兄ちゃん達の独り言

椎奈風音

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クリスマスパーティ

第三話

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「塔哉、おいで」
 スーパーに着くなり、暁ちゃんに抱き寄せられる。
「ち、ちょっと、暁ちゃん!?」
 クリスマスで賑わっている店内で、そんなことをされるのは恥ずかしい。
 だだでさえ目立つのに、男同士で抱き合っていたら、それこそ注目の的だ。
 なんだか、周りの視線が痛い……。

「暁、男の嫉妬は見苦しいぞ?」
「その言葉、そのまま響兄に返すよ」
 こう言ってはなんだけど、公共の場で喧嘩してる兄ちゃん達が一番見苦しい気がするんだけど。
「お前達、ここは家じゃないんだ。少しは自重しろ」
 見兼ねたのか、春兄ちゃんが窘めてくれるが、それで鎮火するほど事態は甘くない。

「春兄は、世間体を気にし過ぎじゃない?」
「そうそう。兄弟仲いいねくらいにしか思われないって」
「そんなわけないだろ」
「戒、お前だって塔哉に触りたいんだろ?遠慮してたら、鳶に油揚げをさらわれるぞ」
「そういう問題か?」
「あのねぇ!兄ちゃん達いい加減にしてよ。鳶だか油揚げだか知らないけど、公共の場で喧嘩しないでよ。恥ずかしい」
 高校生になってまで、兄弟でゾロゾロ買い物に来ること自体が珍しいし、毎回くだらないことで騒ぎになるから、正直皆で買い物には行きたくない。

「悪い、塔哉。調子に乗りすぎた。……怒った?」
 響兄ちゃんが、僕の顔色を窺ってくる。
「怒ってない」
 響兄ちゃんって基本的に我が道を行くけど、たまに下手に出てくれるから、心底憎めないんだよね……。

「いらっしゃいませ。ケーキはいかがですか?」
「色んなケーキがありますよ」
 口喧嘩という名のジャレ合いが一段落着いた頃、クリスマスケーキの販売所の前を通りかかった。
 色んな種類のホールケーキが置いてあり、どれも美味しそうだ。
「あ、美味しそう」
「ありがとうございます。一番の人気商品は、こちらのチョコレートケーキです」
 店員のお兄さんが薦めてくれたのは、濃厚そうなチョコレートケーキだった。
 チョコ好きの僕としては、かなり魅かれるケーキだ。

「ねぇ、暁ちゃん。今回ケーキはどうするの?」
「ケーキ作る余裕はなかったから、買おうかなって思ってる」
「そっか。僕、このケーキが気になるんだけど、兄ちゃん達はどれがいい?」
「塔哉が好きなのにしたらいいよ」
「え?本当に?じゃあ、すみません。これください」
「はい。ありがとうございます」
 さっきの店員さんがケーキを包んでくれる。
 待っている間暇だったので、何気なく店員のお兄さんを見てたら、あることに気付いた。
 
(うわ~。双子だ)
 隣にいる人と全く同じ顔だ。
 響兄ちゃんと戒兄ちゃんも双子だけど、生まれた時から一緒にいるせいか、間違えることなんてまずない。
 でも、他の人から見たら区別がつかないんだろうなということを改めて実感した。
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