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降りかかる火の粉
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ドラゴンを倒したは良いが、被害は甚大。甚大にしたのは俺でもあるが、ドラゴンにやられた怪我人は治療しないといけない。俺は一緒にクレーターの底にいた四人組に治療を提案する。ところが彼らは難色を示してきた。
「気持ちはありがてえけど……その……」
「本当に……治療だけで済むのだろうか。お前の……その神力で体が壊れては困るのだが」
「そ、そうよ。あたしの奇跡とクルトの精霊魔法で治療した方が……良くないかしら?」
こんな感じで渋る彼らに、アメリアだけは賛成してくれる。
「なんだい、治療してくれると言うのだから素直に好意は受け取るべきだろう? それにイネッサもクルトもその痛みがある状態で集中できるのかい?」
「グッ……」
「それは……」
無理なのだろう。軽傷ならともかく、火傷で肌が痛々しい状態で集中などできやしないだろう。会話するのも平然とやっているように見えて辛そうなのは明らかだからな。ということで無理やり俺は治療を開始する。
さっきの一撃で神力はかなり使ったが、それでも彼らを治療する分くらいは優に残っている。こればっかりは俺の体質に感謝だな。
【暗黒の濃霧】
邪光ランタンから溢れた闇に包まれながらも、彼らの体はみるみるうちに回復した。さっきのドラゴンとの戦いで力を温存できたノエラも細かいところの治療に一役買ってくれて、彼らはしっかりと完治した。
不安がっていたアメリア以外の三人も、穏やかそうなノエラが手伝ったことで安心したようだ。全く、ここに俺という神官様がいるというのに安心できないのかね。まあ客観的に見れば俺だって邪神の神官に治療してもらうなんて御免だけどな!
「助かった。お前のおかげで俺たちは死なずに済んだぜ」
「そこについては感謝しよう。このクレーターについてはどうにかした方が良いと思うが」
「あんた、ただ者じゃないわね。あたしの奇跡じゃこんなことはできない。いくら邪神に仕えていると言ったって桁外れの神力よ。最強格のドラゴンを奇跡の一撃で葬るだなんて今でも信じられない」
「そうだね。さすがのボクも意味が分からないよ」
素直に感謝されるだけじゃないのが辛いところだが良しとしよう。クレーターこそできちゃったが、街は守れたのだ。
「彼のおかげで街は守られたし、統治塔に報告をしねえといけねえな。さっさと済ませようぜ」
「ええ!? めんどいな。ボクはもう眠いよ」
「駄々をこねるな。行くぞ」
「はいはい」
アメリアとその一行は転移魔術でまたしても消えてしまった。報告とやらは彼らがやってくれるみたいだし俺はいいかなとも一瞬思ったが、ドラゴンを倒したのは俺だし、顔を出した方がいいかもと思い直し、俺とノエラも四力統治塔に向かうことにした。
またしても普通に徒歩で街に入る。転移魔術が羨ましい。街の中では騒いでいる人はいないこともないが、脅威が去ったことをみんな理解したのか、家に戻って行くひとが大半のようだった。屋根の上から四人組と俺たちが外に出たのは多くの人が見ていただろうし、その後ドラゴンが来なくなったから大丈夫だと判断したのだろう。
実際に結界でドラゴンの攻撃が弾かれたのも見ていたというのもありそうだな。そんな人たちに混じって、俺たちは街の中央の通路を通って四力統治塔に向かった。完全な深夜の時間帯だが、緊急事態のため中には人がいた。
慌ただしさは残っているが、アメリアたちが先に話をつけたのか、慌てっぱなしではなく何となく忙しさの余波があるという程度だ。受付で用件を告げると、俺たちは副長室ではなく、今度は四力長室に通された。案内の人と共に部屋に入ると、副長室よりもさらに豪華な、明るめの内装の部屋で四人組と茶色の服を着た老人がいた。彼がこの四力統治塔の最高責任者らしい。
アメリアたちは長椅子に座って話をしていたが、俺たちが入って来ると老人は立ち上がって俺たちを迎えてくれた。ここでも先に報告をしていたアメリアたちのおかげでスムーズに話が進んだ。
「あなたがこの者たち報告にあった神官様ですね。私は四力長のルーベルト・ガルムステッドと申します。此度は場を収めてくださって、四力統治塔全体を代表して感謝申し上げます。精霊使いの方も治療に尽力くださったとか。どうもありがとうございました」
「街に被害がなくて良かったよ」
「はい。皆さんが無事で安心しました」
「ところで一つ聞いていいかな」
「何でございましょう」
「いやさ、ドラゴンって退治されたんじゃなかったけ」
「それは間違いないよ。でもボクたちが退治したのは緑色のドラゴンだったからアイツじゃないよ」
そう答えるのはアメリア。今回で活躍したのをいいことに、足をだらんと伸ばしてテーブルの角にかかとを乗っけている。
「そうなのか。じゃあ今回の赤いドラゴンはどこから来たんだろうな」
「それは現時点ではわかりません。しかししっかりと調査致しましょう。ドラゴンがこの地域に現れている原因を調べる必要がありますからな」
「そうか。そのあたりは後日ってことでいいかな。こんな時間だしみんな眠いだろ?」
「そうね。あたしも早く寝たいわ」
黄色の司祭衣のイネッサも同意してくれたので、その場はお開きになった。だが……。
「クレーターのことについても明日話しましょう」
そう言われて思わず顔が引きつってしまった俺だった。
「気持ちはありがてえけど……その……」
「本当に……治療だけで済むのだろうか。お前の……その神力で体が壊れては困るのだが」
「そ、そうよ。あたしの奇跡とクルトの精霊魔法で治療した方が……良くないかしら?」
こんな感じで渋る彼らに、アメリアだけは賛成してくれる。
「なんだい、治療してくれると言うのだから素直に好意は受け取るべきだろう? それにイネッサもクルトもその痛みがある状態で集中できるのかい?」
「グッ……」
「それは……」
無理なのだろう。軽傷ならともかく、火傷で肌が痛々しい状態で集中などできやしないだろう。会話するのも平然とやっているように見えて辛そうなのは明らかだからな。ということで無理やり俺は治療を開始する。
さっきの一撃で神力はかなり使ったが、それでも彼らを治療する分くらいは優に残っている。こればっかりは俺の体質に感謝だな。
【暗黒の濃霧】
邪光ランタンから溢れた闇に包まれながらも、彼らの体はみるみるうちに回復した。さっきのドラゴンとの戦いで力を温存できたノエラも細かいところの治療に一役買ってくれて、彼らはしっかりと完治した。
不安がっていたアメリア以外の三人も、穏やかそうなノエラが手伝ったことで安心したようだ。全く、ここに俺という神官様がいるというのに安心できないのかね。まあ客観的に見れば俺だって邪神の神官に治療してもらうなんて御免だけどな!
