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険しき道々
凪ぐ草原
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森を抜けるとなだらかな丘が続く地形が現れる。遠くの方までカーブを描いた丘が沢山続き、さわさわと草が風に揺られている。風が吹く度に青々と伸びる草が波を描き、爽やかな草の香りを舞い上げている。
その中には黄色い花の微かな香りが混じっていて、青空と合わせて気持ちが落ち着く道のりだ。プライノたちも邪魔な草木が多かった森を抜けて気持ちが良いのか、独特な鳴き声を上げながら機嫌良さそうに進んでいる。
このあたりでも魔物は見かけるが、どれも大したことはなく、苦労することなく倒せている。お昼は森にいる間に済ませてしまったが、こんなにいい景色の中食べられるんだったらそれも良かったかもしれない。
後ろからついてくる魔物はノエラに任せて俺は前方の魔物に対処する。見晴らしが良いから魔物はこちらの姿に気付きやすいが、こちらもそれは同じで、遠隔攻撃がある分こちらに有利だ。
食用肉の魔物やミンクのような見た目のマガスパングなどがいたが、特に問題はない。そうして歩くと途中でプライノの群れに出会った。サイみたいな見た目で荷車を引くくらい逞しいのに、意外と臆病な性格のようで、群れに遭遇した途端にプライノたちは逃げてしまった。
俺もノエラも野生のプライノに触ってみたかったが、どうやら駄目らしい。丘になっているのでところどころ坂があるが、荷車が暴走したりすることはない。
ここまでずっと歩き詰めだったのでキリの良いところで自分たちとプライのたちを休ませる。大都市ダロイ周辺も草原だったり山だったりと自然に触れることができていたが、この辺りもなかなか景色が良くて気持ちが晴れる。天気が快晴なこともあって穏やかだ。
ノエラも見える精霊たちが変わってきているらしくて、たまに小さく笑いかけたりしている。彼女は進んでいるときには最後列にいるから顔があまり見えないが、こうして休んでいるときにも微笑んでいるのは可愛い。
せっかくなのでノエラにお願いして“深淵の囁き”の残りを使ってもらった。そうしたら俺と依頼人の二人にも精霊が見えて大はしゃぎだ。ここにはおなじみの風の精霊もいるが、新しいのはのほほんとした丸っこい顔の精霊だ。
どことなく小さなナマケモノみたいな体つきをしていて、ノエラに聞くとそいつは穏やかな気持ちのときに現れる精霊らしい。荷車の上に乗ったり、風にふわふわと浮いたりしてこいつは本当に自由気ままだ。
「わあ、ノエラちゃんに見えてる世界ってこんな感じなんだ。いろんなところにいろんな精霊がいるんだね」
「私も初めて見ましたわ。精霊たちってこんな風な見た目だったのですね」
足元の道を小さな何かが通り過ぎた。あれは大地の精霊かな。感動している俺たちの横をテトテト走っていく小さな石の人形。精霊はどれも人よりサイズが小さいせいか可愛らしい。
俺たちはこのゆったりとした丘の地帯で“深淵の囁き”の効果を満足いくまで堪能し、それからまた目的の街を目指して歩きだした。ガラゴロと車輪が回る音がまた耳に馴染んでくるころに日が段々と沈み始める。結局丘の地帯は結構長く続き、今日中には抜けられなかったが、ここなら長く居ても飽きないし野営にも不便はなさそうだ。
ノエラのおかげで森の地帯を早めに抜けることができたので、焦らずに暗くなる前に野営の支度をみんなでやった。俺とノエラは持っていたキャンプセットを使ってテントを立てて、依頼人二人も荷車に積んでいた大きな野営道具を広げている。
俺も設営を手伝おうかと思ったが、彼女らはさすが行商歴が長いだけあって手際が良く、それぞれの息もぴったりだった。食事もそれぞれで取ることを想定していたらしいが、ノエラが四人分作ってくれると言っていたのでそれに甘える形になった。
広い地形のこの辺りでもノエラが料理をし始めるとスパイスの効いた良い香りが漂い始める。それに誘われて魔物が群がって来るのではないかと心配したが、ノエラは既に精霊魔法で匂いや気配を遮断する障壁を張ってくれていたらしい。いつの間に。
