傭兵村の転生傭兵!!

藤城満定

文字の大きさ
1 / 4

祝福の儀式。

しおりを挟む
 アルシュール王国西部のラグラッシュ辺境伯領西端にあるアンザーラ村では、五歳になった少年少女が必ず受ける『祝福の儀式』が行われている。
 この儀式では何かしらな属性魔法やスキルを授かる儀式だが、全員が全員共魔法やスキルを授かるとは限らず、ここラグラッシュ辺境伯領では二十年間で一人しか授かっていない。これはこの村やラグラッシュ辺境伯領に限った事ではなくて王国全土でも同じ事だった。
 今年の儀式を受けるのは、ルード、マリア、ジェイドの三人だけ。
 村にあるたった一つの小さな教会で司祭様が、

「祭壇の前で跪いて神に祈りなさい」

 と三人を導く。
 ルード、マリア、ジェイドは言われたとおりにする。
 一分が過ぎた。

「三人共、終わりですよ。下がりなさい」

 司祭様のお言葉に、マリアとジェイドが暗い顔をしているのに対してルードは明るい顔をしている。
 それを見た司祭様や村人達は、まさかと思った。

「る、ルーちゃん。も、もしかして…?」
「さ、授かったのかい?」

 ルードの両親が恐る恐る聞くと、ルードは満開の笑顔で頷いた。

「治癒魔法とアイテムボックスのスキルを授かったよ!」

 村中に衝撃が走った。

 『治癒魔法』と『アイテムボックス』のスキルを授かった…二つも授かった!?

 ルードは証拠を示すために教会の長椅子をアイテムボックスに収納してみせた。

 シュンッ!

 おおおっ!?

 そして取り出す。

 シュンッ!

 おおおっ!?

「本当に…治癒魔法は?」
「う~ん。誰か怪我してる人はいる?」

 すると、村長が手を挙げた。

「さっき転んで膝を擦りむいてしまった」

 傷口を見ると、血が滲んでいる。

「うん。これくらいなら今の僕でも治せるよ。【キュア】【ヒール】」

 解毒の【キュア】も傷を癒す【ヒール】も治癒魔法としては初級魔法にあたるので、儀式を受けたばかりのルードでも使えるのでやってみると、村長の膝の傷口に治癒魔法特有の金色の光りが包み込んで見る見る内に傷が治っていく。
 それを見た村人達から響めきがあがった。

「どう?村長。まだ痛む?」
「い、いや、痛くない。傷も治っておる」

 今度は歓声が上がった。
 真っ先にセシル母さんがルードを抱きしめて、次にバルド父さんも抱きしめてきた。

「良くやったわ。さすがは私のルーちゃんね!」
「良かったな。ルード。これで食いっぱぐれる事は無くなったな!」

 そう。
 治癒魔法を使えるだけでも一生食いっぱぐれる事はないのに、それに加えてアイテムボックスのスキルまで使えるとあっては尚更だ。

「ルードや。お前はどうしたい?」
「どうって?」
「いや、だから、村を出て領都にでも行くか?」
「何で?」
「何でって…じゃあ、村に残ってくれるのか!?」
「当たり前でしょ。はこの村で生まれたんだから、この村で一生暮らすつもりだけど…駄目なの?」

 村長以下全員が首が千切れるんじゃないかと心配するくらいに横に振った。

「じゃあ、決まり。俺はこの村が大好きなんだよ?この村に生まれた事を神様に感謝してるんだから。こんなに暮らしやすい村が何処にあるのさ」
「暮らしやすい村、か」

 村長や村人達が笑い出した。

「ルードや。お前は天然者じゃな。この村に生まれるべくして生まれてきたようなものじゃな」

 このアンザーラ村は別名『傭兵村』と呼ばれている。
 そう。
 傭兵村。
 アルシュール王国はここ二十年以上もの長きに渡り、隣国ブリディーラ帝国と戦争中で、今はちょっとした小競り合いが乱発する程度に睨み合っている状態だ。
 特にブリディーラ帝国との国境にあるのがラグラッシュ辺境伯領なので、辺境伯領の領軍が村に近い場所に砦を築いており、地の利を熟知しているアンザーラ村の村人達を傭兵として雇っている。だから『傭兵村』なのだ。

(*この世界には魔法やスキルはあっても攻撃系や支援系は存在していません。存在しているのは治癒魔法とアイテムボックスの二つだけで、戦争の武器はアサルトライフルなどの銃火器類です!!)

 そんな村で生活していく。
 こんなに暮らしやすい村は無い。
 殺伐とした傭兵村が好きな子供。
 村長が言ったとおりに、ルードはこの村に生まれるべくして生まれた天然者なのだろう。
 誰もがそう思った。
 その様子を見ていたルードは、心の中で苦笑いした。

(『この村に生まれるべくして生まれた』か。確かにそのとおりだよ。だって俺がこの村にさせてくれって神様に頼んだんだからな)

 そうなのだ。
 ルードは謂わゆるなのだ。
 前世のルードはやっぱり傭兵で、世界中の戦場を渡り歩き、いつしかそれなりに名前が知れ渡っていたのだが、作戦の不備によって戦死してしまったので、次こそ傭兵としての人生を全うしたいと願った。だから、この村を選んだのだ。
 ルードはお祭り騒ぎの村人達を笑顔で見ながら頭の中はに集中していた。明日の大事な事とは…次回のお楽しみ!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

異世界に流されて…!?