「助かった。お前のおかげで俺たちは死なずに済んだぜ」
「そこについては感謝しよう。このクレーターについてはどうにかした方が良いと思うが」
「あんた、ただ者じゃないわね。あたしの奇跡じゃこんなことはできない。いくら邪神に仕えていると言ったって桁外れの神力よ。最強格のドラゴンを奇跡の一撃で葬るだなんて今でも信じられない」
「そうだね。さすがのボクも意味が分からないよ」
素直に感謝されるだけじゃないのが辛いところだが良しとしよう。クレーターこそできちゃったが、街は守れたのだ。
「彼のおかげで街は守られたし、統治塔に報告をしねえといけねえな。さっさと済ませようぜ」
「ええ!? めんどいな。ボクはもう眠いよ」
「駄々をこねるな。行くぞ」
「はいはい」
アメリアとその一行は転移魔術でまたしても消えてしまった。報告とやらは彼らがやってくれるみたいだし俺はいいかなとも一瞬思ったが、ドラゴンを倒したのは俺だし、顔を出した方がいいかもと思い直し、俺とノエラも四力統治塔に向かうことにした。
またしても普通に徒歩で街に入る。転移魔術が羨ましい。街の中では騒いでいる人はいないこともないが、脅威が去ったことをみんな理解したのか、家に戻って行くひとが大半のようだった。屋根の上から四人組と俺たちが外に出たのは多くの人が見ていただろうし、その後ドラゴンが来なくなったから大丈夫だと判断したのだろう。
実際に結界でドラゴンの攻撃が弾かれたのも見ていたというのもありそうだな。そんな人たちに混じって、俺たちは街の中央の通路を通って四力統治塔に向かった。完全な深夜の時間帯だが、緊急事態のため中には人がいた。
慌ただしさは残っているが、アメリアたちが先に話をつけたのか、慌てっぱなしではなく何となく忙しさの余波があるという程度だ。受付で用件を告げると、俺たちは副長室ではなく、今度は四力長室に通された。案内の人と共に部屋に入ると、副長室よりもさらに豪華な、明るめの内装の部屋で四人組と茶色の服を着た老人がいた。彼がこの四力統治塔の最高責任者らしい。
アメリアたちは長椅子に座って話をしていたが、俺たちが入って来ると老人は立ち上がって俺たちを迎えてくれた。ここでも先に報告をしていたアメリアたちのおかげでスムーズに話が進んだ。
「あなたがこの者たち報告にあった神官様ですね。私は四力長のルーベルト・ガルムステッドと申します。此度は場を収めてくださって、四力統治塔全体を代表して感謝申し上げます。精霊使いの方も治療に尽力くださったとか。どうもありがとうございました」
「街に被害がなくて良かったよ」
「はい。皆さんが無事で安心しました」
「ところで一つ聞いていいかな」
「何でございましょう」
「いやさ、ドラゴンって退治されたんじゃなかったけ」
「それは間違いないよ。でもボクたちが退治したのは緑色のドラゴンだったからアイツじゃないよ」
そう答えるのはアメリア。今回で活躍したのをいいことに、足をだらんと伸ばしてテーブルの角にかかとを乗っけている。
「そうなのか。じゃあ今回の赤いドラゴンはどこから来たんだろうな」
「それは現時点ではわかりません。しかししっかりと調査致しましょう。ドラゴンがこの地域に現れている原因を調べる必要がありますからな」
「そうか。そのあたりは後日ってことでいいかな。こんな時間だしみんな眠いだろ?」
「そうね。あたしも早く寝たいわ」
黄色の司祭衣のイネッサも同意してくれたので、その場はお開きになった。だが……。
「クレーターのことについても明日話しましょう」
そう言われて思わず顔が引きつってしまった俺だった。
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