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険しき道々
落岩
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歩き始めてしばらく経つと段々と景色が変わってきて、小さな丘ばかりだったのが大きな丘も目立つようになってきた。それに伴って坂も急になってくるので、迂回しながら急な坂は避けていく。
どうしても避けにくい大きな丘はノエラが大地の精霊魔法を上手く使って荷車を進ませてくれる。その度にミーナとオルタヴィアはノエラを褒めてくれて、本当に雰囲気の良い旅路になっている。
でこぼことした丘の地帯をさらに進むこと二時間くらいか。ようやくこの地形にも終わりが見えてきて、今度は小さな山が沢山ある場所が目前に広がった。山と言っても真下から見上ても頂上が見えるくらいの山とも呼びにくいものではあるが、その端を通るとなると落石や魔物の襲撃の危険が出てくる。
【闇の感知】での索敵範囲を少し広げながら上方を警戒する。荷車の振動で岩がパラパラと降ってくるのが恐ろしく、慎重に進もうと提案したが、ここでもノエラの精霊魔法が猛威を振るい、音の精霊の精密な操作で振動を抑えた。
荷車の車輪の音もそれで抑えられて、魔物に余計な音を聞かれる心配も大分減った。ありがたい。一応何匹かイボンやそれ以外の鳥っぽい魔物を数匹相手にしたが、どれも簡単に倒せるので心配はない。
「ここまで安全に進める旅は久しぶりだよ。精霊使いさんとも何度か旅をしたことがあるけど、ここまで上手に精霊魔法を使ってはくれなかったなあ」
「そうね。ノエラさんは発想も柔軟で魔法や精霊の操作が人並以上に優れていらっしゃるのだわ」
「だなー。精霊使いがというよりもノエラが凄いんだよな」
「あ、ありがとうございます。そう言ってもらえると嬉しいです……!」
最初は否定していたノエラも褒められると素直にお礼を言うようになった。彼女自身、役に立てている実感が持ててきたということだろう。うんうん、良いことだな。
そうやって話ながら進んでいると、山というよりも大きな長方形型の縦長の岩がいくつも連なるエリアに入ってきた。それなりに天辺までの高さもあり、上の方には何かの木が無数に生えていて、小さな森みたいな感じになっている。
その自然のオブジェが辺りにたくさんあるもんだから俺もちょっと上を見ながら歩いていたのだが……突如真上の大岩からでっかい岩の塊が落ちてきた。それは完全に荷車と依頼人二人を巻き込む形で落ちてきて、焦った俺は大慌てで奇跡を行使した。
【闇の領域】
真上に亜空間の闇を展開し、落ちてきた岩の塊を吸い込んだ。結構な大きさの闇を召喚したおかげで、岩をすべて呑みこむことができて、幸いにも何の被害も出すことなく危機を回避できた。
「ひゃー。焦ったあ! サムくん、ナイスキャッチ!」
「本当に助かりましたわ。ありがとうございます」
「いやいや、間に合ってよかったよ。俺も今ので相当肝を冷やした」
「咄嗟に攻撃の奇跡じゃなくて、収納の奇跡を使ったんですね。さすがです」
「素晴らしい判断でしたサム様。破片が飛び散らないように配慮なさったのですね」
「もしかしたらこうなるかもと事前に想定できてたからな。何にも考えてなかったら攻撃系の奇跡で対処しちゃってたかも」
思わずといった感じでアンヘルも褒めてくれたが、咄嗟に攻撃系の奇跡を使わなくてよかったよ。一大事は防げたかもしれないけど、それだったら荷車への被害は防げていなかったし、依頼人二人とノエラ、それから荷車を引いてくれているプライノたちにも怪我させてたかもしれないからな。
一応何か意図がある攻撃だったのか確かめるために【闇の感知】の精度を上げて岩が落ちてきたところの辺りの気配を調べたが、特に気になる気配はなかった。どうやらただ単に運が悪かっただけのようだ。
どうしても避けにくい大きな丘はノエラが大地の精霊魔法を上手く使って荷車を進ませてくれる。その度にミーナとオルタヴィアはノエラを褒めてくれて、本当に雰囲気の良い旅路になっている。
でこぼことした丘の地帯をさらに進むこと二時間くらいか。ようやくこの地形にも終わりが見えてきて、今度は小さな山が沢山ある場所が目前に広がった。山と言っても真下から見上ても頂上が見えるくらいの山とも呼びにくいものではあるが、その端を通るとなると落石や魔物の襲撃の危険が出てくる。
【闇の感知】での索敵範囲を少し広げながら上方を警戒する。荷車の振動で岩がパラパラと降ってくるのが恐ろしく、慎重に進もうと提案したが、ここでもノエラの精霊魔法が猛威を振るい、音の精霊の精密な操作で振動を抑えた。
荷車の車輪の音もそれで抑えられて、魔物に余計な音を聞かれる心配も大分減った。ありがたい。一応何匹かイボンやそれ以外の鳥っぽい魔物を数匹相手にしたが、どれも簡単に倒せるので心配はない。
「ここまで安全に進める旅は久しぶりだよ。精霊使いさんとも何度か旅をしたことがあるけど、ここまで上手に精霊魔法を使ってはくれなかったなあ」
「そうね。ノエラさんは発想も柔軟で魔法や精霊の操作が人並以上に優れていらっしゃるのだわ」
「だなー。精霊使いがというよりもノエラが凄いんだよな」
「あ、ありがとうございます。そう言ってもらえると嬉しいです……!」
最初は否定していたノエラも褒められると素直にお礼を言うようになった。彼女自身、役に立てている実感が持ててきたということだろう。うんうん、良いことだな。
そうやって話ながら進んでいると、山というよりも大きな長方形型の縦長の岩がいくつも連なるエリアに入ってきた。それなりに天辺までの高さもあり、上の方には何かの木が無数に生えていて、小さな森みたいな感じになっている。
その自然のオブジェが辺りにたくさんあるもんだから俺もちょっと上を見ながら歩いていたのだが……突如真上の大岩からでっかい岩の塊が落ちてきた。それは完全に荷車と依頼人二人を巻き込む形で落ちてきて、焦った俺は大慌てで奇跡を行使した。
【闇の領域】
真上に亜空間の闇を展開し、落ちてきた岩の塊を吸い込んだ。結構な大きさの闇を召喚したおかげで、岩をすべて呑みこむことができて、幸いにも何の被害も出すことなく危機を回避できた。
「ひゃー。焦ったあ! サムくん、ナイスキャッチ!」
「本当に助かりましたわ。ありがとうございます」
「いやいや、間に合ってよかったよ。俺も今ので相当肝を冷やした」
「咄嗟に攻撃の奇跡じゃなくて、収納の奇跡を使ったんですね。さすがです」
「素晴らしい判断でしたサム様。破片が飛び散らないように配慮なさったのですね」
「もしかしたらこうなるかもと事前に想定できてたからな。何にも考えてなかったら攻撃系の奇跡で対処しちゃってたかも」
思わずといった感じでアンヘルも褒めてくれたが、咄嗟に攻撃系の奇跡を使わなくてよかったよ。一大事は防げたかもしれないけど、それだったら荷車への被害は防げていなかったし、依頼人二人とノエラ、それから荷車を引いてくれているプライノたちにも怪我させてたかもしれないからな。
一応何か意図がある攻撃だったのか確かめるために【闇の感知】の精度を上げて岩が落ちてきたところの辺りの気配を調べたが、特に気になる気配はなかった。どうやらただ単に運が悪かっただけのようだ。
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