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第九章
進み続ける英雄たち
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このようにして、偉大なるレンタグル大陸に特例のSランク冒険者が二組誕生することになる。
一組目の火氷風雷ベリウスは酒を楽しみに剣の訓練を続ける毎日である。今度こそ仲間を守りきることができた彼はもっと多くの人を助けて守ることに力を注いでいる。
カティはポーションを作って売りながら魔法の研究をしている。持ち前のドジでファーストライトの一角が焼け焦げたことがあるがそれも平常運転であろう。
モレノはとにかくお金を稼ぐために小さな依頼でも地道にこなしている。未来の花嫁にも頻繁に会いに行っているが、それはこっそりと人気のないところでのことだ。
彼は彼女と公の場で会うことを夢見てそれを糧にして仕事に勤しんでいる。
リュドミーラはドメラクの神殿でも忌み嫌われたり中途半端に変な輩に好かれたりしている。
独特の雰囲気を漂わせている彼女の人柄をすべて知っている人間はそんなに多くはないが、それでも神殿に訪れる人の役に立っているのだ。
これらとは別のもう一組、ストレンジの冒険者たちは、愛らしい店主の経営する豪傑の虎亭でいつものように仕事を待っている。
ザルムは新調した武器の刃を眺めては鞘に戻すのを小一時間も繰り返しそうな勢いで落ち着きがない。大陸を救ったことで得た財を最高品質の武具に使って嬉しさが爆発しているのだ。
物騒だからやめなさいとマデリエネに言われると、今度は盾を磨きながら鎧の着心地を確かめている。
もうずっと鎧を着ているのでその必要がないことについてはもう誰も何も言いはしない。
彼の落ち着きのなさを注意したマデリエネは、今日も全体が見渡せる奥の席に座って店の前を行く人を眺めながらカイネが来るのを待っていた。
カイネは一仕事終えた後でもまだ神殿に通い詰めているのだ。
お布施をもらってはどうかと何度も提案したのだが、カイネはそれでは意味がないと主張していた。
マデリエネはリュドミーラのおかげでカイネの言っている意味はわかる。わかるのだが、背に腹はかえられないとずっと思っていた。
しかし無償で人々のために何かをしている本人がいらないと言っているのだからと、マデリエネはひとりでに納得しながら、唇に人差し指を当てて斜め上を向いている。
ゲルセルはマデリエネに教えてもらった文字を勉強して文章を書いていく練習をもうずっと続けている。彼はもともと地頭が良い方のようで少し教わっただけで日常生活の中で使うような文字のほとんどを覚えていた。
ギルドからたまに送られてくる連絡用の書面を読むのはまだ難儀なようであるが、それでも大きな進歩をし続けている。
ところが会話の方はというとこれまたもともとの性格のせいか、つっかえたり間が空いたりする癖は直りそうもない。もはやこれは彼のアイデンティティであると変に矯正することはしないほうが良いのであろうと皆が考えていた。
アロイスはゲルセルが文字を書く音を心地よく思いながら魔導書を読みふけってさらなる魔法の研究を進める所存のようである。
永遠に終止符を打てるということがわかった彼は、あれからいくらか気が楽になったようだ。
自分だけが取り残されるという事実は残ったままだが、いつでもこの運命から逃れられると思えば安心できた。
もちろんすぐに自身を消したいというわけではないのだが、終わりを選択する権利が持てて素直に喜ばしいのである。
そんな彼が重力を操る魔法についての記述を見つけたとき、カイネが帰ってきてファムがそそくさとカウンター下の依頼書を漁り始めた。
いよいよこれから始まる冒険に、誰もが胸を躍らせる。
死霊族の残党がまたいつ襲って来るかはわからない。
それでもいつもの冒険を楽しもうとする彼らがいる限り、この大陸の未来は明るいものであるに違いないのである。
ここまで長らくお付き合いくださいまして、本当にありがとうございます!
色々なシチュエーションの中で冒険者たちが活躍する様を描きたくて、依頼ごとに話が続いていくような形を取りました。できるだけ読みやすく、テンポよく進むように書いたつもりなのですが、いかがでしたでしょうか?
小説の執筆に関しては初心者なので至らない箇所ばかりだったかもしれませんが、一つの作品を書きあげられたことは誇りに思います。
まだまだ作品を投稿していくつもりですので、よろしければそちらの方もお付き合いくださいますと幸いでございます。
では、次回以降の作品でまたお会いいたしましょう!そのときまで良き小説ライフを!
