買い込んだ(勿論お代は伯爵様持ちだ)。
 打ち合わせが一通り終わったので、二週間ぶりにギルドに顔を出した。出発が三日後に迫ったので、ギルマスに一言挨拶をしようとしたのだが、

「何だアイツらは?」

 ド派手なショッキングピンクのモヒカン男と、お色気ムンムン(本人はそう思っているのだろう)なケバケバしい衣装の女が他の冒険者と揉めていた。
 よくよく見れば、その冒険者はFランクのニーナだった。
 ニーナは冒険者に成り立てで、そこまで気が強いわけではなく、どちらかと言うと気弱なほうだ。しかし、あの二人よりかは遥かに腕が立つと思うんだが?
 顔馴染みの冒険者に訊ねると、「ヴェランザ男爵の身内らしい」との事だった。
 一週間前に来た奴らだそうだ。
 
(ここに来てまでアノ馬鹿に関わり合いになるとは)

 ヒューブは溜め息をついて近付いた。

「よう。クソ馬鹿野郎のお身内さん。元気かい?」

 二人は途端にブチ切れた。

「ア"ァン?何だクソガキ。テメェ今、俺様達に何て言った!?」
「不敬罪で斬首になりたいのかしら!?」
「不敬罪になるのは、どっちかな?ヴェランザのお身内さん達よ」
「「『な----ッ!?』」」

 そう。
 ヴェランザ男爵はあの後の調査で色々な違法行為が発覚し、領地没収、爵位剥奪、財産没収、元男爵は斬首刑、家族は領外追放の処分が下されたのだ。
 この2人は、その事を隠して横柄に振る舞っていたのだが、突然現れたヒューブがを知っているのに驚いたみたいで口をぱくぱくさせている。

「なあ、元男爵のお身内さん達。アンタらは領外追放になったはずなんだが、何でまだこのルッテンローグ領にいるんだよ?見つかれば斬首刑だぞ?」

 ヒューブはミルティランド伯爵家クライスト名誉騎士爵の家紋(三日月に三ツ星)入りの徽章を見せて言った。

「そ、それは…!?」
「う、嘘でしょ?アンタみたいなガキが、名誉騎士爵?」

 顔面蒼白でガタガタと震え出した二人は、脱兎の如くに逃げ出す…前にヒューブが【マナバインド】で拘束したので逃げる事ができずに、顔から床に倒れ込んでしまった。
 二人は呆気なく御用となり、衛兵に連行されていった。奴隷落ちは免れないだろうな。

「ヒューブ先輩。助けて下さってありがとうございました!」
「どういたしまして。それより、ニーナ。あんな馬鹿ども相手に怯んでどうするよ?明らかにお前の方が腕前は上だろうがよ?あんなのには一発ブン殴っちまえば良かったんだぞ?ここは冒険者ギルドだ。王侯貴族の身内だろうが何だろうが身分なんてものは何の役にも立たないって事は知ってるだろ?」
「それは…はい。分かってます。だけど、怖くて…」

 ニーナな涙目で俯いてしまった。
 これは誰かが背中を押してやらないと駄目みたいだ。とは言え誰がやるのかとなると…自分しかいなかった。

「ニーナ。俺は王都までの護衛依頼を受けてるんだが、お前を連れて行ってやるよ」
「え!?」
「お前は気弱な所はあるが、それなりに腕は立つんだ。俺がその気弱な所を直してやるから一緒に来い」
「い、良いんですか?」
「返事は『はい』か『分かりました』のどっちかだけだ!!」
「は、はい!宜しくお願いします!!」

 ニーナは憧れのヒューブと一緒に(護衛依頼の)旅が出来るので、とても嬉しかった。
 ヒューブはこの事をギルマスに了承してもらわないとなと思いながら執務室に向かった。
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