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莉子の巻
しおりを挟むちなみに初恋の人の名前は莉子という。
小学校と中学校でずっと同じクラスだった。
高校は違ったが、彼女は近くの書店でバイトをしていた。
僕はその書店によく行っていたので、何度か話をする機会はあった。
幸い彼女は土曜日にいつもバイトに入ってるので好都合だ。
12年近く想い続けた莉子に思いを伝えたい。
しかし興奮しているせいか寝付きは悪く、翌朝も早く目覚めてしまった。
莉子のバイトする書店の開店時間が近づくにつれ、僕の胸の鼓動は高まっていく。
10時開店なのだが、現在8時10分。
2時間弱が途方もなく長く感じる。
長く感じる時間を苦しみ抜いてやっと出かける用意が出来た。
莉子がバイトしている書店まで自転車で5~6分の距離だ。
しかし早く着きすぎて開店前から並んでいたのではいささか気まずい。
緊張と手持ち無沙汰を解消する為に、タバコを吸おうと自分の部屋に戻った。
部屋の窓を少しだけ開けて、タバコに火をつけた。
吐き出すタバコの煙がやけに白くたなびく。
一服、一服と吸っていくと次第に心が落ち着いていく感じがする。
煙草を吸ってなんとか心の迷いも解消され、さあ出陣と言う時、煙草くさい息で告白するのもダメだよなと思った。
印象を悪くする要因は少しでも排除しておきたい。
僕は歯を丹念に磨き、仕上げにモンダミンでこれでもかとクチュクチュしまくった。
そうこうするうちに、時計の針は10時近くになっていた。
これはイカンと、改めて身支度を整えて自転車に飛び乗った。
全速力でペダルをこぎ莉子が働く書店に向かった。
力の限りこいだので、書店の駐輪場に自転車を止めると身も心も高揚している。
9月の後半ではあるが、軽く汗もかいている。
ハンカチで汗を拭き、髪を整え店内へ行こうとした時だった。
自転車のベルの音がチリンチリンと後ろから聞こえて来た。
振り返ると莉子が自転車に乗って、こちらに向かってきているではないか。
僕に気づく様子もなく自転車を駐輪場に止めて慌てて店内に向かおうとしている。
僕は莉子に急いで声をかけた。
「何をそんなに急いでいるの?」
「遅刻しそうなの。ごめんなさい。」
莉子はそれだけを言い、あっという間に駐輪場から走り去った。
取り残された僕は呆然としていたが、我に返ってここにきた意味を思い出した。
そうだ今日は12年余りの片思いを終えるんだ、両思いの恋人同士になるんだ。
そんな想いを胸にして店内へと向かっていった。
その書店は名古屋市の郊外にあり、個人店にしてはそれなりの広さで本の種類もまあまあ豊富である。
店内には見渡す限り店のオーナー夫人がレジに立っているだけだ。
莉子の姿は見当たらない。
あまりキョロキョロしていても挙動不審なだけだよなぁと思い、取り敢えず普段から興味のある本棚の所へ行った。
何気なく本を手に取り眺めていると、
莉子が通りかかった。
「あっ、莉子、おはよう」
莉子は駐輪場でのやり取りを忘れたかのように
「こうちゃん、おはよう、久しぶりね、ごめんねー、遅刻しそうで急いでたから。」
「いや、いいけど、それで遅刻にはならなかったの?」
「うん、なんとかギリギリ間に合ったよ。」
「それは良かったね。」
それでね、莉子、実は莉子に話しがあるんだ。
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