61 / 84
第七章
呪われの村
しおりを挟むそれから数か月後の某日、ストレンジが技能検定試験に出かけているときにミアは定期的に来るいつもの自分宛の手紙を待ちきれずに読んでいた。
いつもその手紙を読めばぼんやりとしてしまうし、それを嬉しく思っていた。
ところが今日はそういうわけにはいかないらしい。彼女宛以外に届いていた手紙の中に、至急応援求むの文字が見える。
普通はこんな形で手紙が来ることなど滅多にない。依頼の話ならギルドを通すのが一般的なのだ。
これは何かよからぬことがあったのだとミアでもわかる。ファムにいち早くその手紙を渡すと、彼は目つきを変えて当然のごとく封を開けて手紙を読んだ。
これは良くないねと彼がボソリと言うのが聞こえてしまったミアだが、この店には非凡な能力を持つ冒険者がいることを彼女は知っている。
きっと大丈夫とミアはそう自らに言い聞かせて、愛しい人からの手紙を溢れんばかりの木の箱へと大切にしまうのだった。
試験を終えて帰ってくる冒険者たちに、早速手紙の内容を伝えるファム。その内容に特に衝撃を受けるのは三人だ。
「また事件か。つくづくあの村は大変だな」
「ええ。またアンデッド絡みでしょうか」
「もしかしてジェルグの村って呪われてたりする?」
こらこらとファムがマデリエネに目線を送ると、だってといいたげな表情が返ってくる。
カイネは前にも事件があったですかと大げさに聞いて、そのやりとりをとにかくごまかした。彼女は平和主義なのだ。
「そういえばカイネさんがパーティの一員になる前の話でしたね。私たちは以前、ジェルグの村で起きた悲しい事件を解決したことがあるんです」
「母親と一緒に飢えて死んじまったライナスって子がアンデッドになって村に現れたんだよな」
「その年は不作だったから村全体で食料が枯渇していたの。それで彼ら親子には誰も食べ物を分けてあげられなかったのよね」
「それは痛ましい事件だったですね……。せっかく悲しい事件を終わらせたのに、また新しい事件が起きたですか……」
「また……解決するしか……ない……。それしか……できない……」
「ゲルセルさんの言うとおり、被害が少なくなるように解決することが、冒険者の私たちにできるせめてものことですね」
「そうなればすぐにでも話を聞きに行こうぜ。悲しい事件は早く決着を着けてやろう」
そうして久々にやってきたジェルグの村だが、初めて訪れたときと同じく、村全体が閑散としている。
今回は事件が起きたということを知っているため驚きはしないが。
迷うことなく村長の家に行くと、会議がちょうど終わったらしく、村人たちがはけていくところだった。特徴的な女村長は三人を見て懐かしみ、新たに加わった仲間にもよくぞ参ったなと声をかけてくれる。
それから手紙だけでは説明し足りない部分も含めて、事件の概要を香ばしい香りのお茶と共に説明してくれた。
その内容はもちろん悲惨や悲惨、またしても夜、人が殺されたのだ。
被害者は背の低い男で妻子はいないが真面目で、コツコツと作業を進めるような勤勉さのある人だったらしい。
事件が公になった理由の血痕は、あのナンシーとライナス親子の家に続いていて、そこに殆ど骨だけになっていた男の遺体があったそうだ。その夜に悲鳴や物音を聞いたものはおらず、悲劇が繰り返されたと思う村人も少なくないとの話だった。
「心残りがまだ残っていたですかね?」
カイネが問うのに、事件を解決した三人は首を傾げる。
「そうじゃねえと思いたいがな……」
「今度はお母さんの方が出てきたとか? もしそうだったら、あのときの対応が良くなかったのでしょうね」
「一度この世を離れた魂が舞い戻ってくるという例は聞いたことがありませんね。私は前の事件を盾にした人間の仕業の線が濃いと思います」
「もっと情報を……集めて……からだ……」
「それがよかろう。前回と同じく、空いている部屋を使ってくれ構わんからな。報酬は……そうじゃな……」
村長が派手な髪飾りを挿し直すのに、アロイスは優しげに制止の声をかけた。
「財政が厳しいのはよくわかっていますから、控えめで構いませんよ」
「すまぬな。できるだけ出すことは約束しよう。それでは、よろしく頼むぞ諸君」
こうして、再び起きた不穏な事件の捜査が始まった。
0
あなたにおすすめの小説
推しがラスボスなので救いたい〜ゲーマーニートは勇者になる
ケイちゃん
ファンタジー
ゲームに熱中していた彼は、シナリオで現れたラスボスを好きになってしまう。
彼はその好意にラスボスを倒さず何度もリトライを重ねて会いに行くという狂気の推し活をしていた。
だがある日、ストーリーのエンディングが気になりラスボスを倒してしまう。
結果、ラスボスのいない平和な世界というエンドで幕を閉じ、推しのいない世界の悲しみから倒れて死んでしまう。
そんな彼が次に目を開けるとゲームの中の主人公に転生していた!
主人公となれば必ず最後にはラスボスに辿り着く、ラスボスを倒すという未来を変えて救いだす事を目的に彼は冒険者達と旅に出る。
ラスボスを倒し世界を救うという定められたストーリーをねじ曲げ、彼はラスボスを救う事が出来るのか…?
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
才能は流星魔法
神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。
そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。
流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。
ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。
井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。
山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。
井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。
二日に一度、18時に更新します。
カクヨムにも同時投稿しています。
銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~
雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。
左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。
この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。
しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。
彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。
その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。
遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。
様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる