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精霊王救出編

精霊王に会いに

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ジェダイト伯爵家から出発したあと、私たちは3日かけて次の山まで行き、一旦いったん山のふもとの街で宿泊して、1日かけて山を越す、というジュール山と同じようなスケジュールで最後の山を越えた。ここまでの速度は、人目のないところでは「浮遊」の魔法陣を活用することで馬車を引く馬の負担を減らすことにつながり、魔物よけにもなったのか、予定よりも早く進むことができていた。
そして、そこからは道が分からなかったのでシュリの案内に従い進んで2日経った頃、急に何かを通り抜けるような感覚が私たちを襲い、馬車を止めた。
何かを通り抜けるような感覚の前、馬車はだんだん道のない方へ向かっていたため警戒していたんだけど、何の異変にも気づかないまま違和感だけが襲ってきた。こんなことが起きれば誰だって止まって警戒するよね?? 
そして今、目の前にはさっきまで見えていなかった森が広がっている。シュリによると精霊王の気配はこの奥からしているらしく、引こうにも引けない状態なのだ。

そんな不安を感じるような場面であるが、ここからは騎士団長を勤めているお父様の、見せ場のようなものだった。今まで活躍の機会がなかったから知らなかったね…
お父様は護衛たちを指揮して警戒しながら馬車を進めていく。私とオリバーとマリアは馬車の中で待つように言われているので、馬車から様子を見守っている。

そしてまだ言ってなかったが、ここまで来る間にお父様や護衛の方たちの話を聞いて…
なんと、なんと!結界を展開することができるようになりました!もちろん、お父様には報告してある。
結界とは、大きく物理攻撃を防ぐ結界と魔法攻撃を防ぐ結界の2種類があり、普通はどちらかの結界しか一度に展開できない。しかしそこは、イメージの力で解決して、物理と魔法どちらも防げる完全結界を展開することに成功した!

今の危機的状況は、申し訳ないけど習得した完全結界を使ってみるいい機会だと思う。なので、まだ使用の許可は出ていないけど戦う時に1番攻撃の的になるだろう私たちの乗る馬車と、メリアやほかの使用人が乗っている馬車の2台に使用しておくことにした。あとで怒られるかな??
本当は、結界を展開している方が負担もあるけど安全だから、習得した後に常時使用していたかったんだ。だけど、お兄様とお父様が心配して許してくれなくて封印されてたんだよね~
たぶん、消費MPが1秒に100なのが大きかったのかな? 普通なら50くらいなのが完全結界になることで2倍取られちゃったみたいで… でも、100くらいなら回復の方が早いから減ったりしないのにね?? 私にとっては常時展開していても大丈夫そうなのに~
でも、今は緊急事態だから許してくれると思う! 一応お兄様の顔を伺ってみたけれど、しょうがなさそうに頷いてくれたからきっと大丈夫!

完全結界を展開した私に気づいたお父様は、こちらをチラリとみて一瞬だけため息をついた後、安全が確認されたからか速度を少し上げて進み始めた。
すると、前方の木の上から急に「かまいたち」のような風でできた鋭い何かが飛んできて馬車の結界にはばまれて消えた。その瞬間全体が動きを止め、お父様の「敵襲!警戒態勢!」という掛け声に対して護衛の方たちも、いつでも剣での攻撃や魔法が展開できるようにすぐさま準備していた。
それからは、再び「かまいたち」が放たれてもお父様が剣で打ち落としたり、護衛の方たちの魔法で打消したりし、防戦一方なのかと思っていたら別のチームが背後から回り込んでいたらしく、気がついたら攻撃がやみ勝利していた。

背後から攻めた人たちが、攻撃してきた敵を数人だけ生きたまま捕らえてきたようで、姿を見てみると日本の忍者のような黒装束を身にまとい顔を隠していた。もちろんこの世界に忍者の文化は存在しておらず、私以外はこの姿のことを分かっていないようで「奇妙な格好をしているな」とか言われながら覆面を外されていた。残念ながら覆面の下に隠された顔は日本人ではなかった。
そして、覆面を外したあと攻撃した理由と、この場所の説明をしてもらうために水をかけて目を覚まさせる。すると、捕まったのが分かったのか生きていたはずの忍者は奥歯に仕込んでいたのだろう毒を飲み、自殺した。
収穫はゼロで情報源は無くなり、進むしかなくなった。まぁどっちにしても進むんですけどね!

しかし、想像とは異なり再び敵が襲ってくることはなく、山の頂上付近にある大きなコンクリートで作られたような建物に到着した。シュリによると精霊王の気配はこの地下から感じているようだった。

私がマグノリアの身体に移ってから、この世界で一度もコンクリートらしきものや、縦長の建物を見たこと無かった。だからコンクリートではないはずである。しかし、お父様やお兄様も建物を見つめて不思議そうな顔をしている。そして、建物自体がビルのようで、先程忍者も見たことから私が元いた世界、日本が無関係だとはとても思えなかった。

とても嫌な予感がする中、私は精霊王を助けるためにこの世界に呼ばれているため先に進むしかない。なので正面の警備を護衛が眠らせ、正面の入口から堂々と侵入することにした。




このビルらしき建物の中に侵入してみると、そこは液体の入った大きなカプセルがいくつか設置されており、研究所のような雰囲気だった。何も中に入ってないけど…。そして、侵入を感知する何かが仕掛けられていたのか警報が建物全体に響き始め、建物が崩壊することを示すように揺れ始めた。何度も言うが、この世界はこんなに文明は発達しておらずセンサーなんてものも見たことない。まぁ建物の爆破ぐらいなら魔法で出来そうだし、魔法でセンサー式にすることもできるのかもしれないよね… 今回一緒に同行してくれている人たちも何が起きているのか分からないという感じで、この場所だけが異常なんだと理解することができた。

こんな状況で建物が崩壊してしまったら精霊王を探すことも難しくなる。そして、この機会を逃すとこんなに精霊王に近づく機会がないかもしれない。だからシュリが位置を知ってるそうなので道案内を任せて、私はお父様に抱き上げてもらい、シュリが進む先をお父様に伝えて急いで精霊王の元へ向かってもらった。


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