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波乱と休息
素材の売却
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ノエラもノエラで扉の隙間からアンヘルの姿を見ると、その恐ろしい姿で一気に目が覚めたようだ。
ちなみに、ノエラには永続的にアンヘルの姿が見えるようになっている。【黒き邪餐】は行使者の力量と相手の同意が揃えば永続化も可能みたいだったので思い切ってやってみたら、普通にできたという次第だ。
そんなわけで俺自身ももう一度身なりを整えてから再度部屋を出ると、今度はきちんと準備をしたノエラが扉の前で待っていた。ババアから貰った白い衣服に俺が倒した魔物の素材で作られたブーツ。
華美な服装とは言えないが、ノエラはそれでもそこら辺の女性には負けない可愛らしさと美しさを持っている。ちなみにこの似合ったブーツは精霊魔法の産物だ。
「よし、準備できたみたいだな。まずは下で朝食を食べよう」
「はい」
俺たちは受付の前を通って食事処へと向かった。昨日の話がもう広まっているのか、昨日とは別の給仕さんたちからも目線を感じる。良い意味なのか悪い意味なのかは定かではないが、知れ渡った以上はもうどちらでも良いと割り切ることにして食事を楽しんだ。
朝はさっぱりとしたメニューで、果物と野菜が中心。そのおかげで清々しい気持ちで朝を迎えられた俺たちは、食事を終えた後に宿の外に出て、静かな繁華街へと繰り出した。
宿自体が繁華街の中にあることもあって、目的の店をすぐに見つけることができる。そのお店とは雑貨店。まずは森で狩った魔物の素材を売りさばくために中に入る。
外装は周りの建物と同じく石造りの灰色一色だったが、中は工夫を凝らして様々な素材で作られた物の数々が置いてある。カーペット、壁掛け、家具や小物など日常生活を豊かにしてくれるものはもちろんのこと、羽ペンや羊皮紙、さらには貴重そうな本までも売られている。
中央の大きなカウンターを取り囲むように商品が並べられており、店一杯を使った陳列に驚かされる。それらを眺めていると、ここら辺は人通りが少ないのに、この店は繁盛しているということが自然と分かってくる。
どの商品も上等そうな雰囲気を醸し出しており、庶民の店と言うよりは、貴族や商人、旅の者のための店となっているようだ。俺は店の様子を見て、期待できそうだと密かに思いながらカウンターの店員に声をかける。
「朝早くからお邪魔させてもらうよ。いきなりの提案で申し訳ないが、魔物の素材を買い取ってもらいたい。どうかな?」
「……ええ、喜んで買取させていただきますわ。まずは素材を見せていただけますか?」
俺が声をかけた店員は、青いブローチを胸元に身に着け、緑のドレスを美しく着こなした若い女性。彼女は見慣れない俺のことをしばらく値踏みするように見つめてから俺に答えてくれた。
見つめるとは言うものの、その時間は僅かなもの。だがその時間でなんとなく色々と悟られたような気がしてしまうくらいさり気なくも鋭い視線だった。なんか怖いな。顔には出さないようにするけど。
「良さそうな返事が聞けて良かった。外の荷車に置いてあるから取って来るよ」
「わかりました」
俺はそっと店を出て、店の裏手の陰に身を潜める。鞄か何かがないとこうやっていちいち外に出て【闇の領域】を使うことになってしまうな。
理想を言えば、鞄の中だけに【闇の領域】を発動させて、あたかも最初から物が入っていたかのようにできればいいんだけど、奇跡を使う時にはどうしてもランタンの火が必要になる。あらかじめ人目につかないところで物を鞄に入れておくのが限界だ。
ノエラと協力して素材を手にいっぱいに持ち、種類ごとに分けつつカウンターに持っていく。内訳は魔双樹の木片、アルマスオソの毛皮と角、それからブブヨグランガムの甲殻だ。
ブブヨグランガムは蜂と蟻が合体したような昆虫系の魔物なので、ノエラには持たせないで俺が持った。
代わりにノエラには木片とふさふさの毛皮を持ってもらっている。あとの残りは数回に分けて俺が持っていった。
もう少しだけ素材はあるが、ここで売れるかは微妙なので一旦とっておく。
「これで全部だ。査定には時間がかかると思うし、しばらく他の店を回ってから戻ってこようと思うがそれでいいか?」
「そうですね。大体一時間ほどお時間をいただければと思います」
「わかった。あ、それと別件でそれなりの大きさの鞄を購入させてもらいたいんだが」
「ええ、どうぞ。お好きなものをお持ちください」
