白の世界

とある研究員の軌跡

とある新米研究員のモーニングルーティーン

　ジリリリリリリ
　目覚ましの音が部屋中に響き渡る。そんな騒音を止めるために私は目覚まし時計を叩いた。

　カチッ

　騒々しい音から解放されてやっと静寂が訪れたが、再び眠らずに上半身を起こしてボーッとする。
　私は今日も研究室に行かないといけないと使命感を段々と宿してから布団を退けて、ベッドから床へと足を移す。
　床はひんやりとしているので、部屋用スリッパを履いて、足を寒さから守りながら私の朝が始まる。
　起きて早々に洗面所に向かい、眠気を追い出すかのように蛇口から出たキンキンに冷えている水を手で掬って顔に叩きつける。その後に歯ブラシで軽く歯を磨くことでさらに眠気に追い打ちをかける。
　それらでさっぱりした後に、次は台所に向かって冷蔵庫の中を漁る。その中にあるパックのコーヒーと牛乳、次にヨーグルトとブルーベリージャムが入ったビンを取り出した。
　そうだ、パンを焼かなければ。
　台所の前にはカウンターがあり、そのカウンターの上にある食パンを一枚取り出して、オーブントースターの中に入れる。焼く時間はだいたい２分半にして、後はゆっくりと朝のコーヒータイムの準備だ。
　お気に入りの白いマグカップを棚から取り出して、コーヒーと牛乳をまとめて流し入れる。私は苦いのが飲めないので、カウンターにちょこっと置いてあるガムシロップの容器を手に取り、一つを摘まみ上げる。そして蓋を開けて小さい器の中に有るだけマグカップの中へと流し込む。
　流し終えた後にチンッと焼きあがった合図が聞こえてきた。これで私の理想の朝食が並べられる。棚から皿、スプーン、マドラー、ナイフを取り出して、パンやヨーグルトやと机に並べていく。そしてようやく理想の朝食が完成した。
　私はマドラーでコーヒーをかき混ぜた後に、優美にコーヒーを啜る。
　うん、目が十分と言えるほどに覚めてきた。
　本当はトドメに太陽光を浴びたいところだけど、地下世界にいるもんだから太陽なんてあるわけないし、そもそも外の景色を覗くための窓すら存在しない。何度も思うが外の景色を見られないのはなんとも寂しいものだ。まあそんなこと思っても仕方ないので、私は黙々とパンを食べていった。

　優雅に朝食を済ませてから研究室へ行く準備を整える。支給された白ズボンと白シャツ、そして白衣を着こなす。実は白衣に関しては研究所から研究室で活動する際は着用を義務付けられているため、オシャレは一切出来ない。だけど、私は仕事に関してはオシャレにする必要もないと思い、従順に義務通りの恰好にはしている。
　ただ、ネクタイは別に好きにしていいという謎の許しがあるので、私はなんとなくで購入した紫色のネクタイを付ける。正直ネクタイなんていらないと思うが、何故か女性の研究員はオシャレのためか知らないけど付けている人がほとんどなので、私はまだ新入りということもあり便乗して付けている。
　淡々と着替えも終わり、少し時間をかけて化粧台の前でメイクする。そして一連のモーニングルーティーンを終わらせてから、自分の名前と顔が映っているカードキーを首からぶら下げ、荷物を手に取っる。
　これからまたしても大変になりそうだなと思いながら、扉を自室用のカードキーで開け、カツカツと足音を響かせて研究室へと向かった。