邪神に仕える大司教、善行を繰り返す

逸れの二時

文字の大きさ
87 / 117
降りかかる火の粉

会談

しおりを挟む
 宿に戻って死んだように眠り翌日。朝を大分過ぎてから起きて、四力統治塔へ再度向かう。その途中でクレーターが民衆の話題に上っていたが、どうやらドラゴンの仕業ということで落ち着いているみたいだ。ははは。そうだよな。ドラゴンの仕業に決まってるよな。

 そんな自分自身への誤魔化しをしながら、もう一度四力長室へと足を運んだ。昨日と同じように四人組の面々とルーベルトがいる。四人組はもちろん服装をしっかりと整えてきていた。

「おう。来たな。待ってたぞ」

 斧を持った男改めゴドウィンが長椅子に座ったまま言ってきた。彼らの表情から、そんなに悪くない話をするようだ。

「まずは皆さんに昨夜の件のお礼しなければなりますまい。皆さんにそれぞれパタス金貨三十枚と貢献度を百、サム様には功績を考慮してさらにパタス金貨二十枚と貢献度五十を追加で進呈致します。皆さま、街の危機を救ってくださって、改めて感謝致します」

「ありがてえな。俺たちは結局ドラゴンに負けかけたんだがいいのか?」

「あのような恐ろしい魔物から街を守ろうとしてくださったのですから当然ですよ。それから街の前にできてしまったクレーターの件ですが……」

「それについては私がなんとかしよう」

 言いずらそうに切り出したルーベルトに合わせてそう言ってくれたのは、精霊使いのクルトだった。ずっと青いローブのフードを被っていてどんな表情をしているのか読めないのだが、素晴らしい申し出をしてくれる。そこにさらにノエラが援護してくれた。

「あ、あの! 私も協力させてもらえませんか?」

「むしろ私からも頼むとしよう。あれだけの大穴を修繕するには並の霊力では厳しいからな」

「あー……そういうことなら俺も協力させてくれないかな。穴を塞げる奇跡はないけど、力を譲渡する奇跡で助けになれるかもしれない。なんたって穴を開けちゃった張本人だしさ」

「ほう……それは頼もしいな」

 微妙にどう思っているのか分からない返答が来たが、後始末をしてくれようとしているのだから何も言えない。

「それではクレーターについてはお任せいたします。最後にセレーヌ様が調査してくださったことですが、以前ブルカン火山に現れたドラゴンには最初は敵意はなかったのだとか」

「そんなことあるか? 俺たちが着いたときには誰かれ構わず襲ってやがったぜ?」

 ゴドウィンはそう抗議するが、ルーベルトはさらに説明を続ける。

「敗走してきた怪我人のうちの数人がそう証言していたそうです。それでも自分に戦いを挑むなら容赦はしないと伝えてきたとのことでして……」

「おや、ドラゴンと意思疎通ができたのかい。興味深いね」

 アメリアは知的好奇心を刺激されたように頷きだす。

「しかしその方たちは名声欲しさにドラゴンに挑んでしまって、それによってドラゴンが敵対して事が大きくなったというのが真相だとのことでした」

 ほほう。それで怪我人たちはギリギリの力加減で無力化されて敗走させられたのか。

「まさかそんなことになっていたとはな。あのときのドラゴンには悪いことをしたか」

「そんなことないわよ。襲ってきたのだからこちらは全力で応えただけ。気にすることないわ」

 精霊使いのクルトと神官のイネッサはそんなことを話している。確かにもうこうなってしまっては後の祭りだし考えても仕方がないな。

 悲しいすれ違いというか人間側の落ち度な気がするが、もうどうにもならない。同じことを繰り返さないようにするくらいしかできないだろう。

 そういうことで色々と話が纏まったので、俺たちは四力統治塔から出た。四人組は治療のお礼をしたいと言ってきてくれたが、それは必要ないと断っておいた。穴を塞ぐのにクルトが頑張ってくれるとのことだったし、四力統治塔から少なくない報酬をもらえるから必要ないのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...