そうして俺は旅の荷物を入れるため――ではなく店員の目晦ましのための鞄を購入し、目が爛々としている店員を放っておいて店を後にした。目が怖いよあの人。
ちなみに、ノエラには永続的にアンヘルの姿が見えるようになっている。【黒き邪餐】は行使者の力量と相手の同意が揃えば永続化も可能みたいだったので思い切ってやってみたら、普通にできたという次第だ。
そんなわけで俺自身ももう一度身なりを整えてから再度部屋を出ると、今度はきちんと準備をしたノエラが扉の前で待っていた。ババアから貰った白い衣服に俺が倒した魔物の素材で作られたブーツ。
華美な服装とは言えないが、ノエラはそれでもそこら辺の女性には負けない可愛らしさと美しさを持っている。ちなみにこの似合ったブーツは精霊魔法の産物だ。
「よし、準備できたみたいだな。まずは下で朝食を食べよう」
「はい」
俺たちは受付の前を通って食事処へと向かった。昨日の話がもう広まっているのか、昨日とは別の給仕さんたちからも目線を感じる。良い意味なのか悪い意味なのかは定かではないが、知れ渡った以上はもうどちらでも良いと割り切ることにして食事を楽しんだ。
朝はさっぱりとしたメニューで、果物と野菜が中心。そのおかげで清々しい気持ちで朝を迎えられた俺たちは、食事を終えた後に宿の外に出て、静かな繁華街へと繰り出した。
宿自体が繁華街の中にあることもあって、目的の店をすぐに見つけることができる。そのお店とは雑貨店。まずは森で狩った魔物の素材を売りさばくために中に入る。
外装は周りの建物と同じく石造りの灰色一色だったが、中は工夫を凝らして様々な素材で作られた物の数々が置いてある。カーペット、壁掛け、家具や小物など日常生活を豊かにしてくれるものはもちろんのこと、羽ペンや羊皮紙、さらには貴重そうな本までも売られている。
中央の大きなカウンターを取り囲むように商品が並べられており、店一杯を使った陳列に驚かされる。それらを眺めていると、ここら辺は人通りが少ないのに、この店は繁盛しているということが自然と分かってくる。
どの商品も上等そうな雰囲気を醸し出しており、庶民の店と言うよりは、貴族や商人、旅の者のための店となっているようだ。俺は店の様子を見て、期待できそうだと密かに思いながらカウンターの店員に声をかける。
「朝早くからお邪魔させてもらうよ。いきなりの提案で申し訳ないが、魔物の素材を買い取ってもらいたい。どうかな?」
「……ええ、喜んで買取させていただきますわ。まずは素材を見せていただけますか?」
俺が声をかけた店員は、青いブローチを胸元に身に着け、緑のドレスを美しく着こなした若い女性。彼女は見慣れない俺のことをしばらく値踏みするように見つめてから俺に答えてくれた。
見つめるとは言うものの、その時間は僅かなもの。だがその時間でなんとなく色々と悟られたような気がしてしまうくらいさり気なくも鋭い視線だった。なんか怖いな。顔には出さないようにするけど。
「良さそうな返事が聞けて良かった。外の荷車に置いてあるから取って来るよ」
「わかりました」
俺はそっと店を出て、店の裏手の陰に身を潜める。鞄か何かがないとこうやっていちいち外に出て【闇の領域】を使うことになってしまうな。
理想を言えば、鞄の中だけに【闇の領域】を発動させて、あたかも最初から物が入っていたかのようにできればいいんだけど、奇跡を使う時にはどうしてもランタンの火が必要になる。あらかじめ人目につかないところで物を鞄に入れておくのが限界だ。
ノエラと協力して素材を手にいっぱいに持ち、種類ごとに分けつつカウンターに持っていく。内訳は魔双樹の木片、アルマスオソの毛皮と角、それからブブヨグランガムの甲殻だ。
ブブヨグランガムは蜂と蟻が合体したような昆虫系の魔物なので、ノエラには持たせないで俺が持った。
代わりにノエラには木片とふさふさの毛皮を持ってもらっている。あとの残りは数回に分けて俺が持っていった。
もう少しだけ素材はあるが、ここで売れるかは微妙なので一旦とっておく。
「これで全部だ。査定には時間がかかると思うし、しばらく他の店を回ってから戻ってこようと思うがそれでいいか?」
「そうですね。大体一時間ほどお時間をいただければと思います」
「わかった。あ、それと別件でそれなりの大きさの鞄を購入させてもらいたいんだが」
「ええ、どうぞ。お好きなものをお持ちください」
そうして俺は旅の荷物を入れるため――ではなく店員の目晦ましのための鞄を購入し、目が爛々としている店員を放っておいて店を後にした。目が怖いよあの人。
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