しかも闇の精霊にお願いしているんですよと屈託のない笑顔で言われてドキッとしてしまったのは内緒だ。さっきも見たが闇の精霊は俺の邪光ランタンに乗っていつも楽しそうにしているらしいので、ソイツが頑張ってくれたのだろう。
その中には黄色い花の微かな香りが混じっていて、青空と合わせて気持ちが落ち着く道のりだ。プライノたちも邪魔な草木が多かった森を抜けて気持ちが良いのか、独特な鳴き声を上げながら機嫌良さそうに進んでいる。
このあたりでも魔物は見かけるが、どれも大したことはなく、苦労することなく倒せている。お昼は森にいる間に済ませてしまったが、こんなにいい景色の中食べられるんだったらそれも良かったかもしれない。
後ろからついてくる魔物はノエラに任せて俺は前方の魔物に対処する。見晴らしが良いから魔物はこちらの姿に気付きやすいが、こちらもそれは同じで、遠隔攻撃がある分こちらに有利だ。
食用肉の魔物やミンクのような見た目のマガスパングなどがいたが、特に問題はない。そうして歩くと途中でプライノの群れに出会った。サイみたいな見た目で荷車を引くくらい逞しいのに、意外と臆病な性格のようで、群れに遭遇した途端にプライノたちは逃げてしまった。
俺もノエラも野生のプライノに触ってみたかったが、どうやら駄目らしい。丘になっているのでところどころ坂があるが、荷車が暴走したりすることはない。
ここまでずっと歩き詰めだったのでキリの良いところで自分たちとプライのたちを休ませる。大都市ダロイ周辺も草原だったり山だったりと自然に触れることができていたが、この辺りもなかなか景色が良くて気持ちが晴れる。天気が快晴なこともあって穏やかだ。
ノエラも見える精霊たちが変わってきているらしくて、たまに小さく笑いかけたりしている。彼女は進んでいるときには最後列にいるから顔があまり見えないが、こうして休んでいるときにも微笑んでいるのは可愛い。
せっかくなのでノエラにお願いして“深淵の囁き”の残りを使ってもらった。そうしたら俺と依頼人の二人にも精霊が見えて大はしゃぎだ。ここにはおなじみの風の精霊もいるが、新しいのはのほほんとした丸っこい顔の精霊だ。
どことなく小さなナマケモノみたいな体つきをしていて、ノエラに聞くとそいつは穏やかな気持ちのときに現れる精霊らしい。荷車の上に乗ったり、風にふわふわと浮いたりしてこいつは本当に自由気ままだ。
「わあ、ノエラちゃんに見えてる世界ってこんな感じなんだ。いろんなところにいろんな精霊がいるんだね」
「私も初めて見ましたわ。精霊たちってこんな風な見た目だったのですね」
足元の道を小さな何かが通り過ぎた。あれは大地の精霊かな。感動している俺たちの横をテトテト走っていく小さな石の人形。精霊はどれも人よりサイズが小さいせいか可愛らしい。
俺たちはこのゆったりとした丘の地帯で“深淵の囁き”の効果を満足いくまで堪能し、それからまた目的の街を目指して歩きだした。ガラゴロと車輪が回る音がまた耳に馴染んでくるころに日が段々と沈み始める。結局丘の地帯は結構長く続き、今日中には抜けられなかったが、ここなら長く居ても飽きないし野営にも不便はなさそうだ。
ノエラのおかげで森の地帯を早めに抜けることができたので、焦らずに暗くなる前に野営の支度をみんなでやった。俺とノエラは持っていたキャンプセットを使ってテントを立てて、依頼人二人も荷車に積んでいた大きな野営道具を広げている。
俺も設営を手伝おうかと思ったが、彼女らはさすが行商歴が長いだけあって手際が良く、それぞれの息もぴったりだった。食事もそれぞれで取ることを想定していたらしいが、ノエラが四人分作ってくれると言っていたのでそれに甘える形になった。
広い地形のこの辺りでもノエラが料理をし始めるとスパイスの効いた良い香りが漂い始める。それに誘われて魔物が群がって来るのではないかと心配したが、ノエラは既に精霊魔法で匂いや気配を遮断する障壁を張ってくれていたらしい。いつの間に。
しかも闇の精霊にお願いしているんですよと屈託のない笑顔で言われてドキッとしてしまったのは内緒だ。さっきも見たが闇の精霊は俺の邪光ランタンに乗っていつも楽しそうにしているらしいので、ソイツが頑張ってくれたのだろう。
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