藤城満定
ファンタジー
東京発沖縄着の船で修学旅行に出港した都立東品川高等学校2年4組の生徒35人は出港して2時間が過ぎた頃に突然の嵐に巻き込まれてしまい、船が転覆してしまって海に投げ出されてしまった。男子生徒の宮間景太郎が目を覚ますと、そこはどこかの森の中だった。海に投げ出されたのに、何で森の中にいるんだ?不思議に思って呆然としていたら、森の奥から聞き覚えのある女子生徒達の悲鳴が聞こえてきた。考えるより先に体が動いた。足元にあった折れて先端が尖った木の枝と石コロを取って森の奥へと駆け出した。そこには3人の女子生徒が5匹の身長160cmくらいの緑色の肌色のバケモノに襲われていた。そのバケモノは異世界アニメやコミックでお馴染みのゴブリン?だった。距離は10mはある。短剣を持ったのと木製の棍棒を持ったゴブリンの内、棍棒を持ったのがソレを振り下ろすのを防ぐのは無理な距離。ならばと、拾っておいた石コロを全力投球投。全くの無警戒だった場所からかならの威力で投げられた石コロが頭に命中して、そのまま倒れてしまったので他のゴブリン共も動揺した。その隙に女子生徒達とゴブリン共の間に立ち塞がり、拾った木の枝(棒?)を振り回して距離を置き、斃したゴブリンから棍棒を拾ってそこからはタコ殴りに殴りまくった。棍棒や短剣を弾くと、頭、首、肩、腕、足と、それはもうフルボッコのボッコボコにして斃してから暫くして女子生徒達に「大丈夫か?」と声をかけると、3人ともポカーンと口を開けて呆然としていた。まあ、無理もない。何故なら景太郎はクラスでは寡黙で、いつも1人で行動しているそれは、ぶっちゃけて言うと、完全な『ボッチくん』だったからだ。そんな景太郎が自分達の命を助けてくれた。それも今まで誰も見た事のない熱く必死な戦い方でだ。これは謂わゆる『吊り橋効果』ではあるが、こうまで男らしい姿を見せられては惚れるなというほうが無理だろう。その瞬間から女子達による景太郎の取り合い合戦が始まった。 【毎週火曜日に投稿します】

極限効率の掃除屋 ――レベル15、物理だけで理を解体する――

銀雪 華音
ファンタジー
「レベル15か? ゴミだな」 世界は男を笑い、男は世界を「解体」した。 魔力も才能も持たず、万年レベル15で停滞する掃除屋、トワ。 彼が十年の歳月を費やして辿り着いたのは、魔法という神秘を物理現象へと引きずり下ろす、狂気的なまでの**『極限効率』**だった。 一万回の反復が生み出す、予備動作ゼロの打撃。 構造の隙間を分子レベルで突く、不可視の解体。 彼にとって、レベル100超えの魔物も、神の加護を受けた聖騎士も、ただの「非効率な肉の塊」に過ぎない。 「レベルは恩恵じゃない……。人類を飼い慣らすための『制限(リミッター)』だ」 暴かれる世界の嘘。動き出すシステムの簒奪者。 管理者が定めた数値(レベル)という鎖を、たった一振りのナイフで叩き切る。 これは、最弱の掃除屋が「論理」という名の剣で、世界の理(バグ)を修正する物語。気になる方は読んでみてください。 ※アルファポリスで先行で公開されます。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

もしもゲーム通りになってたら?

クラッベ
恋愛
よくある転生もので悪役令嬢はいい子に、ヒロインが逆ハーレム狙いの悪女だったりしますが もし、転生者がヒロインだけで、悪役令嬢がゲーム通りの悪人だったなら? 全てがゲーム通りに進んだとしたら? 果たしてヒロインは幸せになれるのか ※3/15 思いついたのが出来たので、おまけとして追加しました。 ※9/28 また新しく思いつきましたので掲載します。今後も何か思いつきましたら更新しますが、基本的には「完結」とさせていただいてます。9/29も一話更新する予定です。 ※2/8 「パターンその6・おまけ」を更新しました。 ※4/14「パターンその7・おまけ」を更新しました。

落ちこぼれ公爵令息の真実

三木谷夜宵
ファンタジー
ファレンハート公爵の次男セシルは、婚約者である王女ジェニエットから婚約破棄を言い渡される。その隣には兄であるブレイデンの姿があった。セシルは身に覚えのない容疑で断罪され、魔物が頻繁に現れるという辺境に送られてしまう。辺境の騎士団の下働きとして物資の輸送を担っていたセシルだったが、ある日拠点の一つが魔物に襲われ、多数の怪我人が出てしまう。物資が足らず、騎士たちの応急処置ができない状態に陥り、セシルは祈ることしかできなかった。しかし、そのとき奇跡が起きて──。 設定はわりとガバガバだけど、楽しんでもらえると嬉しいです。 投稿している他の作品との関連はありません。 カクヨムにも公開しています。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...