84 / 84
第九章
進み続ける英雄たち
しおりを挟む
このようにして、偉大なるレンタグル大陸に特例のSランク冒険者が二組誕生することになる。
一組目の火氷風雷ベリウスは酒を楽しみに剣の訓練を続ける毎日である。今度こそ仲間を守りきることができた彼はもっと多くの人を助けて守ることに力を注いでいる。
カティはポーションを作って売りながら魔法の研究をしている。持ち前のドジでファーストライトの一角が焼け焦げたことがあるがそれも平常運転であろう。
モレノはとにかくお金を稼ぐために小さな依頼でも地道にこなしている。未来の花嫁にも頻繁に会いに行っているが、それはこっそりと人気のないところでのことだ。
彼は彼女と公の場で会うことを夢見てそれを糧にして仕事に勤しんでいる。
リュドミーラはドメラクの神殿でも忌み嫌われたり中途半端に変な輩に好かれたりしている。
独特の雰囲気を漂わせている彼女の人柄をすべて知っている人間はそんなに多くはないが、それでも神殿に訪れる人の役に立っているのだ。
これらとは別のもう一組、ストレンジの冒険者たちは、愛らしい店主の経営する豪傑の虎亭でいつものように仕事を待っている。
ザルムは新調した武器の刃を眺めては鞘に戻すのを小一時間も繰り返しそうな勢いで落ち着きがない。大陸を救ったことで得た財を最高品質の武具に使って嬉しさが爆発しているのだ。
物騒だからやめなさいとマデリエネに言われると、今度は盾を磨きながら鎧の着心地を確かめている。
もうずっと鎧を着ているのでその必要がないことについてはもう誰も何も言いはしない。
彼の落ち着きのなさを注意したマデリエネは、今日も全体が見渡せる奥の席に座って店の前を行く人を眺めながらカイネが来るのを待っていた。
カイネは一仕事終えた後でもまだ神殿に通い詰めているのだ。
お布施をもらってはどうかと何度も提案したのだが、カイネはそれでは意味がないと主張していた。
マデリエネはリュドミーラのおかげでカイネの言っている意味はわかる。わかるのだが、背に腹はかえられないとずっと思っていた。
しかし無償で人々のために何かをしている本人がいらないと言っているのだからと、マデリエネはひとりでに納得しながら、唇に人差し指を当てて斜め上を向いている。
ゲルセルはマデリエネに教えてもらった文字を勉強して文章を書いていく練習をもうずっと続けている。彼はもともと地頭が良い方のようで少し教わっただけで日常生活の中で使うような文字のほとんどを覚えていた。
ギルドからたまに送られてくる連絡用の書面を読むのはまだ難儀なようであるが、それでも大きな進歩をし続けている。
ところが会話の方はというとこれまたもともとの性格のせいか、つっかえたり間が空いたりする癖は直りそうもない。もはやこれは彼のアイデンティティであると変に矯正することはしないほうが良いのであろうと皆が考えていた。
アロイスはゲルセルが文字を書く音を心地よく思いながら魔導書を読みふけってさらなる魔法の研究を進める所存のようである。
永遠に終止符を打てるということがわかった彼は、あれからいくらか気が楽になったようだ。
自分だけが取り残されるという事実は残ったままだが、いつでもこの運命から逃れられると思えば安心できた。
もちろんすぐに自身を消したいというわけではないのだが、終わりを選択する権利が持てて素直に喜ばしいのである。
そんな彼が重力を操る魔法についての記述を見つけたとき、カイネが帰ってきてファムがそそくさとカウンター下の依頼書を漁り始めた。
いよいよこれから始まる冒険に、誰もが胸を躍らせる。
死霊族の残党がまたいつ襲って来るかはわからない。
それでもいつもの冒険を楽しもうとする彼らがいる限り、この大陸の未来は明るいものであるに違いないのである。
ここまで長らくお付き合いくださいまして、本当にありがとうございます!
色々なシチュエーションの中で冒険者たちが活躍する様を描きたくて、依頼ごとに話が続いていくような形を取りました。できるだけ読みやすく、テンポよく進むように書いたつもりなのですが、いかがでしたでしょうか?
小説の執筆に関しては初心者なので至らない箇所ばかりだったかもしれませんが、一つの作品を書きあげられたことは誇りに思います。
まだまだ作品を投稿していくつもりですので、よろしければそちらの方もお付き合いくださいますと幸いでございます。
では、次回以降の作品でまたお会いいたしましょう!そのときまで良き小説ライフを!
