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過去との対峙
約束の場所
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朝起きてから、俺はもう楽しみだった。ノエラと買い物をする予定があるというだけでもう楽しい。朝食を取り、買い物のためにノエラと共に貴族街へと足を運ぶ。まずは昨日集めた水棲系の魔物の素材を依頼主のハックスに渡しに行く。
あの三人組みもハックスから依頼を受けたのかとも思ったが、そういうことではなく、奴らは武具店の店主から依頼を受けたみたいだ。俺とノエラは依頼主関係で面倒なことにならなくてよかったと話をしながら武器屋の前までやって来る。
今日は工房の方から鉄を叩く音が聞こえてきているので、俺たちはハックスに会いに工房へと向かった。何だかんだではじめて入る工房。一応客が入ることも想定してあるのか、入り口から入ってすぐのところは来客用のスペースになっており、その奥の小さい部屋が鍛冶場のようだ。
物凄く覗いてみたい気持ちに駆られたが、職人だけが入れる神聖な場所みたいな認識だった場合穢すのが怖いので、来客用スペースから大きめに声をあげた。そうすると向こうからハックスの答える声が聞こえ、少し待っていると奥からハックスが現れた。
前回と同じように煤の付いたエプロンをして、手には重そうなハンマーを持っている。彼はそれを工房の脇において、こちらにやってきた。俺たちだと分かると、すごく良い笑顔を向けてくる。
「どうだ、依頼の方は上手くいったか?」
「もちろん。頼まれた素材は全部手に入れて来たぞ」
俺は邪光ランタンから【闇の領域】を発動して中から素材を取り出した。イボトヴィグの尻尾、アリマゴの鋏、イガットの牙、最後にヒポンの水袋だ。これらをそれぞれ三個以上持ってきたから不満はないはず。
と思ったのだが、ハックスの顔からは先ほどの笑顔が消えていた。あら? もしかして素材足りなかったか?
「結構頑張ったと思うんだけど、もう少し必要か?」
「い、いや。素材は十分だし採取の仕方も完璧だ」
「じゃあなんでそんな顔をしてるんだ? なんか良くないことでもあるか?」
「いや。お前の奇跡はどんだけすげえんだと思っただけだ」
「え? どういうこと?」
「もしかして自覚がねえのか? これだけの素材をどこからともなく持ってくるなんてイカれてんだぞ?」
「おいおい、そこまで言わなくてもいいだろ。確かに便利だけどさ」
「便利どころの話じゃねえ! お前は全く……剥ぎ取りの腕が一級品だけじゃなくてそんなイカれた奇跡を持ってるとはな」
「イカれてないってのに……まあいいや。ちなみに素材の剥ぎ取りも奇跡でやってるからな」
「は? そんな奇跡あるわけ――いや、そういえばさっきの奇跡もあるわけねえ。邪神の力ってやつか」
「そうだな。どっちも光の奇跡にはないみたいだからな。ところでハックスは奇跡に詳しいのか?」
「俺のダチが神官なもんで、それなりにな」
「へえ。そうなんだ。なんか意外だな」
「どこが意外なんだよ。俺にだってダチの一人や二人くらいいるぞ」
「いや、神官の友達ってのがさ。どうやって知り合ったんだ?」
「神官用のメイスを作ってやったんだよ。そしたらそいつ大喜びしてな。そんなに喜んでもらえるならいくらでも作ってやるって言ったら真に受けやがってよ」
「そんなにメイスばっかりいらないだろ」
「ああ。変なヤツだが良いヤツだぞ」
「そうなんだ。神官でも面白いヤツはいるんだな」
「お前も例外じゃないがな」
「まあ確かに否定はできないな」
他の人から見れば俺って相当変な神官だもんな。黒っぽい紫の光をランタンに灯しながらホーリーライトとか言って闇を放つんだぜ? 我ながら変なんてもんじゃないイカれぶりだ。でも段々気に入ってきてもいるのがなお恐ろしい。
とまあそんな感じでハックスと談笑しながら依頼の報告を終えて、俺たちは武器屋を後にした。それから心置きなく買い物をするために四力統治塔へ行って諸々の手続きをすませ、貢献度と報酬をもらう。
そこからさらに俺たちは雑貨屋、防具屋、服屋などを回って、今までの魔物の素材を売り払ってきた。特に量が多いキリンロボのたてがみはそれぞれの店に分けて売り、もちろんその売り上げはノエラと半分にした。これでノエラも自分の自由にできる金を不足なく持てたので、昼食を取ってから約束していた精霊魔法の道具屋に向かった。
俺たちがあのツリーハウスでした約束、いつか大きな店にいって精霊魔法に使える道具を見てまわる。これがようやく叶えられるのだ。店自体はダロイにあるので、来ようと思えば来られたのだが、ノエラが自分のお金で買いたいと言うものだから来ていなかったのだ。
だがここまでで集めた魔物の素材と請け負った仕事の報酬でお金が手に入ったから、念願のここに来たというわけだ。店の外見は精霊魔法で建てられたことが分かる木造の家。植物のツルが店の左側にだけ巻き付き、一般的な家屋などの建物とは違った形状になっている。
