僕と彼女と二股三股

tomcody

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恵の巻

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これはある高校の渡り廊下での出会いから始まる物語である。

昼休みに教室の後ろの引き戸が開いた。
普通ならクラスメイトが入ってくる所だが、一年下の女子が顔を覗かせていた。

キョロキョロと人を探している様だ。
誰か僕のクラスの先パイ女子を探しているのだろうと何気なく見ていた。
するとその女の子と僕の目があった時、嬉しげに手招きしてきた。

えっ、僕に用?どう言う事?

よく見るとその子は学校全体で美人四天王の一人と噂される女の子だった。
僕は内心ドキドキしながらその子の前に立った。

その子に何かを期待した訳ではないが、その子の言う事を聞いて拍子抜けした。

内容はこうだ。
「私の友達が先輩に聞いて欲しい事があるみたいなの。放課後の渡り廊下で待ってるからきて欲しいって。」
まさか四天王が僕に告白なんて有り得ないと思ってはいたが、僕は内心ガッカリした。 

こう言う場合、渡り廊下で待っているのはかなりのブスと相場は決まっているものだ。 

時間は過ぎて放課後になった。
僕は気が重いながら渡り廊下に向かった。
約束したのと、わずかな期待感がなかった訳でもなかった。

渡り廊下に向かう扉を開ける度に期待と絶望感が僕の心に入り交じる。
最後のドアを開けると、廊下の中間くらいの所に一人の女子が後ろを向いて立っていた。

後ろ姿で言うと腰近くまであるロングヘア、制服の上からではハッキリしないがデブではなさそうである。
これで顔が好みなら言うことはないが、それを期待するのは無理だろう。
僕が近づいて行くと、彼女もこちらを向きかけた。

僕の胸がドキドキと鼓動する。
ついにお互いに向き合った瞬間、僕の予想は大きく裏切られる事となった。

ぼくの目に飛び込んできたのは、僕を誘いに来た子とは別のこれまた四天王の一角をなす、恵だった。
お互いに見つめあいながらもしばらくの沈黙が続いた。
時間にすればほんのわずかな時であろうが、二人にとってはとても長い時間であったろう。

恥ずかしげにしている彼女を前に僕から先に声をかけた。
「君の友達からここに来るよう言われたんだけど、僕にどんな用事?」

すると彼女は小さな声で
「センパイの事が初めて見た時から好きで好きで仕方なかったです。
でもセンパイはカッコいいし、もう付き合っている人がいるだろうから、諦めていたんですけど気持ちだけは伝えたいと思って友達に頼みました。」
彼女はさらに意を決した様に言葉を続けた。

「センパイ、もし付き合ってる人がいなかったら私と付き合って下さい。
お願いします。」
長い間があいて、僕が返事をせずに黙っていると、彼女は少し涙ぐんでこう言った。
「やっぱり、付き合って人いますよね。
分かりました。ありがとうございました。」

そう言う彼女を制して僕は言った。
「君が予想以上に可愛かったから言葉が出なかったんだ。でもどうして僕なんかに惹かれたの?」

「実は去年の入学式の時、センパイを見かけて一目惚れでした。すぐに告白する勇気がなかったけど、センパイが卒業するまでには言わなくちゃと決心したんです。」

僕は彼女の情熱を強く感じたが、即返事をするのをためらった。

何故なら僕には小学生の頃から心惹かれていた子がいたから。

しかし付き合えるかどうか分からない初恋の子を取るか、直ぐに付き合える四天王の恵を取るか。
まだすぐに恵を選ばなかった理由は他にもあった。
実は教室に呼びにきた子の方が好みだったから。
ずるいかもしれないが僕はこう言った。

「君の気持ちはよく分かったけど、僕に考える時間をくれないか?」
その日は金曜日だったので
「来週の月曜日にちゃんと返事をするから、ここでこの時間に待ってて欲しい。」
彼女の目を見つめながら
「決して君のこと嫌いな訳ではないから。」
ぼくは彼女に期待を持たせる様な言い方をして、その日は別れた。 

夜になり一人でいると恵の顔が思い浮かんでくる。
意を決して僕に告白してくれた彼女を両天秤に掛けようとしている僕がいる。
男として決して褒められる事ではないことは分かっているつもりだ。

しかし僕も初恋の人に告白しないで終わって良いのかと言われると、いや終わりにしてはダメだと言う考えが全身をつらぬく。
明日初恋の人に告白しようと心に決めた。

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