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第六章
新たな仲間
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「片付いたな」
ザルムの瞳はやがて元の暗い色に戻っていく。しかしアスピスを倒してちょっと一休みなんてしようものなら、開けたこの場所の少し奥からいきなり悲鳴が聞こえてきた。
何事かと全員で急いで駆けつけると、そこには驚きや困惑、そして恐怖の表情を浮かべる人たちがいた。
子供から老人まで色々な特徴の人。確かに街の人を無差別に連れてきているようだった。アスピスは腹が満たせれば何でも良かったのかもしれない。
その中には家に帰りたいと怯える子供もいたが、ここで闇雲に街に帰ろうとすれば別の魔物に遭遇するのがオチだ。
巨大な魔物の縄張りならばここで夜を明かして日が昇ってから帰るのが妥当。マデリエネとカイネで子供を何とか説得し、開けた縄張りの中心に火を起こして朝を待った。
衰弱している者にはカイネの魔法で治療を施し、全員に少しばかりの携帯食を食べさせて、朝を迎えた途端に街へと向かった。
適切な判断のおかげで誰一人として怪我を負うことなく無事に街に着く。
各人の家に行く前に、門番に道を聞いて衛兵隊の詰所に行くと、行方不明者との照合が直ちに行われて感謝された。短い時間でも突然森の中に放り出された人たちは、徐々に記憶を取り戻して自分から森に行ったことと、アスピスという魔物の能力でそうなったことを証言してくれる。
正式に依頼を受けたわけでもなかったが、謝礼金がきっちりと支払われた。どうやら衛兵隊で独自に調査はしていたが手に負えずに冒険者に依頼しようと思っていたところだったそうだ。
ここまで被害が出てからようやく冒険者の力を借りる判断をするというのは遅いのだが、あまり大きくない街なので資金を出し渋っていたらしい。
ともかく犠牲者は帰って来たが、全員ではなかった。数人はもう既に大蛇に食われてしまっていたのだ。
帰って来た家族との再会を喜ぶ者と、帰らぬ人となった家族の喪失を悲しむ者。その様子を領主に間近で見せ、お金よりも人命を優先する意識が大切であることを知らしめたいと思ってしまう冒険者たちであった。
その後、彼らは一人ひとり、犠牲者たちをしっかりと本人の家へと送り届けた。その家族の中にはゲルセルを処刑しようとした男も混じっていたのだが。
家族を失いかけて必死になり、判断を誤ったのだろう。彼らはみなゲルセルに申し訳なかったと謝罪してきた。ゲルセルは無表情のままだったために仲間たちもどう思っていたかはわからなかったが、怒ったような様子もない。
殺されたと思っていれば仇を取りたいと思うのはある意味自然だと考えていることを祈って、アロイスたちはその家々を後にした。
事件を解決してカルムの街に帰る前に、ザルムがゲルセルに聞く。
「やることもやったし帰るとするか。ゲルセルはこれからどうする?」
するとゲルセルが何か言う前にマデリエネがしゃしゃり出てくる。
「森に帰らせたくないわ。せっかく纏まったお金がもらえたのだからまともな生活をするべきよ」
「ワタシたちと一緒に来るですか?」
「もちろんゲルセルさんさえよければですが」
自然にカイネの提案に賛成するアロイスに相変わらず黙りこくっているゲルセル。
しかし次の瞬間には、ほんの少しだけ彼の口元が和らいでいるのが見て取れた。
無愛想にも聞こえてしまうお礼の言葉もそのあと聞いたストレンジの冒険者たちは、安心してカルムへの帰途に着いたのだった。
豪傑の虎亭に帰ると、帰りが遅くなっていた彼らを心配するタキシードの“虎”が心配げに迎えてくれる。
これはもういつもの光景になっているが、ただ一つ違うのはある青年が彼らと行動を共にしているということだ。
「厄介事に巻き込まれたんだろうと思って心配していたよ。君たちのことだから道半ばで倒れるなんてことはないだろうけどね。ところでそちらの彼はお友達かい? こんにちは」
ゲルセルは小さく会釈する。ファムはいろんな人間を見てきたのだろうが、彼はきっと初めてのタイプだ。
彼らは事情を説明してゲルセルをしばらく宿の客にすることを頼み込む。基本冒険者の店に泊めるのは冒険者のみなのだ。
するとファムはもちろん構わないと快諾してくれた。それから冒険者たちは椅子を一つ加えたテーブルに座って疲れを癒す酒のグラスを煽っている。
良質な酒にご満悦のザルムは、突然ゲルせルの肩を軽く叩いた。その次にはこう言っている。
「知覚魔法を食らって動けなくなってたときの援護、本当に助かったぜ。ありがとな」
「……大したことじゃ……ない……」
褒められ感謝されることに慣れていないゲルセルは目線を下げるが、マデリエネがそれに追い打ちをかけた。
「見事な弓の腕よね。その才能を生かして冒険者になるつもりはない?」
「いいかもしれませんね。歓迎しますよ」
「仲間が増えるのはうれしいです。一緒に頑張るです」
「もちろんお前が良ければだぞ。完璧なパーティとは言えないからな」
アロイスもマデリエネも曖昧に笑う。それに続くゲルセルの答えは……。
「……よろしく……頼む……」
こうしてストレンジに五人目の仲間が加わることになる。半魔族というこれまた人間種の仲間ではないが、多様性もまたこのパーティの良さなのだ。
その夜の豪華な食事にはあのゲルセルも少し眉をあげてほほ笑んでいるように思えた。彼がどんな食事をしていたのかはわからないが、それよりはずっとおいしいはずだ。
