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第六章
着火
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術中八苦既に冒険者を雇ったことは知られているだろうが、それでもストレンジの冒険者たちは敵の部族、アルマンドの長の元まで四人でやってきた。
それだけの実力があるのだと敵を牽制する目的だ。
こちらの部族長の住まいはそれに住む長自身の佇まいと同じく豪胆な雰囲気で、荒々しく削られた木の梁が印象深く、ビロードのような滑らかな絨毯が権力の大きさを物語っていた。
骨と石を組み合わせた物々しい玉座に座るこの部族長は、冒険者たちを見るなり上から見下ろすように何用だと聞いてくる。
アルマンドの長、ヴァストル アルマンドはラウレンツで小耳にはさんだ通り、かなり傲慢な男のようだ。尊大に構える彼の前でも、予定通りここはアロイスが話をした。
「私はラウレンツの長、マーレウスさんに雇われた冒険者です。まずは話し合いの場を設けていただきたくお願いに参りました」
「ほう。律義なことだな冒険者ども。敵陣にわざわざ乗り込んでくる潔さも評価して、この私がお前たちを雇いたい。ラウレンツについて情報を提供してくれるならば報酬金は倍額取らせるぞ」
胸糞悪い提案に仲間が口を出しそうになるのを止めてアロイスが冷静に返事をする。
「残念ながらお断りします。冒険者は信用が命。今の依頼主を裏切ることなどできませんから。それで、話し合いには応じていただけるのですか?」
「……フッ。面白い。私の前でも萎縮しない輩とは久々に会ったぞ。いいだろう。その話し合いとやらに応じてやろうではないか。日時と場所も貴様らが決めてかまわん」
「明後日の正午、咆哮の谷でいかがでしょうか。もちろん護衛は最小限でお願いいたします」
「よかろう。せいぜい明後日を楽しみにするがよい」
緊張感が漂う話は手短に終わって、冒険者たちは護衛の戦士たちが左右に控えている絨毯の通り道を歩いて去っていく。
どうやら牽制のために出向いた価値はありそうだった。襲われることなく無事に帰ってマーレウスに報告すると、彼は話し合いの手筈を整え始めた。
話し合いの場として咆哮の谷を選んだのは高い壁に囲まれているからだそう。暗殺などを警戒するのが簡単な地形であり、二部族の集落の大体中間に位置しているという利点があるらしかった。
事が決まって冒険者たちは自分たちの配置を考える。さらには話し合いの内容をマーレウスが決めていった。
そうして準備万端で迎えた当日。草原の真っただ中に地割れを起こしたような地形の谷へ、あのときとはまた違った椅子を従者に運ばせてヴァストルがやってくる。護衛の数は四人。彼の傍に二人、崖の上にそれぞれ一人ずつだ。
こちらも同じように、ザルムとカイネがマーレウスの近くに控え、アロイスとマデリエネが左右の崖で警戒した。
相手の護衛はどの程度の実力かはわからないが、戦士と魔法戦士、黒装束のような服を着た男にローブを着た女性がいた。
護衛がついていることで余裕の表情のヴァストルは手短に済ませようと言っていきなり本題を切り出してきた。
その内容はもちろん、無条件にアルマンドの支配下に入れというものだった。
そんなことはできない。もう少し譲歩してくれとマーレウスが言うのも鼻で笑われる始末だ。
結局望むような結果は得られずにすぐに話し合いは終わってしまった。
救いがあるとすれば土地と労働力を損なわないために決闘方式で決着をつけることになったという点だろう。
それでもカイネは相手の態度にかなり思うところがあったようでずっと唇を噛みしめていた。時折息が苦しそうにしていたのをザルムが宥めたりもする。
そしてようやく戻ってきたラウレンツの建物で、マーレウスはわかってはいたがと肩を落とす。
それでも彼はラウレンツの長としていつまでも意気消沈しているだけではなかった。俯いていた顔を上げると、彼は改めてストレンジにこう依頼してきた。
「こうなっては穏便に解決することはできないだろう。どうか……どうかこの集落のために力を貸してくれ」
「……わかりました。相手もこちらと同じ人数で来るということですし、十分に勝機はあるでしょう。最善を尽くしますよ」
「もちろん俺たちがここで止めてみせます」
「決闘で勝とうなんて舐められたものよね。完膚なきまでに叩き潰してあげましょ」
「……絶対に勝つです……」
各々決意の言葉を口にして戦いに備える。決闘が行われるのは明後日だ。それまでにできることをする。
アロイスは密かに古代魔法の儀式を行い、より早く詠唱が終わるように工夫する。ザルムは覚えたての竜剣技の練度を高めていた。
マデリエネは投げナイフの精度を上げて接近戦のトレーニングをしており、カイネは操原魔法の用途を整理してそれぞれの魔法を活用できるようにおさらいしていた。
こうして待機している間にも暗殺者の心配もしていたが、向こうは意外にも行動を起こしてこなかった。
支配下に入れるために非道と思われる行動は避けたのかもしれない。既にラウレンツの戦士たちを亡き者にしているという事実は消せないが、少しでも確執を減らすことを優先したらしい。