一組目の火氷風雷ベリウスは酒を楽しみに剣の訓練を続ける毎日である。今度こそ仲間を守りきることができた彼はもっと多くの人を助けて守ることに力を注いでいる。
カティはポーションを作って売りながら魔法の研究をしている。持ち前のドジでファーストライトの一角が焼け焦げたことがあるがそれも平常運転であろう。
モレノはとにかくお金を稼ぐために小さな依頼でも地道にこなしている。未来の花嫁にも頻繁に会いに行っているが、それはこっそりと人気のないところでのことだ。
彼は彼女と公の場で会うことを夢見てそれを糧にして仕事に勤しんでいる。
リュドミーラはドメラクの神殿でも忌み嫌われたり中途半端に変な輩に好かれたりしている。
独特の雰囲気を漂わせている彼女の人柄をすべて知っている人間はそんなに多くはないが、それでも神殿に訪れる人の役に立っているのだ。
これらとは別のもう一組、ストレンジの冒険者たちは、愛らしい店主の経営する豪傑の虎亭でいつものように仕事を待っている。
ザルムは新調した武器の刃を眺めては鞘に戻すのを小一時間も繰り返しそうな勢いで落ち着きがない。大陸を救ったことで得た財を最高品質の武具に使って嬉しさが爆発しているのだ。
物騒だからやめなさいとマデリエネに言われると、今度は盾を磨きながら鎧の着心地を確かめている。
もうずっと鎧を着ているのでその必要がないことについてはもう誰も何も言いはしない。
彼の落ち着きのなさを注意したマデリエネは、今日も全体が見渡せる奥の席に座って店の前を行く人を眺めながらカイネが来るのを待っていた。
カイネは一仕事終えた後でもまだ神殿に通い詰めているのだ。
お布施をもらってはどうかと何度も提案したのだが、カイネはそれでは意味がないと主張していた。
マデリエネはリュドミーラのおかげでカイネの言っている意味はわかる。わかるのだが、背に腹はかえられないとずっと思っていた。
しかし無償で人々のために何かをしている本人がいらないと言っているのだからと、マデリエネはひとりでに納得しながら、唇に人差し指を当てて斜め上を向いている。
ゲルセルはマデリエネに教えてもらった文字を勉強して文章を書いていく練習をもうずっと続けている。彼はもともと地頭が良い方のようで少し教わっただけで日常生活の中で使うような文字のほとんどを覚えていた。
ギルドからたまに送られてくる連絡用の書面を読むのはまだ難儀なようであるが、それでも大きな進歩をし続けている。
ところが会話の方はというとこれまたもともとの性格のせいか、つっかえたり間が空いたりする癖は直りそうもない。もはやこれは彼のアイデンティティであると変に矯正することはしないほうが良いのであろうと皆が考えていた。
アロイスはゲルセルが文字を書く音を心地よく思いながら魔導書を読みふけってさらなる魔法の研究を進める所存のようである。
永遠に終止符を打てるということがわかった彼は、あれからいくらか気が楽になったようだ。
自分だけが取り残されるという事実は残ったままだが、いつでもこの運命から逃れられると思えば安心できた。
もちろんすぐに自身を消したいというわけではないのだが、終わりを選択する権利が持てて素直に喜ばしいのである。
そんな彼が重力を操る魔法についての記述を見つけたとき、カイネが帰ってきてファムがそそくさとカウンター下の依頼書を漁り始めた。
いよいよこれから始まる冒険に、誰もが胸を躍らせる。
死霊族の残党がまたいつ襲って来るかはわからない。
それでもいつもの冒険を楽しもうとする彼らがいる限り、この大陸の未来は明るいものであるに違いないのである。
ここまで長らくお付き合いくださいまして、本当にありがとうございます!
色々なシチュエーションの中で冒険者たちが活躍する様を描きたくて、依頼ごとに話が続いていくような形を取りました。できるだけ読みやすく、テンポよく進むように書いたつもりなのですが、いかがでしたでしょうか?
小説の執筆に関しては初心者なので至らない箇所ばかりだったかもしれませんが、一つの作品を書きあげられたことは誇りに思います。
まだまだ作品を投稿していくつもりですので、よろしければそちらの方もお付き合いくださいますと幸いでございます。
では、次回以降の作品でまたお会いいたしましょう!そのときまで良き小説ライフを!
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読みやすくテンポがいいと思います。
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感想をいただきましてありがとうございます。読んでいただけて本当にうれしく思います!
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