屋根の角が丸みを帯び、精霊たちを受け入れる優しい雰囲気を醸し出しているその店は、男性の精霊使いが一人で切り盛りしている。店主の薄く緑がかった長い髪は毛先の方でカールしていて、穏やかな雰囲気の彼自身をよく表しているように思う。
あの三人組みもハックスから依頼を受けたのかとも思ったが、そういうことではなく、奴らは武具店の店主から依頼を受けたみたいだ。俺とノエラは依頼主関係で面倒なことにならなくてよかったと話をしながら武器屋の前までやって来る。
今日は工房の方から鉄を叩く音が聞こえてきているので、俺たちはハックスに会いに工房へと向かった。何だかんだではじめて入る工房。一応客が入ることも想定してあるのか、入り口から入ってすぐのところは来客用のスペースになっており、その奥の小さい部屋が鍛冶場のようだ。
物凄く覗いてみたい気持ちに駆られたが、職人だけが入れる神聖な場所みたいな認識だった場合穢すのが怖いので、来客用スペースから大きめに声をあげた。そうすると向こうからハックスの答える声が聞こえ、少し待っていると奥からハックスが現れた。
前回と同じように煤の付いたエプロンをして、手には重そうなハンマーを持っている。彼はそれを工房の脇において、こちらにやってきた。俺たちだと分かると、すごく良い笑顔を向けてくる。
「どうだ、依頼の方は上手くいったか?」
「もちろん。頼まれた素材は全部手に入れて来たぞ」
俺は邪光ランタンから【闇の領域】を発動して中から素材を取り出した。イボトヴィグの尻尾、アリマゴの鋏、イガットの牙、最後にヒポンの水袋だ。これらをそれぞれ三個以上持ってきたから不満はないはず。
と思ったのだが、ハックスの顔からは先ほどの笑顔が消えていた。あら? もしかして素材足りなかったか?
「結構頑張ったと思うんだけど、もう少し必要か?」
「い、いや。素材は十分だし採取の仕方も完璧だ」
「じゃあなんでそんな顔をしてるんだ? なんか良くないことでもあるか?」
「いや。お前の奇跡はどんだけすげえんだと思っただけだ」
「え? どういうこと?」
「もしかして自覚がねえのか? これだけの素材をどこからともなく持ってくるなんてイカれてんだぞ?」
「おいおい、そこまで言わなくてもいいだろ。確かに便利だけどさ」
「便利どころの話じゃねえ! お前は全く……剥ぎ取りの腕が一級品だけじゃなくてそんなイカれた奇跡を持ってるとはな」
「イカれてないってのに……まあいいや。ちなみに素材の剥ぎ取りも奇跡でやってるからな」
「は? そんな奇跡あるわけ――いや、そういえばさっきの奇跡もあるわけねえ。邪神の力ってやつか」
「そうだな。どっちも光の奇跡にはないみたいだからな。ところでハックスは奇跡に詳しいのか?」
「俺のダチが神官なもんで、それなりにな」
「へえ。そうなんだ。なんか意外だな」
「どこが意外なんだよ。俺にだってダチの一人や二人くらいいるぞ」
「いや、神官の友達ってのがさ。どうやって知り合ったんだ?」
「神官用のメイスを作ってやったんだよ。そしたらそいつ大喜びしてな。そんなに喜んでもらえるならいくらでも作ってやるって言ったら真に受けやがってよ」
「そんなにメイスばっかりいらないだろ」
「ああ。変なヤツだが良いヤツだぞ」
「そうなんだ。神官でも面白いヤツはいるんだな」
「お前も例外じゃないがな」
「まあ確かに否定はできないな」
他の人から見れば俺って相当変な神官だもんな。黒っぽい紫の光をランタンに灯しながらホーリーライトとか言って闇を放つんだぜ? 我ながら変なんてもんじゃないイカれぶりだ。でも段々気に入ってきてもいるのがなお恐ろしい。
とまあそんな感じでハックスと談笑しながら依頼の報告を終えて、俺たちは武器屋を後にした。それから心置きなく買い物をするために四力統治塔へ行って諸々の手続きをすませ、貢献度と報酬をもらう。
そこからさらに俺たちは雑貨屋、防具屋、服屋などを回って、今までの魔物の素材を売り払ってきた。特に量が多いキリンロボのたてがみはそれぞれの店に分けて売り、もちろんその売り上げはノエラと半分にした。これでノエラも自分の自由にできる金を不足なく持てたので、昼食を取ってから約束していた精霊魔法の道具屋に向かった。
俺たちがあのツリーハウスでした約束、いつか大きな店にいって精霊魔法に使える道具を見てまわる。これがようやく叶えられるのだ。店自体はダロイにあるので、来ようと思えば来られたのだが、ノエラが自分のお金で買いたいと言うものだから来ていなかったのだ。
だがここまでで集めた魔物の素材と請け負った仕事の報酬でお金が手に入ったから、念願のここに来たというわけだ。店の外見は精霊魔法で建てられたことが分かる木造の家。植物のツルが店の左側にだけ巻き付き、一般的な家屋などの建物とは違った形状になっている。
屋根の角が丸みを帯び、精霊たちを受け入れる優しい雰囲気を醸し出しているその店は、男性の精霊使いが一人で切り盛りしている。店主の薄く緑がかった長い髪は毛先の方でカールしていて、穏やかな雰囲気の彼自身をよく表しているように思う。
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