それほど自分たちの戦士たちに自信があるということをこの事実は示しているのだ。
それだけの実力があるのだと敵を牽制する目的だ。
こちらの部族長の住まいはそれに住む長自身の佇まいと同じく豪胆な雰囲気で、荒々しく削られた木の梁が印象深く、ビロードのような滑らかな絨毯が権力の大きさを物語っていた。
骨と石を組み合わせた物々しい玉座に座るこの部族長は、冒険者たちを見るなり上から見下ろすように何用だと聞いてくる。
アルマンドの長、ヴァストル アルマンドはラウレンツで小耳にはさんだ通り、かなり傲慢な男のようだ。尊大に構える彼の前でも、予定通りここはアロイスが話をした。
「私はラウレンツの長、マーレウスさんに雇われた冒険者です。まずは話し合いの場を設けていただきたくお願いに参りました」
「ほう。律義なことだな冒険者ども。敵陣にわざわざ乗り込んでくる潔さも評価して、この私がお前たちを雇いたい。ラウレンツについて情報を提供してくれるならば報酬金は倍額取らせるぞ」
胸糞悪い提案に仲間が口を出しそうになるのを止めてアロイスが冷静に返事をする。
「残念ながらお断りします。冒険者は信用が命。今の依頼主を裏切ることなどできませんから。それで、話し合いには応じていただけるのですか?」
「……フッ。面白い。私の前でも萎縮しない輩とは久々に会ったぞ。いいだろう。その話し合いとやらに応じてやろうではないか。日時と場所も貴様らが決めてかまわん」
「明後日の正午、咆哮の谷でいかがでしょうか。もちろん護衛は最小限でお願いいたします」
「よかろう。せいぜい明後日を楽しみにするがよい」
緊張感が漂う話は手短に終わって、冒険者たちは護衛の戦士たちが左右に控えている絨毯の通り道を歩いて去っていく。
どうやら牽制のために出向いた価値はありそうだった。襲われることなく無事に帰ってマーレウスに報告すると、彼は話し合いの手筈を整え始めた。
話し合いの場として咆哮の谷を選んだのは高い壁に囲まれているからだそう。暗殺などを警戒するのが簡単な地形であり、二部族の集落の大体中間に位置しているという利点があるらしかった。
事が決まって冒険者たちは自分たちの配置を考える。さらには話し合いの内容をマーレウスが決めていった。
そうして準備万端で迎えた当日。草原の真っただ中に地割れを起こしたような地形の谷へ、あのときとはまた違った椅子を従者に運ばせてヴァストルがやってくる。護衛の数は四人。彼の傍に二人、崖の上にそれぞれ一人ずつだ。
こちらも同じように、ザルムとカイネがマーレウスの近くに控え、アロイスとマデリエネが左右の崖で警戒した。
相手の護衛はどの程度の実力かはわからないが、戦士と魔法戦士、黒装束のような服を着た男にローブを着た女性がいた。
護衛がついていることで余裕の表情のヴァストルは手短に済ませようと言っていきなり本題を切り出してきた。
その内容はもちろん、無条件にアルマンドの支配下に入れというものだった。
そんなことはできない。もう少し譲歩してくれとマーレウスが言うのも鼻で笑われる始末だ。
結局望むような結果は得られずにすぐに話し合いは終わってしまった。
救いがあるとすれば土地と労働力を損なわないために決闘方式で決着をつけることになったという点だろう。
それでもカイネは相手の態度にかなり思うところがあったようでずっと唇を噛みしめていた。時折息が苦しそうにしていたのをザルムが宥めたりもする。
そしてようやく戻ってきたラウレンツの建物で、マーレウスはわかってはいたがと肩を落とす。
それでも彼はラウレンツの長としていつまでも意気消沈しているだけではなかった。俯いていた顔を上げると、彼は改めてストレンジにこう依頼してきた。
「こうなっては穏便に解決することはできないだろう。どうか……どうかこの集落のために力を貸してくれ」
「……わかりました。相手もこちらと同じ人数で来るということですし、十分に勝機はあるでしょう。最善を尽くしますよ」
「もちろん俺たちがここで止めてみせます」
「決闘で勝とうなんて舐められたものよね。完膚なきまでに叩き潰してあげましょ」
「……絶対に勝つです……」
各々決意の言葉を口にして戦いに備える。決闘が行われるのは明後日だ。それまでにできることをする。
アロイスは密かに古代魔法の儀式を行い、より早く詠唱が終わるように工夫する。ザルムは覚えたての竜剣技の練度を高めていた。
マデリエネは投げナイフの精度を上げて接近戦のトレーニングをしており、カイネは操原魔法の用途を整理してそれぞれの魔法を活用できるようにおさらいしていた。
こうして待機している間にも暗殺者の心配もしていたが、向こうは意外にも行動を起こしてこなかった。
支配下に入れるために非道と思われる行動は避けたのかもしれない。既にラウレンツの戦士たちを亡き者にしているという事実は消せないが、少しでも確執を減らすことを優先したらしい。
それほど自分たちの戦士たちに自信があるということをこの事実は示しているのだ。
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