一組目の火氷風雷ベリウスは酒を楽しみに剣の訓練を続ける毎日である。今度こそ仲間を守りきることができた彼はもっと多くの人を助けて守ることに力を注いでいる。
カティはポーションを作って売りながら魔法の研究をしている。持ち前のドジでファーストライトの一角が焼け焦げたことがあるがそれも平常運転であろう。
モレノはとにかくお金を稼ぐために小さな依頼でも地道にこなしている。未来の花嫁にも頻繁に会いに行っているが、それはこっそりと人気のないところでのことだ。
彼は彼女と公の場で会うことを夢見てそれを糧にして仕事に勤しんでいる。
リュドミーラはドメラクの神殿でも忌み嫌われたり中途半端に変な輩に好かれたりしている。
独特の雰囲気を漂わせている彼女の人柄をすべて知っている人間はそんなに多くはないが、それでも神殿に訪れる人の役に立っているのだ。
これらとは別のもう一組、ストレンジの冒険者たちは、愛らしい店主の経営する豪傑の虎亭でいつものように仕事を待っている。
ザルムは新調した武器の刃を眺めては鞘に戻すのを小一時間も繰り返しそうな勢いで落ち着きがない。大陸を救ったことで得た財を最高品質の武具に使って嬉しさが爆発しているのだ。
物騒だからやめなさいとマデリエネに言われると、今度は盾を磨きながら鎧の着心地を確かめている。
もうずっと鎧を着ているのでその必要がないことについてはもう誰も何も言いはしない。
彼の落ち着きのなさを注意したマデリエネは、今日も全体が見渡せる奥の席に座って店の前を行く人を眺めながらカイネが来るのを待っていた。
カイネは一仕事終えた後でもまだ神殿に通い詰めているのだ。
お布施をもらってはどうかと何度も提案したのだが、カイネはそれでは意味がないと主張していた。
マデリエネはリュドミーラのおかげでカイネの言っている意味はわかる。わかるのだが、背に腹はかえられないとずっと思っていた。
しかし無償で人々のために何かをしている本人がいらないと言っているのだからと、マデリエネはひとりでに納得しながら、唇に人差し指を当てて斜め上を向いている。
ゲルセルはマデリエネに教えてもらった文字を勉強して文章を書いていく練習をもうずっと続けている。彼はもともと地頭が良い方のようで少し教わっただけで日常生活の中で使うような文字のほとんどを覚えていた。
ギルドからたまに送られてくる連絡用の書面を読むのはまだ難儀なようであるが、それでも大きな進歩をし続けている。
ところが会話の方はというとこれまたもともとの性格のせいか、つっかえたり間が空いたりする癖は直りそうもない。もはやこれは彼のアイデンティティであると変に矯正することはしないほうが良いのであろうと皆が考えていた。
アロイスはゲルセルが文字を書く音を心地よく思いながら魔導書を読みふけってさらなる魔法の研究を進める所存のようである。
永遠に終止符を打てるということがわかった彼は、あれからいくらか気が楽になったようだ。
自分だけが取り残されるという事実は残ったままだが、いつでもこの運命から逃れられると思えば安心できた。
もちろんすぐに自身を消したいというわけではないのだが、終わりを選択する権利が持てて素直に喜ばしいのである。
そんな彼が重力を操る魔法についての記述を見つけたとき、カイネが帰ってきてファムがそそくさとカウンター下の依頼書を漁り始めた。
いよいよこれから始まる冒険に、誰もが胸を躍らせる。
死霊族の残党がまたいつ襲って来るかはわからない。
それでもいつもの冒険を楽しもうとする彼らがいる限り、この大陸の未来は明るいものであるに違いないのである。
ここまで長らくお付き合いくださいまして、本当にありがとうございます!
色々なシチュエーションの中で冒険者たちが活躍する様を描きたくて、依頼ごとに話が続いていくような形を取りました。できるだけ読みやすく、テンポよく進むように書いたつもりなのですが、いかがでしたでしょうか?
小説の執筆に関しては初心者なので至らない箇所ばかりだったかもしれませんが、一つの作品を書きあげられたことは誇りに思います。
まだまだ作品を投稿していくつもりですので、よろしければそちらの方もお付き合いくださいますと幸いでございます。
では、次回以降の作品でまたお会いいたしましょう!そのときまで良き小説ライフを!
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
推しがラスボスなので救いたい〜ゲーマーニートは勇者になる
ケイちゃん
ファンタジー
ゲームに熱中していた彼は、シナリオで現れたラスボスを好きになってしまう。
彼はその好意にラスボスを倒さず何度もリトライを重ねて会いに行くという狂気の推し活をしていた。
だがある日、ストーリーのエンディングが気になりラスボスを倒してしまう。
結果、ラスボスのいない平和な世界というエンドで幕を閉じ、推しのいない世界の悲しみから倒れて死んでしまう。
そんな彼が次に目を開けるとゲームの中の主人公に転生していた!
主人公となれば必ず最後にはラスボスに辿り着く、ラスボスを倒すという未来を変えて救いだす事を目的に彼は冒険者達と旅に出る。
ラスボスを倒し世界を救うという定められたストーリーをねじ曲げ、彼はラスボスを救う事が出来るのか…?
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
才能は流星魔法
神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。
そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。
流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。
ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。
井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。
山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。
井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。
二日に一度、18時に更新します。
カクヨムにも同時投稿しています。
銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~
雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。
左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。
この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。
しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。
彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。
その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。
遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。
様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
読みやすくテンポがいいと思います。
私は読むのが遅いのでゆっくり読ませて貰います。
おと、すいません。ちょっとした疑問なのですが「。」句点を付けたり付けなかったりは何か意図があるのでしょうか?
感想をいただきましてありがとうございます。読んでいただけて本当にうれしく思います!
疑問に思われた件なのですが、「」内の最後については句点をつけないようにしております。
それ以外でしたら、初投稿ゆえの事故かと……。
続きをどんどん更新していくつもりですので、今後ともどうぞよろしくお願いします。