今は離れてしまった思い人のために、ミアは料理の腕をさらに磨いていたのだから。
ザルムの瞳はやがて元の暗い色に戻っていく。しかしアスピスを倒してちょっと一休みなんてしようものなら、開けたこの場所の少し奥からいきなり悲鳴が聞こえてきた。
何事かと全員で急いで駆けつけると、そこには驚きや困惑、そして恐怖の表情を浮かべる人たちがいた。
子供から老人まで色々な特徴の人。確かに街の人を無差別に連れてきているようだった。アスピスは腹が満たせれば何でも良かったのかもしれない。
その中には家に帰りたいと怯える子供もいたが、ここで闇雲に街に帰ろうとすれば別の魔物に遭遇するのがオチだ。
巨大な魔物の縄張りならばここで夜を明かして日が昇ってから帰るのが妥当。マデリエネとカイネで子供を何とか説得し、開けた縄張りの中心に火を起こして朝を待った。
衰弱している者にはカイネの魔法で治療を施し、全員に少しばかりの携帯食を食べさせて、朝を迎えた途端に街へと向かった。
適切な判断のおかげで誰一人として怪我を負うことなく無事に街に着く。
各人の家に行く前に、門番に道を聞いて衛兵隊の詰所に行くと、行方不明者との照合が直ちに行われて感謝された。短い時間でも突然森の中に放り出された人たちは、徐々に記憶を取り戻して自分から森に行ったことと、アスピスという魔物の能力でそうなったことを証言してくれる。
正式に依頼を受けたわけでもなかったが、謝礼金がきっちりと支払われた。どうやら衛兵隊で独自に調査はしていたが手に負えずに冒険者に依頼しようと思っていたところだったそうだ。
ここまで被害が出てからようやく冒険者の力を借りる判断をするというのは遅いのだが、あまり大きくない街なので資金を出し渋っていたらしい。
ともかく犠牲者は帰って来たが、全員ではなかった。数人はもう既に大蛇に食われてしまっていたのだ。
帰って来た家族との再会を喜ぶ者と、帰らぬ人となった家族の喪失を悲しむ者。その様子を領主に間近で見せ、お金よりも人命を優先する意識が大切であることを知らしめたいと思ってしまう冒険者たちであった。
その後、彼らは一人ひとり、犠牲者たちをしっかりと本人の家へと送り届けた。その家族の中にはゲルセルを処刑しようとした男も混じっていたのだが。
家族を失いかけて必死になり、判断を誤ったのだろう。彼らはみなゲルセルに申し訳なかったと謝罪してきた。ゲルセルは無表情のままだったために仲間たちもどう思っていたかはわからなかったが、怒ったような様子もない。
殺されたと思っていれば仇を取りたいと思うのはある意味自然だと考えていることを祈って、アロイスたちはその家々を後にした。
事件を解決してカルムの街に帰る前に、ザルムがゲルセルに聞く。
「やることもやったし帰るとするか。ゲルセルはこれからどうする?」
するとゲルセルが何か言う前にマデリエネがしゃしゃり出てくる。
「森に帰らせたくないわ。せっかく纏まったお金がもらえたのだからまともな生活をするべきよ」
「ワタシたちと一緒に来るですか?」
「もちろんゲルセルさんさえよければですが」
自然にカイネの提案に賛成するアロイスに相変わらず黙りこくっているゲルセル。
しかし次の瞬間には、ほんの少しだけ彼の口元が和らいでいるのが見て取れた。
無愛想にも聞こえてしまうお礼の言葉もそのあと聞いたストレンジの冒険者たちは、安心してカルムへの帰途に着いたのだった。
豪傑の虎亭に帰ると、帰りが遅くなっていた彼らを心配するタキシードの“虎”が心配げに迎えてくれる。
これはもういつもの光景になっているが、ただ一つ違うのはある青年が彼らと行動を共にしているということだ。
「厄介事に巻き込まれたんだろうと思って心配していたよ。君たちのことだから道半ばで倒れるなんてことはないだろうけどね。ところでそちらの彼はお友達かい? こんにちは」
ゲルセルは小さく会釈する。ファムはいろんな人間を見てきたのだろうが、彼はきっと初めてのタイプだ。
彼らは事情を説明してゲルセルをしばらく宿の客にすることを頼み込む。基本冒険者の店に泊めるのは冒険者のみなのだ。
するとファムはもちろん構わないと快諾してくれた。それから冒険者たちは椅子を一つ加えたテーブルに座って疲れを癒す酒のグラスを煽っている。
良質な酒にご満悦のザルムは、突然ゲルせルの肩を軽く叩いた。その次にはこう言っている。
「知覚魔法を食らって動けなくなってたときの援護、本当に助かったぜ。ありがとな」
「……大したことじゃ……ない……」
褒められ感謝されることに慣れていないゲルセルは目線を下げるが、マデリエネがそれに追い打ちをかけた。
「見事な弓の腕よね。その才能を生かして冒険者になるつもりはない?」
「いいかもしれませんね。歓迎しますよ」
「仲間が増えるのはうれしいです。一緒に頑張るです」
「もちろんお前が良ければだぞ。完璧なパーティとは言えないからな」
アロイスもマデリエネも曖昧に笑う。それに続くゲルセルの答えは……。
「……よろしく……頼む……」
こうしてストレンジに五人目の仲間が加わることになる。半魔族というこれまた人間種の仲間ではないが、多様性もまたこのパーティの良さなのだ。
その夜の豪華な食事にはあのゲルセルも少し眉をあげてほほ笑んでいるように思えた。彼がどんな食事をしていたのかはわからないが、それよりはずっとおいしいはずだ。
今は離れてしまった思い人のために、ミアは料理の腕をさらに磨いていたのだから。
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